ドラえもんだらけ[★★]

[初出誌] 『宿題でたいへん』、「小学三年生」19712月号、15頁、109コマ

[単行本]  『ドラえもんだらけ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第5巻」1974121日 初版第1刷発行、15頁、109コマ

[大全集] 『ドラえもんだらけ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 12009729日 初版第1刷発行、15頁、109コマ

 

 [梗概] ドラえもんは目の前に大好きなどら焼き四個をのび太に出され、ほんのささやかなお礼で、遠慮なく食べてくれと言われていた。

 

 不吉な予感がしたけれども、のび太から「こまっているときやくるしんでいるとき、かならずたすけてくれる」と言われたので、ドラえもんも「たのまれたらぜったいいやといえないのが、ぼくのしょうぶんだなあ」と大見得を切っている。

 

 ドラえもんが「パク パク」とどら焼きを食べていると、のび太は「二、三日分のたまっている宿題」を頼むと言って差し出し、そして、「じゃまにならないよう、ほかのへやでねるからね」と言って、枕を持って部屋を出ている。

 

  のび太が安らかに寝ている間に、となりの部屋から、「たのむよ、おねがいしますよ。こら、にげるか! やろう、ぶっころすぞ! このもんだいどうやるの。ばか! まぬけ! こうやるんだぞ。ちがうってば! ついにできた。ほんのおかえしだい」などといった言葉が一晩中、聞こえてきた。

 

 「ドタ ドタ ギャ シ~ン ドタ ドタ ドタ バタ バタ」という物音が聞こえ、あるいは、のび太の寝ている布団の上を走りまわる音も途切れることなく続いていた。

 

 のび太がさわやかに目覚めると、ドラえもんは次の部屋で満身創痍になっていた。強盗でも入ったのと尋ねると、ドラえもんは「自分でやったんだ。宿題やっといた。ぼくねる」と言って、「バタン」と倒れ、「グウ」と眠り出してしまった。

 

 宿題も全部すんでおり、なぜこんな大けがをしたかを確認するため、のび太はタイムマシンに乗って、昨晩に何が起こったのかを、この目で実際に確かめることにした。 

 

 ドラえもんは横になって、「ブツブツ」言いながら、のび太の宿題をやっていた。ひとりでできそうもないので、ドラえもんはタイムマシンで、二、四、六、八時間後のぼくを連れてきて手伝わせ、五人のぼくで宿題をやるというアイディアに取り掛かった。

 

 ドラえもんが「眠いよ」と言っている二、四時間後のドラえもんを連れてくると、二人とも傷だらけになっていた。六時間後のドラえもんを連れてきたが、逃げるので、みんなで「ドタ バタ」追いかけてつかまえている。

 

 八時間後のドラえもんとは、「こんちくしょう」とけんかになり、傷だらけの八時間後のドラえもんは手に凶器を持って、「やろう、ぶっ殺してやる」とタイムマシンで追いかけてきた。現在のドラえもんは「きゃあ、自分ごろし」と叫んで、逃げ回っている。

 

「やめろよ。自分どうしのあらそいは、みにくいものだ」という六時間後のドラえもんの意見により、何とか争いも一段落したので、宿題を五人で始めることになった。問題を解くにあたって、いろんな意見がでたが、何とか宿題を終えることができた。

 

宿題を頼んだドラえもんが感謝しながら、元の時間に帰って休んでくださいと告げると、「ほんのおかえしだい」といわれながら、「ポカ ポカ」とみんなから殴られた。満身創痍になったが、宿題ができたのでゆっくり「グウ」と眠りだした。

 

 のび太が押し入れで見ていると、鼻チョウチンを出して寝ていた傷だらけのドラえもんを、二時間前に頼まれたドラえもんが「おきろ」とやってきた。「宿題? もう、やっちまったはずだぞ」と告げると、「こっちの時間では、これからやるんだ」と強引に連れて行かれた。

 

 そして、「やっとおわった。さあ、ゆっくりねよう」と言いながら寝ていると、四時間前に頼まれたドラえもんがやって来て、「四時間後のぼくもおきろ」とこれまた強引に連れて行かれてしまった。

 

 そして、「こんどこそおわったぞ。もうだめだ。ねむくて死にそうだ」と「フラ フラ」しながら帰ってきた。よく考えると、まだ、六時間後と八時間後が残っていたので、押し入れにいたのび太にかくまってもらった。

 

 六時間前に頼まれたドラえもんがやって来て探したが、六時間後がいないので、「弱ったな。宿題ができない」というので、のび太は隠れていたドラえもんを差し出すことにした。のび太はドラえもんに申し訳ないと思い、また、ドラ焼きをやることを心に誓った。

 

 タイムマシンで怒りまくって、帰ってきたドラえもんは歯をむき出しにして、のび太を「ドタ ドタ ドタ」と追いかけまわした。すると、八時間前に頼んだドラえもんがやって来て、「やめろ」と制止しながら、一緒に宿題をやるんだといって連れて行ってくれた。

 

 帰って来て、終わった宿題を出された時、のび太は心から、ほんとに悪かったとドラえもんにわびた。そして、「ほんの、ぼくの気もちだってのに」と言いながら、五個のドラ焼きを差し出すと、あのドラえもんが「いやだあ。ドラやきこわい」と逃げ回るばかりであった。

[S0132A0507037102]