書誌とは(その1)
藤子・F・不二夫大全集『ドラえもん』『大長編ドラえもん』の巻末に、初出掲載リストが登場している。このリストの備考欄には、●印が付与されている作品が多く認められる。下欄で、この●印は「単行本刊行時に加筆修正あり」と明記されている。
ドラQマンガで国民的なマンガ家になった藤子・F・不二雄は彼のマンガ人生の最盛期三十代後半にドラえもんマンガに出会い、四分の一世紀の間に1346 編という大量の作品を生み出した。爆発的な人気に支えられてコミックはもちろん、テレビ、映画にも進出し、さらに有能なアシスタントにバックアップされ、次から次へとすばらしい魅力ある作品を日本のみならず、東南アジアの人々にも提供し続けた。
締め切りとの格闘により、必ずしも作者の十二分に納得いく形での作品公表とならなかったため、単行本採録に際しては、例えば、文学作品には認められないような大幅な改訂が施されることとなった。なお、この章では作品を初出誌、単行本、大全集に三分類し、書誌学の数ある課題の中で、加筆修正、つまり改訂に焦点を絞って分析している。