ぼくの生まれた日[★★★]

[初出誌] 『無題』、「小学四年生」19728月号、10頁、69コマ

[単行本]  『ぼくの生まれた日』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第2巻」197491日 初版第1刷発行、10頁、73コマ

[大全集] 『ぼくの生まれた日』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 22009830日 初版第1刷発行、10頁、73コマ

 

【初出誌vs.単行本】

 タイトル『無題』が『ぼくの生まれた日』に変更

 「昭和三十七年八月七日でいいんだね」が「昭和三十九年八月七日でいいんだね」に変更[51(1)]

「あれ?」、「おばあちゃんは? ずっとつきそっていたんだろ」コマ挿入[55(2)]

 

「ご先祖にほうこくするんだって、帰ったわ。あなたと入れちがいになったのね」コマ挿入[55(3)]

「よろこんでたろ」、「もう、顔じゅうくしゃくしゃにして…」コマ挿入[55(4)]

「ところでこの子」挿入[55(5)]

「名まえの意味? もちろんあるよ」コマ挿入[55(9)]

 

【単行本vs.大全集】

 「昭和三十九年八月七日でいいんだね」が「昭和三十七年八月七日でいいんだね」に変更[289(1)]

 

[梗概] のび太は「やる気なくなるよ。勉強しろ勉強しろと、同じことばっかり。今だってそうだよ、せっかく自分でやる気をおこしてたのに。母さんにいわれたら、いやになっちゃた。もっと、ぼくを信用して欲しいよ」と珍しくママに猛烈に抗議していた。

 

  ママから「じゃあ、ほっとけば自分からやる?」との問い掛けに、のび太はキッパリと「もちろんです!!」と返事している。


 ママから「それじゃ、好きなようになさい」と言われると、すぐさま喜び勇んで「遊んでこよう」というのび太であった。今度はパパも加わって、本格的な長い長い厳しい説教となった。

 

  怒り心頭に発しながら、のび太はドラえもんに対して「な、なにもあんなにひどく。ひょっとしたら、そうだ!! きっとそうなんだ!! ぼくはこの家のほんとの子じゃないんだ。どこかでひろわれたんだ」と訴える始末。

 

  さらにエスカレートして、「ほんとの子なら、あんなひどいおこられかたしないよ。ああ、ぼくのほんとのお母さま!! どこにいらっしゃるのかしら」と両手を握りしめて、哀れな境遇を訴えるのび太であった。


  ドラえもんが「じゃあたしかめようよ、「タイムマシン」で。きみの生まれた日へ行こう」と提案。二人はのび太の生まれた十年前、昭和三十九年八月七日にタイムマシンで行くことになった。家に到着して、部屋をのぞいても誰もいません。

 

  のび太は「親がいなくて、どうしてぼくが生まれたんだ」とドラえもんに尋ねると、「やっぱりひろわれたのかねえ」というつれない返事。のび太は「ワア~」と大声で泣き出したので、ドラえもんは「うそうそ! きっと病院だよ」と慰めている。


 そこへ、のび太のパパが「ドタ ドタ ドタ」と家に走り込んで、「どこだ、どこだ、生まれたという赤んぼうは、どこにいるんだ。電話をきいて、会社を早びけしてきたんだよう」という狼狽ぶり。ドラえもんが「ひょっとして、入院しているんじゃないの」と仄めかすと、パパは大慌てでママの入院している産婦人科医院へ駈け出した。


 医院へ到着すると、看護婦さんから「おめでとうございます。男のお子さんですよ」と告げられた。パパは「ハッ ハッ」と息を弾ませながら、「ハッ、ごちそうさま、いやその。どうも」とトンチンカンな応答。

 

  医院の2号室の前では、のび太もパパと同じように「ドキ ドキ」し、ドラえもんも「どんな子かしら」と興味津々の表情で立っていた。のび太が「きっと今のぼくのようににて、玉のようなかわいい子だよね」というと、ドラえもんは「ウフッ」と苦笑するばかりであった。


 気の動転したパパは「バアー お父さんだよ」と駆け寄り、「大きいなあ! お母さんそっくり」と言って、ママから「赤ちゃんはそっちよと」とたしなめられる始末。「ウッヒョー なんてまあ、かあわいい」と「デレ デレ」の顔で赤ちゃんを見ていた。

 

  そこへ、ドラえもんとのび太も「見せて 見せて」と部屋に走り込んで、一目見るなり、のび太は「ええつ、これがぼく!? しわくちゃじゃんか、まるでサルみたい!」ときわめて率直な感想。パパは顔を真っ赤にして、「サルとはなんだっ」と怒鳴り散らして二人を追い出してしまった。
 

 部屋の中では、ママが「だれよあの子」とパパに尋ねると、パパは「さっきから、うろちょろしてるんだ。あんなしつけをした親の顔が見たい」と立腹した様子。


 二人の話で、赤ちゃんの名前が話題になった。パパはすでに「のび太」という名前を考えていた。ママに向かって、「野比のび太! いい名だろ」といった会話がドアの外に立っていた二人にも聞こえてきた。

 

  のび太はそれを聞いて、「もっとかっこいい名に、して欲しいや。本人のきぼうもきいてくれるべきだ」とドアに手を伸ばして抗議しようとしていた。ドラえもんが「おい、よせ。またどなられるぞ」と注意したので、かろうじて中止することができた。


 部屋の中では、パパは「名まえの意味? もちろんあるよ。すこやかに大きく、どこまでも、のびて欲しいというねがいをこめた名まえだよ」、ママは「いい子に育って欲しいわ」、パパは「いい子にきまってるさ。きみににたら、成績優秀まちがいなし!」、ママは「あなたににたら、運動ならなんでもこいのスポーツマン」と会話は弾んでいた。


 部屋の外でドラえもんは「両方の悪いとこににちゃったんだな」としんみりと嘆いていると、パパとママの会話はどんどん佳境に入っていった。

 

  パパは「学者になるかな、政治家になるかな」、ママは「芸術家もいいわね、絵でも彫刻でも音楽でも」、さらにパパは「なんでもいい、社会のために役立つ人間になってくれれば。思いやりがあって勇かんで、明るく男らしくたくましく、清く正しく美しく」とドンドン際限なくエスカレーション。


 ドラえもんは意識朦朧といった表情になり、のび太は思わずドアを開けて、「あ、あのう。あまりきたいされちゃこまるんだけど。そんなたいした子じゃないんだから。いえほんと!」とパパに訴えると、顔を真っ赤にしたパパは「いったいうちの子に、なんのうらみが!!」と怒鳴る始末であった。


  家路に帰る途中、ドラえもんの「ほんとの子、だってことはわかったろ」との問いに、のび太は素直にうなずいて、「ぼくのしょうらいを、あんなに楽しみにしてたのか」と実感した。

 

  そして、その晩ママから「からだをこわすからもうねなさいってば」、パパからも「どうしたんだ、きゅうに勉強しだして」と心配されるほど、夜遅くまで猛勉強するのび太であった。
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