連想式推理虫メガネ [★★★]

[初出誌] 『連想式推理虫メガネ』、「小学四年生」19823月号、19頁、148コマ

[単行本]  『連想式推理虫メガネ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第32巻」1985125日 初版第1刷発行、20頁、158コマ

[大全集] 『連想式推理虫メガネ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 1120101130日 初版第1刷発行、20頁、158コマ

 

[梗概] のび太がスネ夫から電話で呼ばれたので、家に行ってみると、しずちゃんやジャイアンもきていた。スネ夫は二人の前で、「のび太はひるねをし、ヤブイ医院の前で水たまりにふみこんで、犬においかけられたろ」とズバリ言われた。当ののび太も「みていたのか!?」と、とてもビックリした。

 

 スネ夫は「のび太の口のまわりをみてごらん。よだれのあとがついている。くつに赤土がついていた。このへんで赤土のでてる場所は工事中のヤブイ医院も前だけだ。のび太は息をはずませて入ってきた。のび太が走るのは学校に遅れそうなときか、怖いものに追い掛けられたときである」とあざやかに推理してみせた。

 

しずちゃんは「天才だわ…」、ジャイアンも「どうしてそんな推理ができるんだよ」と感心していた。スネ夫は『推理術入門』で勉強し、この才能を世の中に役立てるため、骨川探偵事務所を設立したので、難しい事件があったら相談にきなさいと勧誘していた。

 

 のび太も探偵ごっこをしたいので、ドラえもんに「シャーロックホームズセット」をだしてくれと頼んだけれども、あんなのとっくにこわれたと言われてしまった。執拗に頼むと、ドラえもんはひみつ道具『連想式推理虫メガネ』を出してくれた。

 

実験として、どら焼きが絶対見つからないところへのび太に隠してもらった。このメガネを「カチ」と押すと、「ドラやきは丸い」,「丸いはお月さま」、「お月さまは0点」、「0点はのび太」、「ドラやきはのび太の腹の中」と正しく推理した。

 

どら焼きを食べられたドラえもんは腹を立て、のび太が「これがあれば名探偵になれるぞ」と主張しても、ドラえもんは「かってになれ!!」ときわめて冷たい態度を取っていた。

 

 しずちゃんがお財布を落としたので、スネ夫探偵事務所に相談に行った。のび太もいっしょにしずちゃんとスネ夫の家についていった。スネ夫は「推理ってのは、正確なデータの上に組み立てる」と言いながら、詳細にいままでの状況を尋問している。

 

 のび太はメガネを使って、「しずちゃんのさいふ」、「持ち主はしずちゃん」、「しずちゃんはおふろずき」、「おふろは英語でバス」、「バス停にさいふがおちている」となったので、バス停に行ってみたがさいふはなかった。

 

 そのころスネ夫は「しずちゃんのたどった道は人通りの多いところばかりだから、きっともうひろわれているとぼくは推理する。

 

 いろんなデータを考えると、交番にとどけてあるみこみが強い」となったので、二人で行ってみると、ある男性が「このさいふ、バス停でひろいました」と届けていた。そのため、スネ夫は安雄やはる夫からもシャーロックホームズみたいだと絶賛されていた。

 

  事件を探しにジャイアンの家に行くと、かあちゃんから「タケシはいませんよ!! ひっぱたいてやろうと思ったら、どっかへ消えちゃった。どこへかくれたか、あんたわからない?」尋ねられた。

 

 のび太が「カチ」とメガネを押し、「ジャイアンはどこに」、「ジャイアンはデブ」、「デブはブタ」と推理していると、ジャイアンが顔を出し「おれがブタだと!?」と怒鳴ったので、かあちゃんにつかまってしまった。

 

 なにをやってもうまくいかないので、ドラえもんに助けてもらうしかなかった。ドラえもんが「ぜったいにゆるさない!!」と猛烈に腹を立てていたが、のび太の「おわびにドラやき二つ買ってきたんだけど」と差し出すと、コロッと態度が変わり、「ゆるす!」となった。

 

 スネ夫の探偵事務所が大評判なので、「タイムテレビ」でチェックすることにした。ひとりの紳士が「世にもふしぎな密室盗難事件です」と相談にきていた。めったに手に入らない貴重なコインがカギのかかっている部屋から煙のように消えたという事件であった。

 

 スネ夫はすっかり探偵気取りで、依頼人の現場に出かけている。家のまわりのあやしい足跡もなく、外から入って気配もみられません。窓にもしっかりカギがかかり、ドアの向こうはこの家の主人の寝室であった。

 

 夜中にけんかしているような大声で目がさめて、この部屋をのぞいてみたのですがなにもかわりなく、ゆめでもみたのかとそのままねましたが、朝になって…、テーブルの上から金貨が消えていたという話であった。

 

 ドラえもんとのび太がタイムテレビを見ながら、「窓もあけず寝室も通らずにどうやって…。犯人はオバケかしら」と噂していた。するとスネ夫が豪快に「ワッハッハッハ」と笑いながら、自信を持って、「しめきったへやへ自由に出入りできる人間が犯人だ。

 

 そいつは「どこでもドア」をもっていて…」と言おうとすると、ドラえもんは「しつれいなことをいうな!!」と「どこでもドア」から怒鳴り込んでいった。すね夫は「ほ~らね! じゃあほかに犯人を推理できるというの?」と反論してきたので、ドラえもんはメガネを使うことにした。

 

 メガネを「カチ」と押し、「金貨をもっていったのはだれか?」、「金貨はお金」、「お金持ちはスネ夫」、「スネ夫は短足」、「もっと短足はドラえもん」となり、「金貨はドラえもんがもってった。ム! そうだったのか! ジャジャーン、犯人はぼくだそうです。うそうそ。ぼくじゃないよう。信じてくれえ」となってしまった。

 

 のび太はきっと真犯人を見つけると約束して、しばらくの時間の猶予を認めてもらった。

 

 行方不明の品を釣り上げるためにひみつ道具『落とし物つりぼり』を出して、釣り上げようとしたが「ピピピ」と鳴って、世界中のどこにもないということになった。二人が「どうしよう、どうしよう」とパニクッテいたとき、のび太が「タイムマシン」で、金貨のなくなる前に戻る案を出して、実行することになった。

 

 二人が金貨のある部屋へ行って、犯人が現れるのを待つことにした。なかなか犯人が現れないので、「ドラえもんがへんな道具を出すからいけないんだ」、「ぼくの道具は変じゃないぞ!!」、「へ~え、じゃ虫メガネのいうとおりきみが犯人か?」

 

 「ウ!……。そもそも探偵ごっこやりたいなんていうことからだっ」、「おつ、人のせいにして!」、「ドッタンバッタン」とつかみあいのけんかになり、「だれだ!! あれ…、だれもいない。夢でもみたのかな?」とこの家の主人の声が聞こえてきた。

 

 二人は朝まで見張っていたが、ついに犯人が現れなかったので、ドラえもんは「じゃあ、せめて金貨をもってって返してあげよう」と言いながらタイムマシンで帰ってきた。家に着いて、ドラえもんは「あ~っ。ばかなことをした!! ここへもってきたから金貨が消えたんだ!! ぬすまれたわけじゃなかったのか!!」と気づいた。

 

 ドラえもんは左手に金貨のケースをもって、「こんなややこしいばからしい話を、どう説明したらわかったてもらえるかなあ」と冷や汗を垂らしながら、持ち主の家に帰しに出かけている。

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