わすれとんかち[★★★]

[初出誌] 『無題』、「小学四年生」197011月号、14頁、96コマ

[単行本]  『わすれとんかち』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第5巻」1974121日 初版第1刷発行、14頁、96コマ

[大全集] 『わすれとんかち』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 12009729日 初版第1刷発行、14頁、96コマ

 

【初出誌vs.単行本】

 タイトル『無題』が『わすれとんかち』に変更

 「あのしろは映画のセットだ」が「しろは見つかったけど……」、「映画のセットだった」に変更[63(2)]

 

【単行本vs.大全集】

「ははあ、記憶喪失だね」が「ははあ、記憶そう失しょうという病気だね」に変更[212(7)]

「電車の音がしたとか」が「橋の下とか、ゴミための横とか……」に変更[215(1)]

 

「ところがね……、やりそこなうと、よけいにおかしくなっちゃうこともあるんだ」が「ころがね……、やりそこなうと、パーになっちゃうこともあるんだ」に変更[216(6)]

 

「こわいなあ」が「パーになっちゃこまる」に変更[216(7)]

「えへへ……、わたし、こんなことがしゅみで」が「えへへ……、こじきのまねがしゅみで」に変更[222(9)]

 

[梗概] スネ夫とのび太が将棋をしていたら、自分の名前も、家も、仕事も、すっかり忘れた見も知らずの男性が骨川家に現れた。骨川家に来ていたドラえもんがしばらく観察すると、記憶喪失の男性であることがわかった。その男性は一軒ずつ回って、自分の家を探し、顔が骨川家の人たちと似ているので、尋ねたきたといった次第である。

 

骨川家を出たあとも、何も食べないで、「フラ フラ」の状態で歩いていたので、気の毒になったのび太が野比家に連れてきた。

 

早速、食事を始めると、「モリモリ バクバク ガッガッ」と十ぱいもおかわりをした。ママが親切にすると、「ひょっとしたら、あなたは…、ぼくのママではありませんか?」と言い出した。

 

 何も手掛かりがなかったので、ドラえもんはその男性を二階に連れて行って、いろいろ聞いてみた。結局、何もわからなかったので、ドラえもんは最後の手段として、なくした記憶を叩き出すひみつ道具『わすれとんかち』の使用を決心した。

 

  この道具の欠点は「やりそこなうと、よけいにおかしくなっちゃうこともある」という点にあった。最初、男性は使うことをためらったが、渋々承知することになった。

 

 そっと後頭部をこの道具でたたくと、東京タワーから落下し、車にひかれ、刀で切られ、ろくな目に会っていない人だとわかった。住んでいた家などを思い出してもらうと、お城に住んでいたり、すごい大金の前でお金を数えているシーンがでたきた。

 

  そのため、ドラえもんはお城みたいな家に住んでいて、お金持ちで、いつも悪者に狙われている人だと判断した。その人もぼくの家を見つけてくれたら百万円あげると言い出した。

 

 ドラえもんは町内の子どもたちに、お城みたいな家を知らないかと尋ねている。それを聞いたスネ夫は、「とんかち」を持って往来を歩いているその男に出会ったので、家に連れてきた。スネ夫のママは早速、すし屋さんににぎりの上を電話で注文し出した。

 

  すると、その男はカツ丼とうな丼の上を二人前、追加注文してもらっている。スネ夫たちがおしぼりの上やお茶の上でもてなしていると、十万円ずつあげると言ってくれた。ママやスネ夫も「顔が似てますわね。親戚かも」と調子にいいことを言っている。

 

 「わすれとんかち」でお城のような家を見せてもらうと、全く普通の家がでてきた。やり直すと、今度はクモの巣の張ったみすぼらしい部屋で、うちわを使って鍋で、なんか料理を作っていた。

 

  スネ夫のママから「うそつき」と呼ばれ、家を追い出されるとき、もういっぺんとんかちで頭をたたくと、その男は銀行強盗の姿で警官と激しくピストルを撃ち合っていた。

 

 「おじさんの正体は、ギャング?」と驚きの声をスネ夫があげると、その男も「そういえば、そうだったようなおぼえもある」と言いながら、「もっとめしを食わせろ!」とママを脅迫してきた。

 

  そこで、スネ夫が思いっ切りとんかちでその男の頭をたたくと、キングコング、宇宙人、素浪人、ギャングの姿が「ピカ ピカ」と次から次へと出てきた。

 

 城も映画セットであり、例の男も悪役スターであることが、ドラえもんに明らかになった。往来では、スネ夫やママが例の男ととんかちで激しく殴り合ったので、「わたしのおうちは、どこかしら」とおかしくなってさまよっていた。

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