ガンファイターのび太 [★★★]

[初出誌] 『無題』、「小学五年生」19804月号、20頁、117コマ

[単行本]  『ガンファイターのび太』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第24巻」1982425日 初版第1刷発行、22頁、131コマ

[大全集] 『ガンファイターのび太』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 92010830日 初版第1刷発行、22頁、131コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『無題』が『ガンファイターのび太』に変更

 「にげるんじゃないぞ」が「逃げるんじゃないんだ!」に変更[436(1)]

 「ざっと三十人…」コマ挿入[442(1)]

「わあ~、三百人ほど来た」コマ挿入[442(2)]

 

「文字なし」コマ挿入[443(3)]

「文字なし」コマ挿入[443(5)]

「町長さんあぶない!!」コマ挿入[443(6)]

「ドギュ ドギュ ドギュ」コマ挿入[443(7)]

 

「カチ カチ」、「たまを撃ちつくした!!」コマ挿入[444(1)]

「来た!」が「ワッ!!」に変更[444(2)]

「パパ!!」コマ挿入[446(1)]

「もうだいじょうぶだよ」、「ノビータがひとりで三十人を眠らせてくれたんだ」コマ挿入[446(2)]

 

「ノビータはどこ?」、「そういえば……」コマ挿入[446(3)]

「ノビータ!!」、「おういノビータ」コマ挿入[446(4)]

「ノビータ!!」コマ挿入[446(5)]

 

「会えば帰りにくくなる」、「行こう」コマ挿入[446(6)]

「ふしぎな少年だった………」、「わしらを助けるため遠い星の国から来てくれたのかもしれないね」コマ挿入[446(7)]

 

[梗概] のび太は二十二世紀のリアリティのあるゲームソフト『ウエスタンゲーム』で、パーフェクトの三万点を獲得し、世界最高の記録を達成した。ドラえもんはのび太に「射撃の天才」の称号を与え、その快挙を激賞した。

 

 ドラえもんから、「じつにふしぎだ! ほかになんのとりえもない。頭も悪い、運動もだめ、のろまでぐずで…」と言われれば、のび太も「ほんとにそうだ」と一面では納得せざるを得なかった。

 

  しかし、「もしもぼくが、西部劇時代のアメリカに生まれていたらなあ…。きっと拳銃王として、歴史に残るような活躍をしたと思うよ」と反論すると、ドラえもんから「でも、わかんないよ。きみは、おくびょうだから。うちあいが始まると、にげるか気絶するか…」と一蹴されてしまった。

 

  バカにされたのび太はドラえもんに内緒で、「タイムマシン」に乗って千八百八十年代の西部を目指して、颯爽と出かけた。のび太が到着した西部の町で、目の前で展開された本物の決闘を見て、気絶してしまった。のび太はモルグ・シティの町長とそのお嬢さんに気絶しているところを助けてもらった。

 

  まるで、モルグ・シティはゲーリー・クーパーとグレース・ケリー主演の『真昼の決闘』のような状況に置かれていた。命知らずの暴れ者が町にのさばり、二十三人もの保安官が入れ替わり立ち替わり交代し、もうこの町の保安官になり手もいなくなっていた。

 

  町長は今日も信頼していた仲間から「むこうは命しらずのあばれ者を何十人とやとっているんだ。かなうわけがないさ。あんたもはやいうちににげだしたほうが、りこうだよ」と言われる始末。町長ひとり、「わしはにげんぞ。ひとりになっても、町を守ってみせる!」と意気軒昂である。

 

  見かねたのび太が「ぼくが保安官になってもいいですよ。ピストルには自信があるから」と志願するが、町長から「ばかなこというんじゃない」、お嬢さんからも「はやく帰らないとママが心配するわよ」と諭されてしまった。

 

 のび太はホッとし、「にげるんじゃないんだ! ことわられたんだもの、しょうがないじゃないか」と言い訳しながら、「タイムマシン」を停めておいた場所にたどり着いた。「タイムマシン」のブレーキをかけ忘れたので、「タイムマシン」はどこかほかの時代へ流れて行ってしまった。

 

町に戻ると、無法者が暴れ回り、町長はお嬢さんの「やめて! 殺されるわ」との願いを振り切って、二人の無法者と対決しようとするところだった。この光景を見て、のび太は「ま、ま、まてえつ。ぼくが相手だ!」と決闘を申し出て、二人の無法者を撃ち倒した。しかし、のび太は相手の流れ落ちる血を見て気絶してしまった。

 

 一躍町の英雄になったのび太は「きみほどのガンマンはどこにもいない」と称賛され、保安官になることを要請された。のび太は「いやだいやだ! 保安官になる自信なんてないよっ。だって、ぼくうたれたら痛がるでしょ。悪くすると死んじゃうかも」と固辞していた。

 

 牢屋に閉じこめられた悪党が「仲間がだまっちゃいないぜ。みんなでおしかけてきて、この町のやつらをみな殺し…」と脅迫すると、町から人影が完全に消えてしまった。

 

 三十人近い無法者が町に攻め込んできたので、のび太は「町のために。正義のために」町長と一緒に戦うことを決意した。しかし、あまりにも多勢に無勢のため、のび太は次第に追い詰められ、二丁拳銃の弾を撃ち尽くしてしまった。

 

  絶体絶命のピンチに追い込まれ、相手のピストルが発射された時、のび太は本当に「や、ら、れ、た!」と思った。

 

その瞬間、助っ人のドラミちゃんがひみつ道具である『驚時機』を出して、のび太のまわりの時間をゆっくり流れるようにしてくれたので、相手のピストルの弾をヒョイとかわすことができた。

 

さらに、ドラミちゃんから、当たると、まる一日眠り込んで夢みるひみつ道具『ドリームガン』もらって、のび太とドラミちゃんはすべての無法者たちを退治してしまった。

 

 劇的な再会をお嬢さんと果たした町長は「もうだいじょうぶだよ。ノビータがひとりで三十人をねむらせてくれたんだ」とやさしく告げた。名映画『シェーン』のラストシーンを彷彿させる、親子の「ノビータ!! ノビータ!!」という声が町にこだました。

 

その声を耳にしながら、のび太は最高にかっこいいセリフ「あえば帰りにくくなる」とつぶやきながら、フェイドアウトしていった。町長は「ふしぎな少年だった…。わしらをたすけるため、遠い星の国から来てくれたのかもしれないね」とお嬢さんに淋しげに語りかけるのであった。

 

 のび太はドラミちゃんのタイムマシン『チューリップ号』に乗って、家路を急いだ。ドラミちゃんの「モルグ・シティのならず者を、たったひとりでとらえた、謎のガンマンの伝説があるの。のび太さんのことよ」といった特上の会話に耳を傾けながら…。

[S0950A2416058004]