泣くなジャイ子よ [★★]

[初出誌] 『身がわりマイク』、「小学四年生」19895月号、10頁、71コマ

[単行本]  『泣くなジャイ子よ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第40巻」1990125日 初版第1刷発行、10頁、71コマ

[大全集] 『泣くなジャイ子よ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 172012229日 初版第1刷発行、10頁、71コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『身がわりマイク』が『泣くなジャイ子よ』に変更

 

[梗概] のび太は暖かい日ざしをあびながら、土管の上で昼寝をしていると、「やめて!!」という声が聞こえてきた。「でも、ジャイ子このままじゃ…」、「よけいなことしないでよ!! だから、いいたくなかったのに!!」、「お兄ちゃんは、おまえのためを思ってだな」と口げんかがジャイアンとジャイ子の間で続いた。

 

 ジャイアンからじっくり話を聞くと、「ジャイ子がぼやーっ、として…、ときどき、フーッとためいきついて…、なにかなやみがあるなら、兄ちゃんにうちあけろといっても暗ーい顔をするばかり。そこをむりやりききだしてみれば…」、「エーッ。ジャイ子くんに!? 好きな男の子が!? こりゃ、けっさくだ。アハハアハハ」というのがのび太やドラえもんの率直な反応であった。

 

 ジャイアンによれば「その男はとなり町の、茂手もて夫という、やつらしい。女の子に人気があるらしい。バレンタイン・デーに百個近くのチョコをもらったとか。おれだって気に入らないが…、ジャイ子が好きだというんだからしかたがない」

 

  ドラえもんの「ジャイ子くんは相手の子にうちあけたの? 友だちになってほしいって」の質問に対して、「それができないから、なやんでるんじゃないか。そのやろうの前にでると、口もきけないらしい。おれににて内気だからなあ…。だから、おれがとなり町へおしかけて、そいつをとっつかまえて、「ジャイ子とつきあうか、それとも痛いめにあいたいか」と…。

 

  ジャイ子もそんならんぼうなというからやめたけど、かわいそうでみてられないんだよ。ドラえもん、力をかしてくれ」となった。

 

 ドラえもんはひみつ道具『身がわりマイク』を取り出し、このマイクの矢印を向けてしゃべると、向けられた相手が代わりにしゃべってくれるものである。「ジャイ子くんが茂手くんと会っている時に、ぼくらがかげからこのマイクでジャイ子くんのいいたいことをしゃべればいい」というのがドラえもんの作戦であった。

 

 もて夫は部屋で勉強をし、お母さんが庭で水をまいていた。ドラえもんはこのマイクを使って、「もて夫、もて夫。いいお天気だよ。公園にいくといいよ」、「公園なんか、いきたくないよ」、「いきたくなくても、いきな」、「そんなむちゃな…」となった。

 

  すると、ジャイアンがマイクを奪って、「おまえ、かあちゃんのいうことが、きけないのかよ!」と怒鳴ったので、もて夫は飛びだして、公園の中の島の時計塔あたりにいってもらうことにした。

 

 ジャイアンはジャイ子にすぐ公園に行くように頼んだけれども、「なんで、わたしが公園なんかへ?」「きっとしあわせがまってるよ」、「かきかけのマンガをしあげたいのよ」、「そんなこといわないで。なあ、ジャイ子…」という会話が続いた。

 

 もて夫が公園に行く時、次から次へと女の子から声がかかった。ドラえもんが「じゃまだから、あっちいけ。シッ、シッ」と、最後には、「ウ~ワンワン」と吠えて女の子を追っ払っている。

 

  やっとその気になってくれたジャイ子が公園に行くと、もて夫がすでに時計塔のところにきていた。のび太がマイクを借り、「アー、アー、ただいま、マイクのテスト中」とよけいなことを言ってしまった。

 

  矢印がちがっていて、もて夫が「あたし、ジャイ子っての、よろしく」となり大慌てで、矢印を変えて、「あたしあんたがすきなのよ。ともだちになってくんない? あっにげちゃだめだよっ」とシッチャカメッチャカになってしまった。

 

 うまくいかなかったので、ジャイアンから「ぶちこわしに、しやがって!!」と追いかけられ、ジャイアンの家まで来ると、もて夫が「もち主の住所はここだ。これ、落としていったでしょ。マンガがかいてあったけど、うまいわねえ。ぼくもマンガ好きでかいてるんだよ」とジャイ子との会話が弾んだ。

 

 「ふたりで同人雑誌をださない? これから、相談しよう」と楽しげに出掛けるふたりを見て、ジャイアンもドラえもんものび太も感動し、涙を流していた。

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