ヘソリンスタンド[★★]

【道具解説】 ひみつ道具である『ヘソリンスタンド』のガスを、ヘソから人間の体内に送り込むと、心や体の痛みを三十分間消すことができるようになる。「ヘソリンスタンド」のガスには、『大げさに感じるガス』もある。

 

【使用目的】 のび太の今日の一日もとても悲惨であったので、ドラえもんの前で、「世の中まっ暗だあ。いますぐ世界のおわりがくればいい」と泣き叫ぶので、ドラえもんはゲンナリしながら、「ヘソリンスタンド」を出している。

 

【使用結果】 のび太が「ヘソリンスタンド」のガスを「プシュ」と注入してもらうと、目の前が明るくなって、幸せな気持ちになってきた。

 

  ドラえもんがママに、「0点の答案を、もう一枚かくしていたの」と告げると、ママは顔を真っ赤にして激怒したが、のび太はなにを言われてもちっとも怖くなく、その上、気にならなかった。廊下に出て、ボールを踏んで「ドデン」と転んでも痛くも何ともなかった。

 

 のび太は外に出て、公園のベンチでしずちゃんと出木杉が仲良く話していているのを見ても、全然気にならなかった。スネ夫に足を蹴られたり、ジャイアンやスネ夫に「ボカ ボカ」なぐられても、さらに、イヌにかまれたり、自動車に「ドン」と突き飛ばされても、「ニコ ニコ」していた。

 

 ガスが切れてあちこち痛くなってきたので、ガスを入れるため、家に帰るとドラえもんがいなかった。あとをついてきたジャイアンとスネ夫が「ヘソリンスタンド」に気づき、みんなで使うため、広場にこのスタンドを運んだ。

 

  ジャイアンやスネ夫が「プシュ」と注入し、ジャイアンが思いっきりバットでスネ夫をなぐると一時的に気絶したが、「いやあ、ぜ~んぜんいたくない」と立ち上がっている。さらに、お父さんにこっぴどく叱られて落ち込んでいる子、歯が痛くてベソをかいていたしずちゃんに試してもらったら、ケロッと元気になってしまった。

 

 ジャイアンとスネ夫は「ヘソリンスタンド」のうわさが広まったので、一回十円を取って商売を始めることにした。ドラえもんが家に帰るとこのスタンドがないので、「あれはおそろしいガスで、危険を知らせる信号である痛みを気づかなくするものである」と話しても、ニコニコしたのび太の反応は「それがどうした」というものであった。

 

  ガクッときてどうしていいか迷っていると、ガスの切れたのび太が、「そ、そ、そんなおそろしいガスとはしらなかった。ど、ど、ど、ど、どうしよう」と、真っ青な顔をして、「ガバ」とドラえもんに抱きついてきた。

 

 広場では、「ひかり号にはねられても、いたくないよな」、「東京タワーからとびおりても、平気だよ」、「三十分おきに十円でしょ。たいへんよ」、「ママのさいふ、もってきちゃった」という会話が飛び交っていた。

 

  ドラえもんとのび太が止めようとはいっても、ジャイアンに「ゴシャゴシャいうな」とバットで殴られ、先生やふたりの苦手のかあちゃんやママをよんで説得してもらったが、手がつけようがなく、三人ともあきれて帰えてしまった。

 

 ジャイアンがガスを注入しようとしたら、「プス」という音がして、ガスがなくなってしまった。ドラえもんはその間に、別のガスに入れ替えた。雨が「ポツ ポツ」降り出すと、ジャイアンとスネ夫が「いたいいたい。雨のつぶがいたい」と叫んでいた。ドラえもんはスタンドに「大げさに感じるガス」を入れたためであった。

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