三輪飛行機[★★]

【道具解説】 ひみつ道具の『三輪飛行機』は未来の遊園地に置いてあり、ペダルをこぐだけで自由に大空を飛び回ることができる。のび太航空は一キロ十円、十分十円で空の旅を歌い文句に、一機の三輪飛行機と、コントロ-ルタワー、カウンター、滑走路、空港ロビーを土管のある広場に設置した小さな航空会社である。

 

【使用目的】 友だちが将来の夢を話したので、のび太もジャンボジェットのパイロットになると主張し、今からその技術を勉強したいと言い出した。そのため、ドラえもんは「三輪飛行機」を出している。

 

【使用結果】 ドカンのある広場に、「のび太航空」を開業した。すると、ジャイアンやスネ夫やしずちゃんがやってきて、「か~わいい! いつまでたっても、幼稚園みたいなやつだ。飛行機ごっこね」と言われた挙げ句、「ぼうやたち、なかよくあちょぶんでちゅよ」と野次られ、笑って帰って行ってしまった。

 

  ドラえもんやのび太ははずかしい思いをしたが、のび太が「どんな事業でも、始めからうまくいくわけがない。この飛行機のすばらしさがわかれば、お客がつめかけてくるよ」と懸命にドラえもんを説得した。

 

 しずちゃんの飼っていたカナリヤが逃げたというので、のび太がパイロットになり、広場のコントロールタワーのドラえもんから、離陸の許可をもらって、カナリヤの飛んでいった裏山を目指した。カナリヤのピーコちゃんが見つかったので、懸命にこぎ、しずちゃんにアミをかまえてもらって、限界までスピードアップすると、かろうじてアミでカナリヤを捕まえることができた。

 

  しずちゃんとのび太が「すばらしい飛行機ね。気にいってもらえてうれしいよ」と会話しながら、スネ夫の見ている窓の近くを通って、ぶじ滑走路に着陸している。

 

 スネ夫は気になって何度も何度も偵察にやってきた。そして、空の旅のベテランだから、「きみらの飛行機にのってあげて、いろいろアドバイスしてあげてもいいなあ…」と言いながら乗り込んできて、町内遊覧を頼んでいる。

 

  座席がきゅうくつだからファーストクラスを作れとか、眼下の小さな家やりっぱなお屋敷はだれの家かと尋ねたりしている。ジャイアンが家の屋上にいたので声を掛けると、かあちゃんに追い掛けられているから、大きな声を出すなと頼んでいる。

 

 スネ夫はスチュワーデスがいないとか、機内食のサービスがないとか言うので、のび太はコントロールタワーに何とかならないかとお願いしている。

 

  ドラえもんはしずちゃんに頼んで、タケコプターを付けてもらって、ジュースやサンドイッチのサービスをしてもらったり、イヤホンのリクエストがあると運んでもらったり、映画のリクエストがあると、駅前の名画座の割引券を配布してもらっている。

 

 スネ夫は「飛行機はダサイが、サービスでおぎなって、まあまあ合格点」と好き勝手なことを言って帰っていった。頭にきたのび太は「たかが三十円で大きな顔すんな!」と怒鳴っていた。

 

  そこへ、ジャイアンが左手にふろしきを持って、急いでやってきた。のび太が「なんのかんのいっても、けっきょくのりたくなったんだね」というと、きげんの悪いジャイアンは「さっさとのせろ!!」と怒鳴りつけた。

 

 のび太が「キコキコキコ」とこぎながら、「ジャイアンは、おもいいなあ。料金を倍もらわなくちゃあわないよ」と考えていると、「う~んと遠くへ。そうだ、ホンコンへやれ!!」と命令してきた。

 

 「じょうだんじゃない、これは国内線だよ」と応対すると、これが目に入らぬかと花火セットを見せながら、「いうとおりとばないと、火をつけておまえの座席へほうりこむぞ!!」とすごい形相で脅してきた。

 

 のび太からコントロールタワーのドラえもんにわが機はハイジャックされたとの一報が入ってきた。「それで、犯人の要求は!?」、「かちゃんからにげるため、外国へいくというんだよ」、「機長!! おちつけ。 犯人をしげきするな。時間をかけて交渉しろ。その間に、こちらも対策を考える」とのやりとりが続いた。

 

  機上では、「ホンコンへいく道、わかんないんだけど」、「世界地図をもってこさせろ。ついでに、弁当とこづかいを百円だ。一時間以内だぞ。一秒でもすぎたら、機体を爆破する!!」と左手に三本の花火を持ち、コントロールタワーにいたドラえもんやしずちゃんにも、直接聞こえるようにがなり立てていた。

 

 ハイジャックであわてているドラえもんを見て、スネ夫は「きみたちの手にはおえないね。当局に連絡する」と言いながら駆け出した。機上では、「いやに手間どるな。時間かせぎやっているんじゃないだろうな」とイライラしているかたわらで、のび太は「あの…、ほんとにトイレに…」と懸命にこらえていた。

 

 スネ夫がジャイアンのかあちゃんを連れてきたので、コントロールタワーで、「タケシやめな!! つまんないことして、人さまにめいわくかけたらしょうちしないよ」とすごい迫力で説得してもらった。

 

  ジャイアンは「ウヌーッ、よくもかあちゃんを!! ようしみてろ!!」と大粒の涙を流しながら、機上から「バラバラ」と地上めがけて花火を投げつけた。のび太は我慢の限界を超え、顔を真っ赤にして、やおら機上の上で立ち上がり、ジャイアンの顔をめがけて「ジョバ」とおしっこをした。「ワー、やめろ!! 機長!! なにをするんだ!!」と絶叫しながら、うら山に墜落してしまった。

 

のび太は頭をかきながら、みんなの前で「パイロットやめた」、ドラえもんは「そのほうがいいと思うよ、世の中のためにも」と納得していた。そのころ、ジャイアンはかあちゃんに首根っこをつかまれ、ションボリした顔で、家路に向かっていた。

[S10670A28122068209027]