ハッピーバースデイ・ジャイアン [★★★]

[初出誌] 『ジャイアンのたん生日』、「小学三年生」19806月号、9頁、63コマ

[単行本]  『ハッピーバースデイ・ジャイアン』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第23巻」1982125日 初版第1刷発行、9頁、63コマ

[大全集] 『ハッピーバースデイ・ジャイアン』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 1120101130日 初版第1刷発行、9頁、63コマ

 

【初出誌vs.大全集】

 タイトル『ジャイアンのたん生日』が『ハッピーバースデイ・ジャイアン』に変更

 

 [梗概] 学校帰りにスネ夫がのんびり歩いているのび太やしずちゃんに、今日は何の日かを尋ねている。六月十五日はジャイアンの誕生日であるとわかると、ふたりともパニック状態になってしまった。

 

  プレゼントが気に入らないとぶん殴られ、ケーキは一人で食べちゃうし、その上、ものすごい歌を聞かされるので、スネ夫は去年、風邪で、しずちゃんは親類の結婚式、のび太は葬式といった理由をつけてなんとか欠席にこぎつけることができた。

 

 ジャイアンが呼びに来る前に、家を出ようと確認し合って大急ぎで帰宅した。一方、ジャイアンはあらかじめ、せっかく訪ねていった友だちが留守だったらガッカリするので、そうならないひみつ道具『相手ストッパー』をドラえもんから、借り出している。

 

  ジャイアンはこの道具でみんなを足止めにして、誕生日に家まで強引に来てもらっている。ジャイアンのかあちゃんはたけしの誕生日に、みんながきてくれたのをとても信じられない表情だった。

 

 乾杯の後、誕生日のプレゼントの話になったが、しずちゃんやドラえもんは「そ、それがその…。忘れたわけじゃないけど…」、スネ夫は「少しでもいいものをとさがしてたら、まにあわなくて…」、のび太は「あとでかならず…」と、みんな苦しい言い訳に四苦八苦していた。ジャイアンも「ま、楽しみは、あとに残しといたほうがいいんだ」と鷹揚であった。

 

 ジャイアンひとりが、ああ、じつに楽しいパーティーだとさわいでいたが、ほかの参加者は下を向いて、神妙にうなづいていた。パーッとにぎやかに、おれさまのリサイタルをひらくと宣言して、「おいらの~胸の心のせつなさよ~ 雨が降れば~ 胸の心の頭もぬれるよ~」と例の調子で歌い出した。

 

 場のムードに気づいたジャイアンは「なんか迷惑そうだな。わかってるぞ。おまえら、ほんとはいやなんだろ。しずしぶ祝ってもらっても、ちっともうれしくないぞ!! 帰れ!!」と怒鳴ってしまった。

 

 その晩、遅くなって、ジャイアンが外で、「ドラえもん。ドラえもん」と呼んでいるのが聞こえた。すっかり元気のなくなったジャイアンが「ねむれないんだよ。おれって、どうして人気がないんだろ」とドラえもんに尋ねるので、「だからって、ぼくをおこすことないだろ。きまってるだろ。わがままで、らんぼうで、ずうずうしくて…」と厳しく注意された。

 

  すると、普段のジャイアンとは異なってしおらしく、「やっぱり…。自分でもわかってるけど、どうにもならないんだ。せめて、一年に一度誕生日くらい心から祝ってほしいよ~」とドラえもんに泣き崩れながら訴えている。

 

 ドラえもんはジャイアンの心情が十分理解できたので、ひみつ道具『かんにんぶくろ』を出し、さらに、ひみつ道具『ふりだしにもどる』で、時間を誕生日の三日前に戻している。

 

  ジャイアンは「急におとなしくなったとか、まるで人がかわったみたいとか、おかしくなったのかしら!? 気もち悪い」とか言われていた。しかし、時には、思いっきり「かんにんぶくろ」に顔を真っ赤にして、息を吹き込んで、腹が立つのを押さえることもあった。

 

 スネ夫は「ジャイアン、おとなしくなったんだてな」と思いっきり尻を蹴ったので、「ムガー」となってスネ夫を追い掛けだした。それを見て、ドラえもんはタケコプターで、ジャイアンを空中に連れ去っている。

 

  「かんにんぶくろ」はもうこれ以上吹き込むと爆発する寸前まできていた。のび太が「ジャイアンもやさしくなったね」、しずちゃんも「あすの誕生日、お祝いしてあげましょうよ」と言っているを屋根の上で聞きながら、ドラえもんは「ね、もう一日のがまんだから、笑って笑って」と説得し、ジャイアンも「ウー、苦しいなあ」と懸命に耐えていた。

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