しばらく言えなかった。

夫が死んだことを。

でも、言わなきゃと、母や大阪に居てる子供たちに連絡した。

一方的に。ラインで。返事は無理と書いて。

 

起きてるのか寝てるのか、自分でもわからない。
ただ主人のパジャマを抱え込んでベッドに潜り込んでた。

 

「…猫…黒い猫?」

私を呼ぶ声がしてふと目を覚ますと暗い部屋の中、黒い影がベッドのすぐわきにいて私を呼んでた。

思わず悲鳴を上げたわ。

主人を連れて行った死神に見えたから。
 
母だった。
心臓に悪いわ…せめて部屋の電気を付けてくれ。
そう思った。

 

母もともと、ゴソゴソ片付けて動き回る人。

イラン事しぃの人だったのを失念していた。
 
私が動けず、部屋から出れない間にしでかしてくれた。
 
主人が司法解剖を終えて戻ってくるから…と、片付けまわったのだ。

 

主人の定位置であるテレビの前のソファー。その前にある主人がゴチャゴチャと置いていた色々なもの。

ソファーにかかっていたカバー。主人の匂いのするものばかりがそこにある。

 

それを…片付けやがった。

 

水を飲みにリビングに降りた時・・・気が付いた。
 
綺麗に片付けられたソファーの前、ソファーカバーすらない。
どこ??なんで???なんでこんなことになってる???
 
主人の居た気配がすべて消されていた。
発狂した。

主人本人だけじゃなく、居てたその気配すら私から奪うか???

主人が居たことを無かったことにするつもりか???
なんでそんな酷いことができる??

なんでそんな勝手なことをする? 
掃除したと、洗濯したとほざいた母を蹴り飛ばし殴り、殺そうと思った。
 
義母と娘に止められた。

母を殺したかった。