悪魔のパスポート[★★★]
[初出誌] 『悪魔のパスポート』、「小学四年生」1976年6月号、8頁、62コマ
[単行本] 『悪魔のパスポート』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第13巻」1977年4月25日 初版第1刷発行、10頁、78コマ
[大全集] 『悪魔のパスポート』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 6」2010年3月30日 初版第1刷発行、10頁、78コマ
[梗概] ものすごい人気のマンガ『ベルデカ』は三日のうちに売り切れてしまうので、のび太はママにいつもより三日早いおこづかいをお願いしている。どうしても前借りできないので、のび太は「かってに前借りして、三日後に返しとけばいいんだ」と思って、タンスの財布からお金を借りようとしたらママに見つかってしまった。
ママから、「ぼくのこと、どろぼうだって。今に、ろくなものにならないって」と、いつもより厳しく叱られた。すると、のび太は「そんなにいうのなら、ほんとに悪者になってやる。世界一の悪者になるぞ!」と宣言し、ドラえもんの四次元ポケットに手を突っ込みながら、「そのための道具をかせ」と訴えている。
のび太がたまたま手にしたものは、ひみつ道具の『悪魔のパスポート』であった。驚愕したドラえもんは「やきすてようと思って、わすれていたんだ。それさえ見せれば、どんな悪いことをしてもいいという、おそろしいパスポート」であると説明した。
のび太のほしかったものであり、ふたりは「返せったら返せっ。かたいこというなよ。ひとのものかってにもっていったら、どろぼうだぞ」とつかみあいのけんかになった。
のび太が手にしたパスポートを「サッ」とドラえもんに見せると、「ビカ ビカ ビカ ビカッ」と閃光が走り、意識もうろうとしたドラえもんは「いいんだ、どろぼうしても」と言い出した。
味を占めたのび太はタンスの財布を「ゴト ゴト」と探していると、ママから「なにやってんのよ」と怒鳴られた。そこで、「サッ」とパスポートを見せると、ママから「いいわよ、さいふごともってっても」と言われたので、さし当たり千円を持っていくことにした。
のび太はニヒルに笑いながら、「すごいや、どんなことをやってもいいんだから。もうめちゃくちゃやっちゃうぞ」と考えた。のび太の野望は銀行のお金を盗み、気にくわないやつを殺し、最後には、世界征服を企てることだってできるんだと、どんどんエスカレートしていった。
でもはじめのうちは、身の回りの小さなことからと考え、道路に置いてあったゴミ箱を足で「ドン」と蹴っ飛ばして、パスポートを見せると、近所の奥さんから、文句なんか全くないと言われた。
のび太はスネ夫の勉強部屋に土足で上がって近道させともらい、ジャイアンのお尻を思いっきり足で蹴っ飛ばし、頭を「ボカ ボカ」なぐったりしている。先生には「ぼく今度のテストからカンニングやります」と告げると、「おお、しっかりやれ」と笑顔で激励されている。
しずちゃんのスカートをめくりながら、こんなことしていいのかしらと頼むと、しずちゃんも「いやあん、どうぞ」と恥ずかしそうに答えている。
のび太がほしかった『ペルデカ』もパスポートを持っていたので、店主に見せながら、「これ、ぬすむ」と言いながら本を差し出すと、「はいはい。まいどありい」と快く言われて、手にすることができた。大喜びした、のび太は「どうどうとぬすんだぞ。ぼくはアルセーヌルパンだ、怪人二十面相だ」と有頂天になっていた。
家に帰って、「ペルデカ」を読み出すと、いつも赤字をやりくりしているママがかわいそうになり、みんなにした数々のいたずらが次から次へと頭を横切って、マンガを読んでもちっとも頭に入らなかった。
のび太は本屋さんへ行ってお金を払い、蹴飛ばしたゴミ箱の掃除を始めた。ドラえもんにパスポートを返しながら、「こんどこづかいをもらったらママの千円もかえすよ。それでもとどおり」と考えていたら、突然、「本のおつりもらうのわすれた」と大騒ぎし出した。
その光景を見て、ドラえもんは「きみが悪者になろうなんて思うのがむりなんだよ」と、やさしく慰めている。
[S0639・A1317・047606]