正直電波(新型)[★★]

【道具解説】 ひみつ道具の『正直電波(新型)』を使うと、普通なら照れくさくて言えないようなことでも、しゃべらずにはいられなくなる。

 

【使用目的】 明日結婚式であったけれども、しずちゃんとパパの間には一切の話がなかったので、ドラえもんは「正直電波」を取り出している。

 

【使用結果】 ドラえもんがしずちゃんに「正直電波」を向けて発信した。 元気よくパパの部屋に入ってきたしずちゃんは開口一番、「パパ! あたし、およめにいくのやめる!!」といった爆弾発言。『透明マント』を被って姿の見えないドラえもんとのび太は驚天動地の表情。

 

  さらに、しずちゃんは「わたしがいっちゃったらパパさびしくなるでしょ。これまでずっと甘えたりわがままいったり…、それなのにわたしのほうは、パパやママになんにもしてあげられなかったわね」と真情を述べた。

 

すると、パパはおもむろに「とんでもない。きみはぼくらにすばらしいおくり物を残していってくれるんだよ。数えきれないほどのね。最初のおくり物はきみがうまれてきてくれたことだ。

 

午前三時ごろだったよ。きみの産声が天使のラッパみたいにきこえた。あんな楽しい音楽はきいたことがない」とソファーに座り、パイプをくゆらしながら、静かに語った。

 

 ソファーから立ち上がり、絨毯の敷き詰めた部屋を数歩進み、窓際に立って、パパは「病院をでた時、かすかに東の空が白んではいたが、頭の上はまだ一面の星空だった。こんな広い宇宙の片すみに、ぼくの血をうけついだ生命がいま、うまれたんだ。そう思うとむやみに感動しちゃって。涙がとまらなかったよ」と楽しげに述懐した。

 

パパは「それからの毎日、楽しかった日、みちたりた日日の思い出こそ、きみからの最高の贈り物だったんだよ。少しぐらいさびしくても、思い出があたためてくれるさ。そんなこと気にかけなくていいんだよ」と優しくし娘に語りかけるのであった。 しずちゃんの「あたし…、不安なの。うまくやっていけるかしら」との問いに対して、しずちゃんのパパはキッパリと回答している。

 

「やれるとも。のび太くんを信じなさい。のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね。かれなら、まちがいなくきみをしあわせにしてくれるとぼくは信じているよ」とドラえもんマンガ史上、最高の珠玉の言葉で話を結んでいる。

 

  「タイムマシン」で帰ったのび太とドラえもんは次の日、しずちゃんの家の玄関前で涙を流しながら立っていた。のび太は「きっときっと、きみをしあわせにしてみせるからね!!」と、チンプンカンプンで何もわからず「ポカーン」と立っているしずちゃんに唐突に約束していた。

 

 その傍らではドラえもんも右手で大粒の涙を拭きながら、立ち竦んでいた。

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