うつつまくら[★★★]

[初出誌] 『ウツツまくら』、「小学三年生」19709月号、15頁、109コマ

[単行本]  『うつつまくら』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第5巻」1974121日 初版第1刷発行、14頁、103コマ

[大全集] 『うつつまくら』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 12009729日 初版第1刷発行、14頁、103コマ

 

[梗概]  長い夏休みも終わり、きょうから秋の新学期である。のび太はいつもと違って、「だれにも起こされずに、目がさめたぞ。すがすがしい気分だなあ」と言いながら、学校に行くにはまだ時間がたっぷりあったので、いそいそとめずらしく予習などもしていた。夏休みの宿題はもちろん全部終わっていた。

 

 ドラえもんは「こんなに調子よく、いくはずがない。のび太くんらしくないぞ。ひょっとすると、これはゆめだよ」と思った。案の定、やはり夢で、例年のように夏休みの宿題はほとんど終わっていなかった。

 

  夢から目覚めるとのび太は夢の中で「せっかく調子よくいってたのに。…よけいなことをいうからだ」と言いながら、ドラえもんを叱責している。そこで、ドラえもんはひみつ道具『うつつまくら』を出し、この枕で寝ると夢が本当に実現するとのび太に伝えている。

 

  夢の中における学校のシーンでは、先生はいつものように「また、のび太くんはわすれたのかね」と早とちりし、のび太が「いえ、できています」と強く訴えても、聞く耳を持ちません。「わすれた人は、立たせる約束でしたね」と言われ、のび太が「だからやってあります」と主張しても、馬耳東風といった様子。

 

 最後にだめ押しのような「あっそう。じゃあ、いつものように立っていなさい」という始末である。しばらくして突然、気がついた先生は「しつれい、きみがやってくるわけないと思いこんでいたんだ」とのび太に平身低頭して謝っている。

 

  しかしながら、夢の中で先生が「でも、まちがっていたら、なんにもなりませんよ」と言いながら、宿題をチェックすると、すべてがとてもよくできていた。

 

 すると先生が「きみ、おかしくなったんじゃないだろうね」とのび太の頭に手をのせながら言うと、周りのクラスメートたちも「信じられないわ。だれかにやってもらったんだ」と先生に同調するムードになった。のび太は授業中であったけれども、腹を立て、「ムガー」と大きな声を出しながら、顔を真っ赤にして、家に帰ってしった。

 

 夢から覚めたのび太はドラえもんに対して、「じつにふゆかいだ! 前のほうがいい」といって抗議している。終わっていない夏休みの宿題に対して、のび太が「やっぱり、やらなきゃだめだろうな」と言いながら机に座ると、ドラえもんは「あまり完全にやると、また、うたがわれるよ」とやさしくアドバイスするのであった。

 

  夏休みの宿題を再度始めると、チンプンカンプンで、やっぱりさっきのほうがよかったと言い出した。ドラえもんから夢を都合よく変えることができると聞いたので、頭がよくて、みんなに尊敬される世界に住めるように、「うつつまくら」を「ギギ…」と調整してもらって、眠りについた。

 

 目覚めて、教室に行くと、正座した先生から、「いつもながら、のび太さまのよくおできになるのには、ただただ、感心するばかりでございます」と言われ、校長室へ行くと、校長先生から「ぜひぜひ、先生たちの先生に…」と頼まれてしまった。

 

 のび太が「学校なんて、ばからしいからやめる」と言うと、大賛成され、校長先生は「ほたるのひかり、まどのゆき…」と歌って、学校を送り出してくれた。

 

 広場に行くと、スネ夫から「のび太さま」と呼び止められ、ジャイアンから「野球に入っていただけませんか」と勧誘された。相手の投手の投げたボールを「ゴキン」と打つと、大ホームランになり、通算で千本目の人工衛星になった。ヨメイリジャイアンツのスカウトからの一億円の契約金も、興味ありませんと拒絶している。

 

 家に帰ると、記者が殺到しているが、本日の記者会見を中止している。パパから、総理大臣が会いたいと言われたが、今日は忙しいからまたにしてほしいと断っている。研究中の火星ロケットを完成するために出かけると、××国の二人のスパイに、秘密兵器を作ってほしいと拳銃で脅され、断るなら、死んでもらうと追いかけられた。

 

 のび太は「うつつまくら」で、「グウ…」と寝て、夢にしようとした。眠れないので、スパイに子守歌を歌ってほしいと頼んだけれども、拳銃で頭を「ゴチン」と殴られ、「ドサ」と枕の上に倒れてしまった。寝ていると、ドラえもんから「起きろ。起きろ」と言われた。

 

 目覚めると、のび太は「あぶないところだった。あっ、でも、この世界では、宿題がどうなっているかな」という気になった。夏休みの宿題が全くやっていないので、ドラえもんに「うつつまくら」を再度急いで催促した。

 

 すると、ドラえもんは「そんなまくらしらないよ。それに、夏休みは、まだ半分以上のこっているよ」と言われてしまった。冷や汗をたっぷりかいたのび太には、いったいどれがゆめであったか、わからない状態になっていた。

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