ぼく、桃太郎のなんなのさ(Ⅲ)[★★★]

[初出誌] 『その3 桃から生まれた○○○』、「小学四年生」19759月号、19頁、133コマ

[単行本]  『その3 桃から生まれた○○○』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第9巻」19751125日 初版第1刷発行、23頁、169コマ

[大全集] 『その3 桃から生まれた○○○』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 52010130日 初版第1刷発行、23頁、169コマ

 

[梗概](その3 桃から生まれた○○○)

 バケルが例の写真をドラえもんに見せても、とても信じられないので、この謎を解くため、タイムマシンに乗って637年前、つまり延元三年の世界へ出発することにした。

 

 「ドサ ドサッ」といつもと違う感じで着陸したので、ドラえもんはタイムマシンから青い顔をして降りてきた。しかし、理由も言わないで、「さあ、桃太郎をさがしにいこう!」とみんなを誘っている。

 

 さすがに山の姿は現代と変わっていなかったが、今のどぶ川が昔はとてもきれいな小川であり、学校裏にある千年杉はこんな昔から生えていた。キョロキョロしながら日が暮れるまで、探しても、村ひとつ見つけることができなかった。

 

 バケルはイヌの人形を出し、「チョン」とついてイヌに変身して、イヌの嗅覚をたよりに村を探すと、近くに村を発見することができた。急いで駆け出すと、ドラえもんものび太もイヌも、「スポ ドサ ドサ ドサッ」と大きな落とし穴に落下してしまった。

 

 穴の外の村人から、三匹がかかったという声が聞こえてきた。村の長老が「鬼のなかまにちがいない。朝まで、にがさんよう見はっておれ」とみんなに命じていた。ドラえもんたちは「なんか、ごかいされてるらしい。こまったなあ…」と嘆いていた。

 

 見張っている村人に、ドラえもんが「モモタロウを聞いたことがないか」と尋ねると、「桃から生まれた? 人間が? なにをばかな! ガハハハ ガハハ」と笑われてしまった。

 

 時代を間違えたんじゃないかと不安になってきたので、ひみつ道具「モグラ手ぶくろ」を使って、落とし穴から脱出することにした。桃太郎の手がかりがつかめないので、のび太などはタイムマシンで引き上げようと言いだしたので、ドラえもんはあわてて、「そりゃまずい! ぜったいまずい!」と制止している。

 

 バケルがユメ代の知恵を借りることにした。ユメ代は「鬼ヶ島でまっていれば、桃太郎がくるでしょ。鬼ヶ島へ行くには海岸へ出なくちゃ。海岸へ出るには、川をくだればいいわけだ」と理路整然と説明してくれたので、ドラえもんはぜったいしずまないひみつ道具『モモボート』を三個出している。

 

 「ドンブラコ ドンブラコ」と桃太郎のような気になりながら、川をくだっていると、「ゴオー」と急流に巻き込まれてしまった。

 

 海岸に着いたけれども、のび太ひとりはぐれてしまった。のび太を探しに出かけようとすると、ユメ代から「村人たちは、あたしたちのこと鬼だと思っているのよ、つかまったら命がないわ」と指摘されたので、ドラえもんはどうしていいのかわからなくなってしまった。

 

 おじいさんとおばあさんが川でモモボートを拾ってきて、半分に割ると中から男の子が出てきた。おばあさんは「神さまが、おさずけくださったにちがいない。桃太郎と名づけてそだてましょう」と言い出した。のび太は「じょうだんじゃない。

 

 ぼくはその桃太郎をさがしている」ので、本物を見つけだそうとして外に出たが、腹ぺこのため、「フラ フラ~」として倒れてしまった。

 

 のび太が鬼ヶ島に鬼退治にでかけるというと、おばあさんから「おう、勇ましいことじゃ」、おじいさんから日の丸の扇子で「えらいえらい」と祝福された。

 

 鬼は見上げるような大男で、燃えるような真っ赤な髪から、二本の角が生え、目は死んだ魚のような色で、鼻は天狗のようにとがり、けものの肉を食らい、生き血をすするというものであった。夜ごと村を襲い、食べ物や宝石を盗んでいくが、だれもこわがって退治するものがいなかった。のび太は真っ青になり、やめようかなと真剣に思った。

