どくさいスイッチ [★★★]

[初出誌] 『どくさいスイッチ』、「小学四年生」19776月号、10頁、66コマ

[単行本]  『どくさいスイッチ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第15巻」1978725日 初版第1刷発行、16頁、107コマ

[大全集] 『どくさいスイッチ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 72010428日 初版第1刷発行、16頁、107コマ

 

[梗概] ジャイアンズは182と惨敗してしまった。試合後、ジャイアンはのび太に「とられた18点のうち、15点はのび太のせいだ、おまえのヘマがなけりゃ、あと5点とれてたはずだ! 合計20点、おまえのためにそんした」と総括し、20発なぐってやるとバットを持って追いかけ出した。

 

 「ぐやじ~い」と泣きながら、なんでこんな目にあわなきゃならないんだ。ジャイアンさえいなくなればこんな目に会わないと、考えていると、ドラえもんがひみつ道具『どくさいスイッチ』を出してくれた。このスイッチを押すと、じゃま者をこの世から簡単に消すことができるようになる。

 

この話を聞いて、「ジャイアンはにくらいいやつだけど…、消しちゃうってのはかわいそうだよな」と考えながら歩いていた。突然、のび太はバットで「ズガン」となぐられ、ジャイアンにさっきのなぐり残し7発のぶんと言いながら、さらに追いかけられて殴られそうになった。そのため、のび太は「ジャイアン消えろ!」と叫んでスイッチを押してしまった。

 

 「たいへんなことをしてしまった…」と嘆いていると、しずちゃんから「どうしたの、まっさおな顔をして」と尋ねられた。のび太がジャイアンを消してしまったと告げると、「ジャイアン? それだれのこと?」と逆に質問されてしまった。

 

  先生に話しても、「剛田くん? ぼくのクラスにそんな子はいないよ。いやいままでだっていたことがない」と言われてしまった。ジャイアンのかあちゃんに尋ねても、「うちにはそんな子いませんよ」と言われている。

 

 のび太は「消えるよりも、はじめからいなかったことになるらしい」ということがわかってきた。ジャイアンがいなくなると、監督のスネ夫が「ガン」と頭をなぐり、20発なぐると追いかけてきたので、スイッチを押して消してしまった。

 

 家に帰って、ドラえもんに「消えた二人をまただしてくれ」と頼んだけれども、これは手品ではないといってきっぱり断られてしまった。おそろしいスイッチで、カッとなるとつい押したくなり、このためのび太は神経がくたびれてしょうがなかった。

 

  昼寝の夢の中でもよってたかって、いじめられたので、寝ぼけたのび太は暴れたはずみに、近くにあったスイッチを「バシ」と押してしまった。

 

 家の中がシーンと静まりかえり、ママの姿はどこにも見えなかった。しずちゃんの家に行っても、会社のパパに電話をしても、誰にも会うことができませんでした。

 

  タケコプターで空から見ても人のかげもないので、世界中の人間を消してしまったことに気づいた。えらいことをしたと泣き崩れていたが、やったことはしかたがないじゃないかという感情は生まれてきた。

 

 のび太は「いつどこで何をしてもかってなんだ。この地球がまるごとぼくものになったんだ。ぼくは独裁者だばんざい!」といった心境になった。しかし、家に帰っても、テレビはどの局もやっていないので、コンビニやおもちゃ屋さんへ行って好きなものを買いだめしてきた。

 

  もう食べれないというまで食べ、好きなだけゲームを楽しむと、夜になってしまった。電灯を付けて寝ようとしたら、当然停電であったので、ひとり寂しく屋根に上がって、空に向かって、「でてきてよう…。だれでもいい。ジャイアンでもいいからでてきてくれえ!」と絶叫した。

 

  「ひとりでなんて…、生きていけないよ・・」とつぶやくと、「きにいらないからってつぎつぎにけしてけば、きりのないことになるんだよ。わかった?」という声に、「うん、わかった」と答えると、ドラえもんが後ろにいることがわかった。

 

 「どくさいスイッチ」は独裁者をこらしめるための発明であった。元に戻して、次の日、広場でドラえもんとのび太がキャッチボールをしていると、スネ夫から「やあい、へたくそが練習してる」、ジャイアンからは「こんどなぐられないようにがんばれよ、へたくそ」と声を掛けられた。

 

  ボールを受けながらのび太は「まわりがうるさいことは、楽しいね」とドラえもんに話しかけている。

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