主役はめこみ機[★★]

[初出誌] 『無題』、「小学五年生」19785月号、8頁、52コマ

[単行本]  主役はめこみ機』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第17巻」1979425日 初版第1刷発行、8頁、52コマ

[大全集] 『主役はめこみ機』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 72010428日 初版第1刷発行、8頁、52コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『無題』が『主役はめこみ機』に変更

 

[梗概] テレビの人気番組『ウルトラボーイ』に、スネ夫が出演することになってみんな大騒ぎしていた。スネ夫は出たくなかったけれども、ちょっとした気まぐれで出たとみんなを煙にまき、いつものようにパパの友だちである、テレビ局プロダクションの社長に頼まれたと自慢話を終えている。

 

 人気スターになるよりも今は勉強が肝心だから、主役だけはかんべんしてもらって、わき役ででてあげたと、好き勝手なことを言いふらしていた。今夜七時に放映されるから、二十四インチの迫力ある大画面で見ないかと誘われた。

 

  ジャイアンは「しゃくにさわる。だれがみにいくか!」、のび太は「おおきなことばかりいって!」、しずちゃんは「でも、でてることはたしかでしょ、うらやましい」と言いながら別れた。

 

 のび太はくやしいので、わき役でもでたいと訴えると、ドラえもんはなるなら主役になれと言いながら、『少年サンデー』を見せてくれた。そこに出ている『プロゴルファー猿』、『男組』、『がんばれ元気』といったマンガの主役はすべてドラえもんであった。

 

  ひみつ道具『主役はめこみ機』を使うと、マンガ、テレビ、小説、映画などに自分を主役としてはめ込むことが可能になる。

 

 のび太がこの機械で「ピカ」と雑誌を照らすと『まことちゃん』に、アンデルセンの童話を照らすと、『みにくいのび太』に、テレビでは、「警視庁は銀行強盗野比のび太を全国に指名手配した」となった。『ウルトラ・ボーイ』の時にこれを使えばおもしろいと思って、スネ夫の家に出かけることにした。

 

  途中で、「やきもちでこないなんて思われたらしゃくだから」というジャイアンとしずちゃんにも出会った。

 

 スネ夫はみんなを大歓迎し、テレビの前でカウントダウンを始めた。ゼロでテレビをオンにすると、「ジャジャジャーン」の音楽で、シャンデリア型UFOが襲ってくる「ウルトラ・ボーイ」が始まった。

 

しばらくすると、「ほら! ぼくがでた!」と叫ぶので、みんなは画面を見つめたが、「どこ どこ」というばかりであった。多くの群衆が登場するシーンで、スネ夫は画面の右はしっこから、左の方へ走っていく姿がちらりと見えた。

 

みんなが大わらいするので、スネ夫は顔を真っ赤にして、「だからいったろ。わき役にしてもらったって」と懸命に弁解していた。

 

 のび太が「主役はめ込み機」で画面を照らすと、ウルトラボーイの顔がのび太になっていた。みんなから「い、い、いったいどうして?」とうらやましがられたので、得意満面ののび太は「ぼくはでたくもなかったけれど、テレビ局の社長がぜひでてくれとうるさくて」と、スネ夫のお株を完全に奪っていた。

 

 この作品の欄外では、顔だけがのび太である『ノビえもん』の第一巻が描かれている。

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