竜宮城の八日間 [★★★]

[初出誌] 『“浦島事件のなぞ”にちょう戦』、「小学四年生」19808月号、19頁、99コマ

[単行本]  『竜宮城の八日間』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第25巻」1982825日 初版第1刷発行、24頁、127コマ

[大全集] 『竜宮城の八日間』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 1020101030日 初版第1刷発行、24頁、127コマ

 

[梗概] テレビでは、宇宙パイロットが宇宙探検から一年ぶりで地球に帰ってきたシーンが放映されていた。その間、地球では五十年もの月日が流れていた。みんなが亡くなり、宇宙パイロットを出迎えたのは孫の青年であった。

 

 テレビを見ていたのび太はみんなに、「どうしてあのパイロットだけ年とらないの?」といった質問を投げかけた。すると、スネ夫が「物体の運動が光の速さに近づくほど、時間のたち方はおそくなるんだ」とアインシュタインの相対性理論を説明したが、のび太は全くチンプンカンプンで、「うそだあ…」と口走っていた。

 

 しずちゃんが立ち上がって、「それでわかったわ!!」と叫び、「浦島太郎が竜宮で三日すごして帰ってみたら、三百年たってたという…。あれはつまり宇宙旅行だったのよ。たすけたのはカメみたいな宇宙人で、カメ型ロケットで竜宮みたいなすばらしい星へつれていかれたのよ」といった考えを、みんなに紹介していた。

 

 みんなはその話に感動し、夏休みの宿題のグループ研究に、「浦島太郎事件のナゾをとく」という、テーマにしようとした。ドラえもんに相談すると、浦島太郎の話はおとぎ話であると思っていたが、航時局調査課に電話で確かめると、「1049年夏、海で行方不明になって、1317年ひょっこり帰ってきた」というケースを紹介された。

 

 タイムマシンで1049年の夏に出掛けると、海岸で子どもたちがカメをつかまえ、縄で結んで、「ブルン ブルン」と回して遊んでいた。すると、怖いおじさんがやってきて、「こりゃ、ガキめら」と追い払い、カメをつかんで「ウヒヒ、うまそうなカメだ」とつぶやいていた。

 

 とにかくカメを食べられちゃ、話にならないので、おじさんのところへ走っていくと、「なに? カメをうってくれって? いくらはらう?」とふっかけてきたが、はらうものを持っていなかった。おじさんがしずちゃんのつけていたブローチを見て、それとカメを交換することになった。

 

しずちゃんが浦島だと噂していると、そのカメがしずちゃんの親指を「ガブ」とかんで、「サササ」と海のほうへ逃げだした。「恩しらず!!」と叫んで、「ギュ」とカメを押さえると、「海へはなしてやりなさい」というので、しずちゃんは「本物の浦島太郎!!」と思った。

 

その漁師が「二度といじめっ子につかまるんじゃないぞ」とカメをやさしく海に放した。「おれたちがいじめっ子か」とみんなは憤慨していた。

 

 漁師の前に、「ザザザ」と潜水艦が現れ、「こら、モゾ。ひとりできたりしちゃだめじゃないか。オットー姫がどんなに心配されたことか。モゾは姫さまのペットなのです。お礼をしたいのでいっしょにおいでください」と、漁師を潜水艦に招いて「ゴボ ゴボ」と潜りだした。

 

  ドラえもんはひみつ道具『潜水ゴンドラ』を出し、「ポン」と吸着盤を撃ち出して、「ピタ」と潜水艦に命中させ、「ズル ズル」と引っ張ってもらうことにした。

 

 どんどん潜ってあたりは真っ暗になり、何千メートルもの深海に潜ったのではないかと考えていると、急に海の中が明るくなり出し、目の前に巨大な都市が出現し、みんなは竜宮を突き詰めたと喜んでいた。

 

 城壁の門が「ガ・ガ・ガ…」と開き、潜水艦が通過すると、門が「ガシャン」としまってしまったので、海の底に一行は投げ出されてしまった。ただ、不思議なことに空気があって、地上と同じように呼吸をすることができた。「どうでもいいけど、おれたちだけしめだすなんてけしからん!!」とジャイアンは喚いていた。

