コンピューターペンシル[★★]

【道具解説】 ひみつ道具である『コンピューターペンシル』を使うと、どんな問題でもアッという間に、「スラ スラ スイ スイ」と解くことができる。

 

【使用目的】 のび太が宿題をしていた時、ドラえもんがかたわらでしずちゃんの家で学園祭の打ち合わせがあるなど、「ガミ ガミ」いうので、のび太は「どうせ、ぼくは頭が悪いからね」と居直り出した。

 

  そして、仰向けに寝っ転がって、「ドラえもんだけ、行けばいいじゃないか」と不貞腐れた態度を取った。根負けしたドラえもんは「コンピューターペンシル」を取り出している。

 

【使用結果】 ドラえもんから「コンピューターペンシル」を「かえせよ」と言われたが、のび太は「もうちょっと貸せよ。おもしろいから」と言って外に出かけた。

 

  ジャイアンの家で、「あれ、まだいたの。行こうよ、学園祭の打ち合わせに」と誘いかけると、ジャイアンはいつもの元気がなく、「近ごろ宿題は、むずかしくて量が多いだろ。なかなかかたづかなくて」とこぼしていた。

 

  のび太はその宿題を「スラスラスイ」と解いて、ジャイアンから「おまえ、いつからそんなに頭がよくなった?」と感心された。スネ夫の宿題を同じように解決して、ジャイアンから「おかしい!!」と疑われ、スネ夫からも「あのバカがきゅうに。なんかあるんだよ」と邪推された。

 

 しずちゃんの家では、パパがねじり鉢巻きをして、机の上の大量の仕事に悪戦苦闘しているところであった。その光景を見て、のび太は「サラサラサラノ チョイチョイ」とあっという間に、すべての仕事を片付けてしまった。

 

  しずちゃんから「いったいどうしたの」、ジャイアンからは「なにかいいくすりでもあったのか」、スネ夫からは「そんなら、おれたちにもよこせ」と問い詰められる始末。


 のび太は「なにをいうんだ、しつれいな! これすべて、日ごろの努力が実をむすんだのです。しょくんがねているまも、ぼくはせっせと勉強にはげんだからなあ」と言いたい放題。

 

  さらにエスカレートして、「しょくんも、あきらめることないよ。まじめにやれば、かならずぼくのようになれるよ」とのたまう次第。傍らで、ドラえもんは目を閉じて、名僧のような表情でただじっと聞いているばかりであった。 

 

 帰宅途中、のび太は「ああいい気持ち」とご機嫌、ドラえもんが「もういいだろ、かえせよ」と催促しても、「まだ借りとくよ。あしたテストがあるんだ」との返事であった。ド

 

  ラえもんは思わず激昂して、「ずるい!! それじゃカンニングと同じだ!」と厳しく糾弾したが、のび太は「いいじゃない。いっぺんぐらい、百点とってみたいよ」と笑いながら走り去ってしまった。


 その会話を家の陰で聞いていたジャイアンは「なるほど、なるほど。あのエンピツのおかげか。いいなあ。おれも欲しいなあ。欲しいものは手に入れるのがおれのやりかたさ」とニヒルな表情を浮かべながら家路に向かった。


 のび太の家では、パパが「ようし、冬休みには世界一周旅行につれていこう。それから、のび太のほしがってたものは、なんでも買ってやろう。なんでも、かんでも」と大盤振る舞い。

 

  心配になったママが「あなた!! へんなこと約束しちゃ困ります」と釘を刺したが、パパから「ハハハ、通信簿がオール五だったらという話さ」と聞かされ、ママも「ホッ」と安堵の表情。


 のび太は舌を出しウインクしながら、「ところがあるんだな、このエンピツさえあれば。ドラえもん、きみもつれてってやるからね」と誘いかけると、ドラえもんは「フン」と答えるのみだった。

 

  のび太は冷や汗を垂らしながら、「あの目。けいべつしきったような目つき。きたないものでも見るような」ドラえもんの表情に対しても、布団の中では、「かまうもんか!! あしたはぜったいに使ってやるぞ!!」と決意しながら眠りについたのであった。


  先生から、「答案用紙は、行きわたったかね。でははじめ!」の合図でテストがスタートした。のび太の心臓の鼓動は「ドキ ドキ ドキ」と高まり、震える手で「コンピューターペンシル」を握りしめると、脳裏には昨晩の軽蔑しきったドラえもんの表情が浮かんできた。

 

  のび太は「やめた! ふつうのエンピツでやろう」と決心し、「あれじゃあ、0点かもしれないな」とうなだれながら帰宅した。


  家に帰って、のび太は正直に「かえすよ、使わなかった」と告げると、ドラえもんは「えらい!」と喜色を満面に浮かべて歓迎してくれた。

 

  コンピューターペンシルを見たドラえもんから、「あれ、これちがうよ。ふつうのエンピツに手を加えただけのにせものだぞ」と指摘されたが、のび太は「へんだなあ。どこで入れかわったんだろう?」とキツネにつままれたようなものであった。


  後日、テストの返却で、ジャイアンだけひとり満点を取ることができた。のび太はジャイアンにコンピューターペンシルを返すように要求したが、「なんのことだ。知らないな」ととぼけるばかりであった。

 

  ジャイアンの家では、父ちゃんが泣きながら、「いつも落第点のおまえが、きゅうに百点取れるわけがないっ。できの悪いのはしかたがないとして、不正だけはするなと教えてきたはずだぞ!」と厳しく叱責した。

 

  翌日、顔中傷やコブだらけのジャイアンがドラえもんとのび太の前で、「百点なんかこりごりだい!!」と言いながら、コンピューターペンシルを道路にたたきつけていた。
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