ペコペコバッタ[★★★]

[初出誌] 『無題』、「小学四年生」197010月号、14頁、100コマ

[単行本]  『ペコペコバッタ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第1巻」197481日 初版第1刷発行、14頁、102コマ

[大全集] 『ペコペコバッタ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 12009729日 初版第1刷発行、14頁、102コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『無題』が『ペコペコバッタ』に変更

 「いそがしい。いそがしい」コマ挿入[92(7)]

「おりに入れられてる!」、「だれにやられたの?」コマ挿入[94(6)]

 

[梗概]  のび太が往来を歩いていると、スネ夫の蹴ったサッカーボールがメガネに当たって、右のメガネのレンズが割れてしまった。

 

  スネ夫はボールの持ち主に、持ち主はサッカーをやろうと言い出した者に、やろうと言い出したものは学校でやろうとしたら、ジャイアンがかまわないから道路でやれと、お互いに責任をなすりつけ合っていた。だれ一人のび太に謝るものはなく、最終的にはボールをよけなかったのび太のせいにされてしまった。


 この話を聞いて怒り心頭に発したドラえもんはひみつ道具である『ペコペコバッタ』を取り出した。このバッタに取りつかれると、「じぶんの悪かったことを反省して、ペコペコあやまる」ひみつ道具である。

 

  なお、スポッと鼻に入ったバッタはコショウを振りかけると追い出すことができる。スネ夫は謝る気が全くないので、このバッタを使うと、「ウワ~ア」と大声で泣き出し、「つくづく考えると、ああ、ぼくはなんという悪者だろう」と大反省をし、のび太に「ボカ ボカ」と殴ってもらっても、まだ罪は消えないと謝っている。

 

 ジャイアンも最初はまったく謝る気がなかったけれども、バッタがスウと鼻の中に入ると、自ら頭を「ドカ ドカ」殴り、電柱に頭を「ドス ドス」ぶつけたりしたが、まだ気がすまない様子だった。どでかい木のトンカチを出して、のび太に強引に殴らせようとした。

 

  「ヨロ ヨロ」とバランスを崩したのび太はドラえもんの持っていたバッタの入った虫カゴを壊してしまった。バッタが町中に散らばり、あちらでもこちらでも、謝るシーンを見ることができた。バッタを取り出すためにはコショウが必要であったけれども、ドラえもんはどこかで落としてしまった。

 

 コショウを家に取りに帰る途中、おとなしくてまじめで優等生であるタダシくんが塀の上に乗って首をつろうとしていた。理由をただすと、テストのたびにカンニングをし、ほら穴にスネ夫を落としたり、しずちゃんのスカートを釣りバリでつり上げたりしていた。

 

  タダシくんが通りかかったジャイアンにも謝ろうとすると、ジャイアンは「おれのやった悪事にくらべりゃ」といって走り去り、スネ夫からは「そんなつまらないことで、呼びとめるなっ」と怒鳴られる始末であった。さらに、スネ夫は「あと百八十三人に謝らなくちゃ」と大忙しであった。


 ドラえもんの代わりにのび太が「タケコプター」でコショウを取りに帰ると、屋根の上では強盗が出刃包丁で腹を切ろうとしていた。ひとまず交番まで連れて行って、お巡りさんに捕まえてもらおうとした。

 

  すると、お巡りさんは檻の中に入って、「ぼくの正体は石川五右衛門。またの名が、怪人二十面相」と名乗り、「ベトナム戦争も、光化学スモッグも、物価の値上がりも、みんなぼくの責任ですと」強盗に宣言していた。


 事態はますますひどくなってきたので、早く家に帰ってコショウを見つける必要があった。家では、パパは「毎晩仕事でおそくなるといってたが、じつは、マージャンで」と、ママも「わたしこそないしょで真珠の首飾りを買っちゃって」とお互いに涙を流して謝っていた。

 

  のび太が二人にコショウを振りかけると、元にすっかり戻ることができた。すると、ママは「よくもウソついていたわねっ」と、パパも「きみこそ、こんな高いものを」と一触即発の状態になってしまった。困惑した顔のドラえもんのかたわらで、のび太は両手を広げて「みんなをなおすのが、心配になってきた」と憂えるのであった。
[S0113A0107047010]