石器時代のホテル [★★★]

[初出誌] 『昔はよかったなあ』、「小学三年生」198210月号、19頁、99コマ

[単行本]  『石器時代のホテル』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第38巻」1987125日 初版第1刷発行、23頁、124コマ

[大全集] 『石器時代のホテル』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 132011430日 初版第1刷発行、23頁、124コマ

 

 [梗概] のび太は「いつからこんなものできたんだろう。こんなよけいなものがあるばっかりに…。世界じゅうの罪もない子どもたちが苦しんでる。だれがこんなもの発明したんだろう」と嘆いていた。

 

 ドラえもんから「なんのこと?」と質問されたので、「宿題! それに勉強! 学校!」との返事であった。「大事なものばっかり」と反論すると、「大事だと思わないね。だって昔は学校なんてなかったはずだよ。それでもみんなりっぱに生きていたんだ。昔はよかったんだなあ」というのがのび太の主張であった。

 

 窓の外では、ジャイアンとスネ夫が「空き地で野球しちゃだめだって。じゃあ、どこでやれっていうんだ!! 昔はこのあたり空き地だらけだったんだって。昔はよかったんだんあ」と会話していた。

 

 しずちゃんもゆううつそうな顔をしながら、「ピアノのレッスンがいやでにげてきたの」ということであった。「やっぱり! 昔のほうがいいんだ。昔はピアノなんかなかったもんね」というのがスネ夫の考えであった。

 

 「たとえばさ、石器時代の人たちなんかさ、学校もないし、会社もないから、寝たい時に寝てたべたい時にたべて、すきなところで思いっきり遊んで…」といった話が、机の上に座って聞き耳を立てていたドラえもんに聞こえてきた。

 

 「さては…くるな」と思ったドラえもんはひみつ道具『過去予約電話機』を使って、石器時代のホテルに五人分を予約している。

 

 石器時代のホテルは「タイムマシンで旅行する人のために、いろんな時代のいろんな場所にホテル」を作っていた。「ぼくらはほんとの昔の人みたいに暮らしたいんだけど」と言い張るので、ドラえもんは「石器時代はきびしい世界なんだぞ。ホテルがいやならつれていけない」と強硬に主張し、二万年ほど昔にタイムマシンで出発した。

 

 到着すると、ひろびろとして家が一軒もなかった。「空気がおいしい。ああ~昔はいいなあ」と感動していると、ドラえもんがホテルはこっちだと案内してくれた。

 

 ホテルは洞穴のように見えたが、ロビーがあり、小さな穴が客室で、床は「フカ フカ」の絨毯で、岩かと思ったらクッションであった。ロッカーを「ギ・ギ…」と開けると、本物の毛皮に見える服や、スポンジでできている石ヤリと石おのが出てきた。

 

 二万年前の主役はマンモスであったので、マンモス狩りに出かけようとしたら、マンモスが「バオーン バルル…」と現れ、のび太を「ヌウ ギャア」と鼻で巻き上げたが、ホテルで飼い馴らしてあるため、何ら心配することはなかった。

 

 全員マンモスの背中に乗ってしばらく散歩をした。湖には貸し丸木舟がおいてあるので、それに乗ることにした。水がとても冷たくておいしいのでしずちゃんが飲んだあと、のび太が飲もうとして「ボチャン」と湖に落ち、溺れてしまった。

 

 ジャイアンが「腹がへったぞォ」と叫ぶので、ドラえもんはこのあたりに自動販売機があるので、石のコインを「ガチャン」と入れると、ランチのカプセルがなった。それを割って、原始人らしく手づかみで食べることになった。

 

 食後、「昼寝しようぜ、だれにも気がねなく。ああ~、天国だ。ずっとここで暮らしたいね」と話し合っていると、遠くのほうでマンモスが勢いよく走っていくのが目に入った。しばらくすると、「ドドーッ」と火山が噴火しだした。火山灰が降り、溶岩が流れ出したので、タイムマシンの出入り口が溶岩に埋もれてしまった。

 

 帰れなくなったので、「そ~ら始まった。いつもこうなんだ」、「今度のは故障じゃないからね、ぼく、しらないもんね!!」、「ちょっと…。まさかタケコプターとか道具をみんなおいてきたんじゃないだろうね」、「あたり…。ほんとの原始人みたいに暮らしたいといったから」と口げんかになってしまった。

 

 しずちゃんから「けんかなんかしている場合じゃないでしょ!! それより、なんとかしてこの世界で生きることを考えなくちゃ。できるはずよ、石器時代の人々はちゃんと生き抜いてきたんですもの」との提案で、みんなは「力を合わせて生き抜こう」と誓った。

 

 石器時代でおそろしい猛獣もいるかもしれないので、石を砕いて石器や武器を作ろうとしたがうまくいかなかった。腹ペコになったので、ドッサリなっている木の実を食べようとしたが、色が毒々しいので、食べて体をこわしたら、医者も薬もないので食べるのをがまんした。

 

 この時代はまだ氷河期であったので、ホテルが埋もれちゃって暖房が止まり…。このまま夜になると凍え死ぬとわかったので、山の麓の洞穴へ急いで避難しようとみんなで駆け出した。しばらくすると、雪が降りだし、吹雪になって日が暮れだした。

 

 みんなはからだを寄せ合って、「ハクション ハクション」しながら、寒さに耐えようとしたら、スネ夫が木と木をこすると火がおきるはずだと言いだしたので、ジャイアンが「ゴシ ゴシ ゴシ ゴシ ゴシ」とこすったが、手がマメだらけになっても火は起きなかった。

 

 クラヤミの中で「カサ コソ ウルル…」と猛獣の気配が感じられた。オオカミよりもっと大きな野獣が突然「ガウ…」と現れ、サーベルタイガーであると判明した。のび太が追い掛けられ、危うく食べられそうになった時、「ビビ」と攻撃を受け、「ミャゴ ミャゴ」と逃げていった。

 

 タイムパトロールがやってきて、「みなさんぶじですか。ホテル側の手ちがいで噴火情報がとどかなかったらしい。大きな事故にならなくてよかった」と駆けつけてきてくれた。

 

 タイムパトロールに現代に送ってもらう時、「昔むかしもいいことばかりじゃなかったんだね。今の時代が気に入らないとこぼしてるだけじゃなんにもならない」と船の中で会話を交わした。

 

 のび太がドラえもんに「ぼくらのすんでるこの時代をすこしでもよくするためにがんばらなくちゃ」と左拳を上げて訴えていると、ママから「その前に宿題をやりなさい」とキッパリ言われてしまった。

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