キャンデーなめて歌手になろう[★★]

[初出誌] 『無題』、「小学五年生」19738月号、8頁、53コマ

[単行本]  『キャンデーなめて歌手になろう』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第8巻」1975725日 初版第1刷発行、10頁、71コマ

[大全集] 『キャンデーなめて歌手になろう』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 22009830日 初版第1刷発行、10頁、71コマ

 

[梗概] ドラえもんは声の特徴をとらえて、キャンデーにするひみつ道具『声のキャンデー(声紋キャンデー機)』をのび太に説明している。ドラえもんがのび太の「声のキャンデー」をなめると、のび太そっくりの声が流れてきた。

 

 おもしろいのでこの機械をもって外に遊びに出かけると、スネ夫に会い、ジャイアンのリサイタルの切符を売りつけられそうになった。逃げ回っているところをジャイアンに見られ、「そんなにもおれの歌を…、ききたくないってのか!!」と脅され、ドラえもんの分までもらうことになってしまった。

 

 広場でのジャイアンのリサイタルはいつものようにすごい声で、「のうがむずむずしてくる。目がまわってさむけがして、これも公害の一種だよな」という状態になった。ジャイアンが「盛大な拍手をありがとう。おれ、なんのとりえもない男だけど、歌だけは自信があるんだ。

 

  こうして、みんなに歌をきかせて、よろこんでもらえば、それで、幸せなのさ」と、木の箱の舞台から胸を張ってあいさつした。

 

 いつものように、スネ夫が「いい歌をきかせてもらって、こちらこそしあわせだよ」と、合いの手を入れたので、「よしっ。では、みんなのためにアンコールといこう」と言い出した。スネ夫に対して、みんな涙を流しながら、「つまんないおせじいって! これいじょうきいたらいのちにかかわるぞ」と猛烈に抗議している。

 

  脳天気なジャイアンはステージで、「みんな泣いてよろこんでくれるか。ようし! 声がかれるまで歌いつづけようと」叫んでいた。

 

 突然、ドラえもんは「声のキャンデー」を思いだし、キャンデーをしゃぶって歌ってもらうことにした。このキャンデーはテレビで、歌手の声から録ったものであり、ジャイアンが歌いだすと、きれいな声で、歌手みたいであったので、みんなは最後までとても楽しく聞くことができた。

 

 のび太が前に貸した本であったけれども、ジャイアンがのび太にあげるといって、めずらしく本をもってきてくれた。その上、仲良くしようとか、いいやつだとか、おれの親友だとか、のび太におせじを言いまくった。ジャイアンのお目当ては、当然このあいだのキャデーをもらうことであった。

 

 ジャイアンは『スターになろう』というテレビ番組に出るのが決まった。そのため、ジャイアンはどうしても優勝して、本物の歌手になりたいんだと、両手をついて頼むので、ドラえもんも根負けして、キャンデーを与えることになった。

 

 「スターになろう」という番組で、ジャイアンが天地真理の声で歌うというので、家族そろってテレビの前で待機していた。パパが「優勝できるといいがね」というと、ドラえもんは自信を持って、「そりゃまちがいないよ。プロののどで歌うんだもの」と答えている。

 

しかし、ドラえもんが、突然、「あのこと注意しとくのわすれていたぞ! クスリのききめが30分しかもたい」と言いだした。「もし、はやくのみすぎていたら、あのおそるべきジャイアンのドラ声が電波にのって日本じゅう」と危惧していると、テレビに登場したジャイアンは「サ、サ、3番! ゴ、ゴ、剛田武!」といつもの声で、顔を真っ赤にして名前を名乗った。

 

 「はやく! 耳にせんをして!」と叫んだが、間に合わず、「ボエ~」の声で野比家の一家は吹っ飛んでしまった。次の日、しずちゃんは「あの放送のおかげで故障したテレビが、かなりあったとか」、スネ夫も「おおぜいの人がたおれて、全国の救急車がてんてこまいしたとか」とうわさしていた。

 

  さらに、しずちゃんは「かんかんにおこってるわよ。よくもはじをかかせたなって。ドラちゃんたちを見つけたら、ただじゃおかないって」と付け加えている。

 

 のび太がくよくよして外を歩いていると、ジャイアンに出会った。ジャイアンが猛烈な勢いで追いかけてきたので、ドラえもんは準備していた非常用のキャンデーを取り出した。

 

たけし! らんぼうするとしょうちしないよっ」という声が流れたので、ジャイアンは「ドキン」として逃げて行ってしまった。ドラえもんは「ジャイアンのおかあさんの声をとっていてよかった」とのび太に語りかけている。

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