亡父の一番の罪はこれである。

 

ワカメとアオノリを野放しにしたこと

 

亡父は確かに海外部門や自分の売買、一括仕入れのシステムづくりなど、多岐にわたる仕事をしていたため、常に会社にいるわけではなかった。ワカメとアオノリに実質的に製造部門を任せているかたちとなっていたわけだが、この二人の仕事について内容を確認したり、指導をすることをあまりしていなかったようだ。指示はしてもそれが実行されているか、確認することもなかった。

 

ワカメを放置

ワカメの能力の限界を知りながら、任せてしまった。亡父の監視が足りなかった。

亡父は生前ワカメについてクロネコたちに語っていた。

 

「ワカメは現場で体を動かして作業することは得意だが、頭が悪い。数字がまるで理解できない。会社や商売のしくみが理解できない。経営はムリ。仕事も自分の指示がないと動けない。謙虚さが足りない。自分が押さえている間はいいが、ワカメひとりでは何もできない」

 

ここまでわかっているなら、ワカメを製造部門の社長にして、ヘタに権力なんか持たせず、ずっと現場のオッサンでいさせてほしかった。トップに立たせてはいけない人間がトップに立ったら『カンチガイ』と『やりたいホーダイ』しかない。

 

 

アオノリを会社に残した

金融機関のお偉いさんまで務めたのにとっとと退職させられ、人材紹介会社でもトライアルで断られ、なかなか仕事が見つからず、残っていたアオノリ。そして亡父もアオノリのトライアル中に、アオノリには務まらないという結論を出し、人材紹介会社の了承も得ていた。しかしそこでアオノリの契約解除に至らず、どういうわけかアオノリが会社に残ることとなった。

 

「アオノリは、口は達者だが指示されたことしかやらないか、指示されたことの7割やれればいい方、仕事を工夫したり、先を読むことができない。金融機関との交渉役や橋渡しになればと思って会社においたが、金融機関の味方で会社側が有利になるように動くことはない」

 

トライアルで断られる、残っているということは、アオノリにそれなりの原因がある。残り物に手を出してはいけない、そして残り物に福はない。そして亡父もアオノリにはムリという判断をしたときに、情に流されずに勇気をもって断っておいてほしかった。