月の光と虫の声[★]
[初出誌] 『虫の音がくかい』、「小学一年生」1973年9月号、7頁、33コマ
[単行本] 『月の光と虫の声』、「てんとう虫コミックス ドラえもん短編第4巻」1974年11月1日 初版第1刷発行、7頁、39コマ
[大全集] 『月の光と虫の声』、「藤子・F・不二雄大全集 6」2010年3月30日 初版第1刷発行、7頁、39コマ
[梗概] スネ夫の家で秋の虫の声を聞く会が開かれた。のび太はうっとりしながら、鈴虫や松虫の声に聞き惚れていた。会の終わりに、スネ夫から「デパートで買ってきたんだぞ。高かったんだ」と言われ、声の聞き賃をひとり五円ずつ徴収された。虫の声を聞くのに、お金がいるのと抗議をしたが、後の祭りであった。ドラえもんとのび太は「今夜、うちの庭においで。虫の音楽会を楽しませてあげる」と同席していたしずちゃん、ジャイアン、スネ夫に告げた。
家に帰って、パパやママに鈴虫や松虫を買って欲しいと頼んだが、すぐ死んじゃうからだめと断られてしまった。そこで、「タイムマシン」に乗って、二十年前の空き地に行くと、辺り一面秋の虫の合唱といった風情である。「コロコロ、リーリー、チンチロリン、ガチャガチャ」とさまざまな秋の虫が「ひろびろとした草原で、月の光をあびて、楽しそうにうたって」いた。ドラえもんものび太も「すみにくい世界へつれていっちゃかわいそうだ」と思い、捕獲して帰るのは止めようという結論に達した。
スネ夫たちとの約束もあり、「タイムマシン」でわが家に戻ると早速、ドラえもんはある花のつゆをかけると、どんな虫でもきれいな声で鳴くひみつ道具を取り出した。そして、家の周りにいる虫をのび太と一緒に、できるだけ多くかき集めに出掛けた。その晩、こおろぎ、鈴虫、松虫などがきれいな声で鳴く、楽しい楽しい虫の音楽会を開くことができた。
スネ夫には、ドラえもんたちがこんなにたくさんの秋の虫をどこで集めたかよくわからなかった。スネ夫は家から強力な電気掃除機を持ち出して、野比家の庭でうるさいくらい楽しげに歌っているすべての虫をこっそり吸い取った。
スネ夫は家に帰って静かに虫の声を聞こうと思って、電気掃除機で吸い取った虫を庭に放した。すると、スネ夫のママから「なんで、ごきぶりなんかとってくるざます」と叱られてしまった。「チンチロコロリン、スイッチョン」といった、きれいな声で鳴いている秋虫の正体は花のつゆをかけられた多数のゴキブリであった。
[S0606・A0406・017309]