羽アリのゆくえ [★★★]
[初出誌] 『うつしっぱなしミラー』、「小学五年生」1981年5月号、19頁、130コマ
[単行本] 『羽アリのゆくえ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第25巻」1982年8月25日 初版第1刷発行、19頁、130コマ
[大全集] 『羽アリのゆくえ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 10」2010年10月30日 初版第1刷発行、19頁、130コマ
【初出誌vs.大全集】
タイトル『うつしっぱなしミラー』が『羽アリのゆくえ』に変更
「よーくいいきかせてもらえないだろうか」が「ようくいい聞かせてもらえないだろうか」に変更[481(8)]
[梗概] のび太は部屋の中でうつぶせに寝ていたので、ドラえもんは「宿題があるんだろ!」と注意しながら、アリとキリギリスの話をし出した。「少しは、アリを見習ってせっせと…」と話すと、のび太から「羽アリを踏みつぶさないでほしい」と言われてしまった。
のび太は羽アリが一時間もウロウロしていたので、庭の土の上に戻し、これからなにするか、おしまいまで見ると言いだした。ドラえもんはひみつ道具『うつしっぱなしミラー』を取り出し、このミラーで羽アリの動向を映し、いつでも好きなときに見られるようにした。
その後、宿題や食事に時間がかかり、その日は見ることができなかった。次の朝も、起きてから学校へ行くまで、時間的余裕がなかったので、見ることができず、学校から帰って、はじめてじっくりミラーを見ることができた。
ドラえもんが「うつしっぱなしミラー」のダイヤルを戻して、ファンタ・フィルターをかけてくれたので、のぞき込むと、羽がなくなった女王アリが二十個ほどの卵を産んでいた。この巣がどこにあるかを調べるため、ダイヤルを戻すと、野比家の庭のヤツデの下に、新しい国を作り始めていた。
三日たつと、卵からかえって、かわいい赤ちゃんになった。その後、さなぎになり、さらに成長して、やがてマユを破って、一人前のアリが誕生した。おやつのケーキをもらうと、庭に「パラ パラ」とまいたので、たくさんのアリが見つけて、大喜びで運んでいく姿をミラーで確認することができた。
ママが心配になって、毎日鏡ばかり見ているのび太を注意してほしいとパパに頼んだ。パパが叱るために部屋に入ると、のび太がミラーでアリの巣を見ていたので、そのミラーを見ると、小さいころガラスビンで飼っていたことを思い出して、のび太以上に熱心にミラーを見続けた。
パパはママに「いやあ、自然を観察することは、悪いことじゃない。なあに、すぐあきるさ」と語りかけている。
ドラえもんは「はたらき者のアリを見習わせようと思ったのに、かえってなまけ者になっちゃった」ので、なんとかしようと考え、出木杉としずちゃんに「ようくいいきかせてもないだろうか」と頼んでいる。
ドラえもんはみんなでアリの国が見られるように、ひみつ道具『26インチミラー』に映している。クロオオアリの巣が映し出され、一匹のアリが大きな赤ちゃんを見つけ、みんなで巣へ運ぼうとしていた。出木杉は「たべる気だな!!」と判断したので、ドラえもんは「スモールライト」を出し、小さくなって巣へ乗り込むことにした。
目の前に、「ヌッ」とクロオオアリが出たので、ドラえもんはひみつ道具『ファンタメガネ』を出し、さらに、全員に、アリと同じにおいをスプレーで「プシュ」とかけている。「チョイ チョイ」とチェックされ、同じ仲間だとみなされたので中に入ることができた。まるで迷路みたいな道を歩きながら、赤ちゃんのいるところを探した。
迷路の奥の方の部屋で、赤ちゃんがアリにかわいがってもらい、ミルクを飲まされていた。出木杉はその光景を見て、「あれは、クロシジミというチョウの幼虫なんだ。
幼虫は、育ててもらうお返しに、クロオオアリにあまい体液をのませるんだ」と語り、一人前のチョウになると外の世界へ飛んで行くので、心配することがないとみんなに説明した。
道が複雑で、アリに追い掛けられ、迷ってウロウロしていると、以前助けた女王バチの部屋に紛れ込んでしまった。よく覚えていて、「わたしの恩人さま」と招き入れ、「おかげで、わたしの国もりっぱにできました」と挨拶をされた。
その後、「クヌギのミツで作ったケーキ」などで大歓迎されながら、アリの世界をあとにすることになった。
セミが「ミーン ミーン ミーン ミーン」と鳴く頃になると、のび太もやっとミラーにもあきたらしく、昼寝を繰り返すようになった。ドラえもんには「あんなあきっぽいのび太が、ひとつのことにあんなに熱中し続けたなんて、信じられない」気持ちであった。
一年が経過し、蒸し暑い夕方に羽アリが出てきたので、のび太は再び「ミラー」を出してもらった。
王子と王女が生まれ、これから新しい国造りに旅立つシーンを見ることができた。ドラえもんが「みんな大きくなって、それぞれの子孫を育てて…。きみだってそうだぞ。いつまでも子どもじゃないんだよ。しっかりしろよ!!」と激励すると、自発的に机の前に座り、「宿題でもやるかな」という心境の変化がのび太に認められた。
[S1050・A2511・058105]