ドラえもん未来へ帰る[★★★]

[初出誌] 『無題』、「小学四年生」19713月号、14頁、93コマ

[大全集] 『ドラえもん未来へ帰る』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 12009729日 初版第1刷発行、14頁、93コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『無題』が『ドラえもん未来へ帰る』に変更

 

[梗概] ドラえもんが未来の世界に帰っている間、野比家には奇怪な現象が次から次へと起こった。夜中のび太の寝室を多くの人が歩いたり、壁に落書きがしてあったり、パパのマージャン大会の優勝賞品であるライターが盗まれたりしていた。

 

  つまり、カバキチカバタという案内人が未来の世界から、「タイムマシン」に乗って、今の世界を見学する観光旅行客をたくさん連れてきたからである。

 

 観光団の中には、マリオとルリコの新婚カップル、古代の服や学校に関心を持っている親子、金で何でも買いたがるおやじさん、野比家でタイムパトロールに逮捕された全世界指名手配の殺し屋ジャックなどさまざまな人々が含まれていた。

 

 時間観光旅行なんて大変迷惑だとのび太が訴えると、セワシはもう心配はいらないと言い出した。つまり、「タイムマシン」で旅行する人が増え、昔の人に迷惑をかけることが多くなったので、今後、一切の時間旅行を禁止する法律(旅行時間規制法)が制定されたからである。

 

 ドラえもんも法律の対象になったので、必然的に未来の世界へ帰らなければいけなくなった。のび太が「いやだ! ぼくは帰さないぞ!!」とドラえもんの手を握りながら詰め寄ると、ドラえもんは「男だろ! これからひとりでやっていくんだ。きみならできる!!」と励まし、「ぼくが来たころからみると、ずっとましになっている」と称賛してくれた。

 

  セワシも「元気になったし、からだも強くなった。頭もすこーしよくなった」と付け足してくれた。

 

 机の引き出しからは、「プオ~ プオ~ プオ~」と引き上げの合図が聞こえてきた。のび太とドラえもんがしっかり握手している時、セワシが強引に引き離して、ドラえもんを引き出しの中へ押し込んだ。

 

  ドラえもんは顔一面に涙を浮かべて、「いやだァ。のび太くんとわかれるのいやだあ」と絶叫していた。まるで、最も痛みを伴う、母子分離の様相を呈していた。

 

 「タイムマシン」でドラえもんが帰ってしまったので、のび太は椅子に座り、少し机の引き出しを開けた状態で、次のように述懐した。「つくえの引き出しは、ただの引き出しにもどりました。でも…、ぼくは開けるたびにドラえもんを思いだすのです」と。

[S0118M01067047103]