 

とにかく、竜宮をつきとめたので、門の前で、「はい、チーズ」といってしずちゃんに記念写真を撮ってもらおうとした。その時、一行は、海底人から「地上世界からきたスパイだな!!」とみなされて、牢屋にぶち込まれてしまった。

 

みんなは「と、とんでもない。スパイだなんて。夏休みのグループ研究で発表するだけです」と訴えても、全く無駄であった。

 

 三日間牢屋に閉じこめられ、ドラえもんのなんとか抜け出すひみつ道具も、あいにくみんな修理中であって、使い物にならなかった。外では浦島太郎が帰るので、にぎやかに送迎会が開かれていた。

 

  ジャイアンとスネ夫がトビラを「どんどん」叩くので、海底人が「うるさい!!」と注意し、「おまえらの処分についてはいま、会議中だ」と知らされている。

 

 裁判では、検事側から、「スパイは死刑! これは何万年も昔からわが国に伝わる法律なのですぞ!!」、一方、弁護側から、「しかし…、まだ子どもですから」、「だが発表するといっている。もしこの国のことが地上にしれたら…」

 

  「それじゃ、浦島太郎を帰したのはなぜだ」、「かれにはタマテボックスをもたせた。もし約束を破ってしゃべれば、たちまち三百歳の老人になる」、「オットー姫のご意見をうかがってみようか」、「姫によけいなご心配をかけたくない」、「あくまでわれわれだけでスパイの処分をきめるべきだ」と、相互で丁々発止の弁論が展開されていた。

 

 一週間たつと、海底人から「おもえたちは、銃殺刑ときまった。これからただちに執行される」と宣告された。

 

  一行が処刑場に連れ出されたとき、海底人が「大法官!!」と叫んでやってきて、彼らのもっていたこの機械を調べたら、こんな絵がうつっていましたと、三枚の写真を差し出した。この写真から、「モゾを助けたのはあの子たち!!」と判明したので、処刑直前に刑の執行が中止になった。

 

 オットー姫が「ほんとに、もうしわけありませんでした。どうかゆるしてください」と謝罪されたので、みんなはなんとなく納得したような心境になった。宴会の席で、ドラえもんが「この国の人たちは海底人なんですか? それとも宇宙人?」と尋ねると。

 

  姫は「いいえ、わたしたちも昔は地上にすんでいたのですよ」と語り出した。「何万年も昔、地球人はいまよりずっと進んだ科学をもっていたのです。わたしたちの国はムー大陸にあって、それは美しい豊かな国でした」、世界中で戦争が絶え間なく起こり、争いを好まない父王は国全体を海の底に沈めさせました。その後、世界は滅びてしまいました。

 

 「この国は、あなたがたの世界とは次元がちがうので、時間がゆっくり流れます」ので、地上の争いには巻き込まれたくないのです。最後に、「地上に帰っても、この国のことをだれにもいわないと約束してくれますか?」と言われたので、「ハイ」と答えて帰ってきた。

 

  帰りの潜水艦で「おみやげのタマテボックスはくれないんですか?」と尋ねると。「きみたちは、信用できる少年だからあげません」という、答えが返ってきた。

 

 タイムマシンの出入り口のあった場所には大きな木が生えていた。「竜宮にいる間に月日が流れ、こんなに大きく育って、出入り口を幹の中へのみこんじゃったんだ!!」と泣き叫んでいた。

 

  そこへ、おまわりさんがやってきたので、ドラえもんが「タイムマシンで1049年の世界へいったきり帰れなくなったんです」と訴えると、おまわりさんは「なにいってるのかさっぱりわからん。いまが19828月じゃないか!!」と教えてくれたので、「どこでもドア」から、みんなは「竜宮で八日あまりすごしてるうちに、地上では八百年以上すぎたんだ」と大喜びしながら、のび太の部屋に帰ってきた。

[S1041A2513048008]