鏡の中の世界 [★★★]
[初出誌] 『のび太の鏡の中の世界』、「小学三年生」1982年6月号、19頁、140コマ
[単行本] 『鏡の中の世界』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第33巻」1985年4月25日 初版第1刷発行、22頁、162コマ
[大全集] 『鏡の中の世界』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 13」2011年4月30日 初版第1刷発行、22頁、162コマ
[梗概] バットをもって追いかけられたのび太が、ジャイアンから「おまえを見るたびにぶんなぐるからな」と捨て台詞を言われたので、「もう一生、家の外へ、でないもん! 死んでもでないんだ!!」と決心した。のび太は次の朝「おきないと学校におくれるわよ!!」と言われても、押し入れからでようとしなかった。
ドラえもんはひみつ道具『入りこみ鏡』を出し、スイッチを「パチ」と押すと、左右はあべこべだけど、鏡の中にそっくりなひとのいない世界が現れた。「パチ」と消すと、あっちの世界の鏡は消えてしまった。
学校へ行っても教室には誰も来ていなかったので、鏡のスイッチを押すと、先生が出席を取るところであった。野比くんと名前を呼ばれた時、鏡の中へすばやく入って「はい」と返事することができた。のび太が来るのを待っていたジャイアンとスネ夫は遅刻する羽目になり、廊下で立たされることになった。
休み時間に追われた時は鏡の世界へ避難して、その日は無事授業を受けることができた。ママから買い物を頼まれると、「行きたいんだけど、どこへもでられないの。ドラえもんがいじわるするから」と答えて、再度「入りこみ鏡」を出してもらっている。
のび太がこの鏡の中に入ると、買い物かごを「ポイ」と投げ入れて、スイッチを切ったので、ドラえもんが買い物に行くことになった。
のび太はこの鏡を使っていじわるな二人をこらしめてやろうと考え、まず、はじめにスネ夫の家に行った。ジャイアンにいじめられたスネ夫が「こんなごうかなおやつは、ジャイアンなんかみたこともないだろ」といいながら食べようとすると、ママから手を洗うように言われた。
その間に、のび太はおやつをペロリと平らげ、「ミラー貝人」と書いたメモを残して帰っている。
のび太はジャイアンに取り上げられたものを本棚や押し入れをさがして、持ち帰っている。部屋がちらかっていたので、帰ってきたジャイアンはかあちゃんに「バシ」とほっぺを殴られ、ドカンのある広場まで追いかけられた。
ドカンにかくれると、のび太は「土管の中」と教えたので、引っ張り出されて「ボカ ボカ」と殴られてダウンしているところへ、一枚のメモ「わるものはこうなるのだぞ ミラー貝人」が「ヒラ ヒラ」と落ちてきた。
のび太がしずちゃんの部屋へかってに上がって、しずちゃんがどこにいるか鏡で調べると、ママから「とにかくご近所から叱られたの。バイオリンをやめなさい」と注意され、しずちゃんが「そんにひどい音かしら。つまんない…。
あたし、ピアノよりバイオリンがすきなのに」と元気なくションボリしていた。すると、しずちゃんの目の前に、一枚のメモ「かがみの国へごあんないしよう ミラー貝人」が「ヒラ ヒラ」落ちてきた。
「ミラーカイイレ」ってなにかしらと考えていると、顔を赤らめたのび太が頭をかきながら、「ミラー貝人」のまちがいだったと言いながら鏡からでてきた。そして、「きみだけにぼくのひみつをうちあけよう」と言いながら、鏡の中の世界へ案内している。
しずちゃんは「ほんとに叱られない?」と半信半疑であったけれども、のび太は誰も住んでいない世界だから、えんりょなく思いっきりでかい音でとすすめた。しずちゃんは「ブギ~ ギコ バリ バリ ガギ~」とすごい音で弾き出したので、さすがののび太も「バイオリンはいつでもひけるから」と外に連れ出している。
出木杉の宿題を見せてもらい、本屋で思う存分立ち読みをし、パチンコ店に入り、スターウオーズの映画をたった二人で見ることができた。あっちの世界では車がビュンビュン走る大通りで寝っ転がったり、公園のボートにただで乗ったりすることもできた。
ドカンのある広場でボール遊びをしていたら、ボールが「ブウン ガチャ」と鏡に当たって割れてしまった。セロテープでつないだが、テープが邪魔して鏡の世界へ入ることができなかった。のび太が昼間ジャイアンやスネ夫にいたずらをしていると聞いたので、ドラえもんは「もうあんなやつのこと心配するのよそう」と腹を立てていた。
のび太が鏡で見ると、夕飯時に、ドラえもんは「おなかがすけば帰ってくるよ」と言いながら、大きな口をあけて「パク パク」と飯を食っていた。ドラえもんが二階へ上がっていったので、鏡から左手を出して「お~い、ドラえも~ん」と助けを求めた。ドラえもんから鏡が割れちゃどうしようもないと言われたので、絶望的な気持ちになっていた。
しばらくすると、しずちゃんが「スモールライト」を使ったらどうか、というアイディアを出したので、「ピカ」と割れた鏡を照らすと、小さくなって鏡から戻ってくることができた。
腹を立てて仁王立ちになっているドラえもんに対して、のび太は頭を「ペコ ペコ」さげながら、「ただいま帰りました。もう二度とかってなことはしないから…」と懸命に謝っていた。
[S1327・A3307・038206]