 

 おじいさんから、「おまえは神のつかわされた子だから、大じょうぶ!」と太鼓判を押され、古いよろいを着て、お弁当にきびだんごを持って、鬼退治に送り出された。のび太は海岸へ行けばドラえもんにあえると思って、急いでいると、キジとサルがやってきて、おなかペコペコで、きびだんごをくれたら、おともすると言い出した。

 

 きびだんごを食べ出したので、「シッ シッ」と追い返そうとした。なお、キジとサルの正体は、村人たちが山狩りをはじめたので、動物人形を使って変身したドラえもんとバケルくんであった。

 

 のび太が「桃太郎が見つからなかったのは残念だけど、そろそろ帰ったほうがよさそうだね」と提案すると、ドラえもんははじめて、「タイムマシン」が壊れていることを白状した。直る見込みは全くないと話していたら、たくさんの村人たちが「鬼がいたぞ」と追いかけてきた。

 

 話しても、全くわかってもらえないので、海岸まで走り、モーターボートに乗って出かけると、目の前に鬼ヶ島が現れた。

 

 のび太は「やけくそだ、鬼たいじでもなんでもやってやるぞ」と叫んで、鬼ヶ島に上陸した。のび太は熱戦銃、バケルは光線銃、ドラえもん自身は原子核破壊砲を持って鬼退治に出かけた。鬼が金棒で後ろから一行を殴ろうとしたとき、チョロとネズミが現れ、ドラえもんが「キャア!ネズミ」と絶叫して逃げようとした。

 

 すると、後ろにいた鬼に「ガツン」と一行にぶつかり、鬼は「ダダ」とぶっ倒れてしまった。まことにあっけない鬼退治であった。

 

記念写真を取るために、再度、動物人形を使って、ドラえもんはサルに、バケルはイヌに変身したが、キジは人数の都合でそろわなかった。

 

自動シャッターをセットした写真機の前で「チーズ」と言いながら写真を取ろうとしたら、ネズミがチョロッと出てきたので、サルのドラえもんが「ギャア」と絶叫して飛び上がったので、みんなも飛び上がった瞬間を写真で撮ることになった。

 

 目覚めた鬼をよく見ると外人であったので、バケルが外人に変身して、話を交わすと、オランダの船長であることがわかった。船長はスペインに向かって船出したが、方向音痴であったため、こんな野蛮な国へ来てしまい、その上、船は沈み、仲間はみんな死んでしまったと語り出した。

 

 わたしが助けを求めると、外人など見たこともない村人たちは宝物を投げ出し、竹やクワで追い回したりした。そのため、自分を守るため、角で脅し、時には乱暴をしたりしたので、ますます怖がられるようになった。

 

 船長が涙を流しながら、二度と帰れないふるさとや二度と会えないと思っている優しい妻や子どものことを語り出したので、ドラえもんは「どこでもドア」を出して、オランダに帰ってもらうことにした。「あなたは神さまです」とドラえもんの手を握っているとき、バケルは「この写真、もってってください。あなたの子孫につたわるはずです」と手渡している。

 

 ドラえもんの出したドアは時間を超えて進むことのできないひみつ道具であったので、村へ帰って、一生この時代で過ごさねばならなくなった。のび太たちは宝物でも持って帰れなければ、村へ入れてもらえないと思い、重い荷車を引いて村に入った。

 

 村人たちの間では、すごい宝だとか、鬼ヶ島から持ってきたとか、桃から生まれた桃太郎が鬼退治をしたとか、といった話題でもちきりであった。

 

 宝の車を押していたサルに変身したドラえもんが、空に「タイムカメラ」を発見したので、そのカメラに三人がつかまって長い時間をかけて、現代に帰ることができた。のび太はテーブルの前に座り、口に鉛筆をくわえて、「だけど、宿題にこんなことかいて先生、信じてくれるかなあ」と思案に暮れていた。

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