天つき地蔵 [★★★]

[初出誌] 『ないしょごみすてホール』、「小学四年生」198211月号、21頁、131コマ

[単行本]  『天つき地蔵』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第36巻」1986425日 初版第1刷発行、23頁、137コマ

[大全集] 『天つき地蔵』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 122011330日 初版第1刷発行、23頁、137コマ

 

 

 

[梗概] のび太はタンスの引き出しからはち切れそうになるほど、0点の答案をため込んでいた。ドラえもんから「チリ紙交換に出したら」と言われたが、「ばかいえ。見られたらかっこ悪い」と答え、強引にひみつ道具『ないしょごみだしホール』をお願いして出してもらっている。

 

 このホールに「バサ バサ」と、0点の答案用紙を入れるとアッという間に消えてしまった。ママからテストのことを聞かれたが、のび太は先手を打って、ゴミを出しましょうかと尋ね、台所にあったたくさんのゴミをアッという間に片付けることができた。

 

  とても便利なものであったので、みんなで使ってもらうため、土管のある広場で、のび太はいらなくなった物をこのホールで処分してもらっている。

 

 スネ夫は新しい自転車を買ってもらうため、まだ使える自転車を「スポ」と処分している。しずちゃん、ジャイアン、安雄やはる夫も、整理してもらいたいものがたくさんあったので、ドンドンもってきた。

 

 持ってきたものの中には、たくさんの古本があったので、ちょっとひと休みして、のび太がまだ知らない『天つき地ぞう』の本を読むことにした。

 

 昔々、貧しい与作というきこりが年老いてお母さんと二人で暮らしていた。山へ食べ物を探しに行きましたが、冬のためなにも見つかりません。道端にお地蔵さまが転がっていたので、抱き起こして、心をこめて拝みました。

 

 すると、お地蔵さまが歩き出して、つえで「えいえい」と天をつくと、今まで見たことも食べたこともないごちそうがふってきました。その話を聞いたいじわるな吾作がお地蔵さまを拝むと、天からゴミが落ちてきました。

 

 ドラえもんはほこりだらけになりながら、きたない廃品を処分していた。重い冷蔵庫を担ぎながら「ヨロ ヨロ」運んで、ホールに入れるとつっかえてしまった。ドラえもんが「えい! えい!」と突っついていると、「スポ」とホールに吸い込まれてしまった。

 

 与作の家の障子はボロボロであったが、貼り替える紙もなく、木枯らしが吹き込んでくる寒い冬を過ごすため、再度、地蔵さまに頼んでみることにしました。お地蔵さまが天をつくと、たくさんの紙がふってきました。一方、吾作がいやがるお地蔵さまからつえを奪い、めちゃくちゃに天を突くと、石ころや岩が雨のように降ってきました。

 

 スネ夫は大きな箱にケーキ、カステラ、最中、ようかん、クッキー、ビスケットなどをいっぱい詰めてやってきた。のび太が「もったいない!!」と叫ぶと、スネ夫は「もらいものばかりだから、それはそれでいいけど、食べさせられるぼくはたまらないよ、あきちゃって」とホールに捨てて帰っていった。

 

 ドラえもんは「このホールはタイムマシンの一種で、ゴミを大昔のまだ生物が住んでいない世界へ出す装置なのに。こしょうしてたとはな…。なんとかしなくちゃ、いつまでも超空間をでられない」と嘆いていた。

 

 どっちが上で、どっちが下かわからないので、とにかく入口をさがすため、闇雲に竹の棒で「えいっ えいっ」と突くまくっていると、「スポ」と穴があき、誤って出口のほうを開けたため、「ドテーン」と墜落してしまった。

 

 与作が山に食べ物をさがしに来ると、目の前でドラえもんが目を回してぶっ倒れていた。ドラえもんを石の上に鎮座させると、「ハッ」と目がさめ、「どうしようどうしよう」と動き回るので、ありがたや生き仏さまとななった。

 

 拝まれても、ドラえもんは「人のめんどうみるどころじゃないの!!」と叫んで、あのへんに出口があることは確かだと考え、「えいっ。えいっ」と天を突くと、「ドサ」と箱が落下してきた。その箱はスネ夫が捨てた物であった。

 

 その話を聞いて、吾作から天を突くようにいわれたので、突いてみると、「ドサ ドサ ベト~」とゴミが落下してきた。

 

 木枯らしが吹き出し、ジッとしていたら凍えちゃうので、ドラえもんは動きながら天を突いていると、のび太の答案が「バサ バサ」と落下し、与作は障子の紙だと大喜びしていた。それを見て、吾作はドラえもんの竹の棒を奪って自分で空を突くと、ブロックなどのガラクタが降ってきた。

 

 「与作は、凍えたお地蔵さまを家につれ帰って、泊めてあげました。お地蔵さまは毎日山へいって天をつきます。そのたびにすばらしい宝物がザクザク天からふってきました」

 

 その中にはこの世のものとは思えない美しい宝石(しずちゃんのビー玉やおはじき)、すきとおって光る天人の羽衣(ビニールのふろしき)、みごとな仏像(冷蔵庫とプラモ)などがありました。

 

 吾作がめずらしい宝石を盗んだものと殿様に訴えたので、与作をとらえるために家来が差し向けられた。これに気づいた与作は、お母さんを背負い、お地蔵さんを連れて、険しい山道を逃げることになった。

 

峠まで来ると、となりの軍勢が攻め寄せてきていました。与作はこのままではおらの国がやられてしまうので、ドラえもんのお地蔵さまになんとかしてくださいと、拝むことになった。ホールからなにか落ちてくると期待して歩いていると、「ガチャン」と自転車がふってきた。

 

 「お地蔵さまのだした秘宝「仙雲車」は、風より速く空を飛び、殿さまに敵軍がきたことをしらせました。思いがけない反撃に、うろたえたのは敵国側でした。おかげで与作の国は大勝利。

 

 殿さまは、与作にあやまりました。そして、たくさんのごほうびを与えました」、「お金持ちになった与作は、お地蔵さまにりっぱなほこらをつくってあげました。それからのち、お地蔵さまをみた者はだれもいません。きっと天へお帰りになったのでしょう。めでたし、めでたし」となった。

 

 ドラえもんはやっと、ホールにとどき、「ハヒ~」といいながら戻ってきた。「もうこんなもの二度と使わない」とポケットにしまいました。

 

 のび太が読み終わった『日本昔話』を入れてほしいと頼むと、「そんなもったいないことゆるさないぞ!!」と激怒し、ごみ箱をひっくり返して、「このエンピツも消しゴムも、まだ使える。ちり紙五枚も重ねてもったいない! ガムは味がなくなるまでかむんだよ」と強制するので、のび太は不思議そうにドラえもんをじっくり見ていた。

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