拍手水増しマイク[]

【道具解説】 ひみつ道具である『拍手水増しマイク』を、「不景気なコンサートで使うと、まばらな拍手もあらしのようにとどろく」ものである。マイナスのスイッチを押すと逆の現象になる。

 

【使用目的】 ジャイアンの引退コンサートでは、ドラえもんは「拍手水増しマイク」を出し、マイナスのスイッチを押して使うことにした。

 

【使用結果】 ドラえもんは「拍手水増しマイク」を「花の中にかくしておけば…、みんながどんなにさわいでもだいじょうぶだ」と念を押してセットした。さようならコンサート会場に到着したジャイアンは「開演前から満席じゃないか!!」と感嘆の言葉を発している。

 

 ドラえもんがミカン箱のステージに立って、ドラえもんのマンガ史に残る別れの言葉を語り始めた。「長い間ぼくらを苦しめ…、いや、楽しませたジャイアンコンサートもこれが最後。まことにうれし…、いや残念…というほどでもない…こともない」といった内容であった。

 

  ジャイアンが「なにがいいたいんだ。ま、そんなわけで。もう二度とおれの歌はきけないってことだ。みんなさびしいだろな。やめないでという声もあるだろうが…」と挨拶を始めた。

 

  会場は水を打ったようにシーンとし、観衆は「こたえるな! ここがしんぼうのしどころだぞ。ジャイアンに目を合わせないよう」と考えながらじっと耐えるのであった。

 

 ジャイアンは「…そうかよ!! じゃあこれから二時間半おれのヒットパレードをメドレーで」と言いながら歌い出した。観衆にとって、「それからの二時間半はまさにごうもんであった。

 

  みんなは「これがさいご!」、「くじけるな!!」と、はげましあってたえぬいたのだ」 ドラえもんの「ジャイアンコンサート、めでたく歌いおさめです」の挨拶で、会場から「パラパラパラ ポチポチ」の拍手があった。

 

 ジャイアンは「なんだなんだ、この雨だれみたいな拍手は…。みたとこいちおう全員拍手してるようだが…。まるでもりあがらない。スッキリしないぞ!!」といった感想を漏らした後で、ジャイアンは「では絶大な拍手にこたえてアンコール」と言い出す始末であった。

 

スネ夫からは「このままもえつきたほうがいいのでは…」と、ドラえもんからは「一分間時間をください。やめるように説得します」との発言も後の祭り。ジャイアンは「おまえら!」と怒鳴りながらステージで大暴れ、その弾みで花瓶が踏みつけられて「グシャ」と割れ、マイクのスイッチがプラスに入ってしまった。

 

迫力満点の拍手に後押しされて、ジャイアンは「ありがとうありがとう。おれ、もう二度とやめるなんていわない。ジャイアンの歌は永遠です!!」といった形でステージが終わった。

 

 町を歩いていても、「かなり長い間のび太とドラえもんはみんなの冷たい視線にたえなければならなかったのである」 ジャイアンの歌はその後も続き、まさにジャイアンの命であり続けたのであった。

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