悪魔のパスポート[★★]

【道具解説】 ひみつ道具である『悪魔のパスポート』とは、それを見せれば、どんな悪いことをしてもいいというパスポートである。

 

【使用目的】 大人気の『ベルデカ』を買うため、前借をし、三日後に返しとけばいいと思って、タンスの財布からおカネを借りようとしているところをママに見つかってしまった。いつもよりこっぴどく叱られたので、のび太は世界一の悪者になるぞと宣言して、ドラえもんの『四次元ポケット』から偶然「悪魔のパスポート」を取り出すことに成功している。

 

【使用結果】 のび太のほしかったものであり、ふたりは「返せったら返せっ。かたいこというなよ。ひとのものかってにもっていったら、どろぼうだぞ」とつかみあいのけんかになった。のび太が手にした「悪魔のパスポート」を「サッ」とドラえもんに見せると、「ビカ ビカ ビカ ビカッ」と閃光が走り、意識もうろうとしたドラえもんは「いいんだ、どろぼうしても」と言い放っている。

 

味を占めたのび太はタンスの財布を「ゴト ゴト」と探していると、ママから「なにやってんのよ」と怒鳴られた。そこで、「サッ」とパスポートを見せると、ママから「いいわよ、さいふごともってっても」といわれたので、さし当たり千円を持っていくことにした。

 

 のび太はニヒルな笑みを浮かべ、「すごいや、どんなことをやってもいいんだから。もうめちゃくちゃやっちゃうぞ」と考え、銀行のお金を盗んだり、気にくわないやつを殺したり、最後には、世界征服を企てることだってできるんだと、どんどんエスカレートした。でもはじめのうちは、身の回りの小さなことからと考え、道路に置いてあったゴミ箱を足で「ドン」と蹴っ飛ばして、パスポートを見せると、近所の奥さんから、文句なんか全くないと言われた。

 

 のび太はスネ夫の勉強部屋に土足で上がって近道させともらったり、ジャイアンのお尻を思いっきり足で蹴っ飛ばしたり、頭を「ボカ ボカ」なぐったりしている。先生には「ぼく今度のテストからカンニングやります」と告げると、「おお、しっかりやれ」と笑顔で激励されている。しずちゃんのスカートをめくりながら、こんなことしていいのかしらと頼むと、しずちゃんも「いやあん、どうぞ」と恥ずかしそうに答えている。

 

のび太がほしかった『ペルデカ』もパスポートを持っていたので、店主に見せながら、「これ、ぬすむ」と言いながら本を差し出すと、「はいはい。まいどありい」と快く言われて、手にすることができた。大喜びした、のび太は「どうどうとぬすんだぞ。ぼくはアルセーヌルパンだ、怪人二十面相だ」と叫んでいる。

 

 家に帰って、「ペルデカ」を読み出すと、いつも赤字をやりくりしているママがかわいそうになり、みんなにした数々のいたずらが次から次へと頭を横切って、マンガを読んでもちっとも頭に入らなかった。のび太は本屋さんへ行ってお金を払い、蹴飛ばしたゴミ箱の掃除を始めだした。ドラえもんにパスポートを返しながら、「こんどこづかいをもらったらママの千円もかえすよ。それでもとどおり」と考えていたら、突然、「本のおつりもらうのわすれた」と大騒ぎしだした。その光景を見て、ドラえもんは「きみが悪者になろうなんて思うのがむりなんだよ」と、やさしく慰めている。

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