このblogの存在を今更思い出したので書いてみます.

 

運良く最近(?)話題のFree the Tone のOVERDRIVELANDを手に入れることができました! こんなにあれこれいじったり, 情報を調べたりしたペダルは久しぶりでとても気に入っています.

 

20240218のペダルボード. 

 

 

現状ですとなかなか楽器屋さんで試奏できない機種 & 調べてみた限り, プロ or セミプロの方の機材紹介動画くらいしかないようなので, 一人の週末素人ギタリスト目線から文章に残しておくとよいかな, と思い立ちました.

 

手に入れてから自宅では Funk OjisanのAPARTMENT AMP(0.1 W tube amp)に繋げています. その他何度かスタジオに行ってRoland JC-120, Fender Twin Reverb, Marshall JCM900で試しました. また同じくDumble系ペダルであるEthos overdrive, Peace Hill fx ODS Tube Preampを並べて比較してOVERDRIVELANDの音色の特徴をあれこれ調べたりしています. (職業柄こういう比較が好きなんです.) iPhoneでの録音で恐縮ですが, ご興味のある方は注釈※1–5でご覧ください.

 

 

Dumble系ペダル3種の比較の様子.

 

NormalとDriveの2 channel構成です. それぞれのつまみ & スイッチの役割については公式ページに解説がありますので, そちらをご覧ください.

 

OVERDRIVELANDをあれこれ試してきて感じたことを以下に書いてみます. 

 

もちろん本物のDumble ampを弾いたことはないのですけれども, 音源(Larry Carltonさんの音色が好きです.)だとか, 機材レビュー系動画などからいわゆる「Dumbleらしい音」を想像しています. いつか本物を弾いてみたいものですね.

 

1. OVERDRIVELANDはどんなアンプに繋いでも「Dumbleらしい音」を作り出してくれるペダルではない.

 

「Dumbleらしい音」の一つの重要な要素として「クリーンなようで歪んでいる, 歪んでいるようでクリーン」というものがあると個人的には思います. このペダルではこれは再現できません. Free the Tone代表の林さんのお話から察するに, OVERDRIVELANDではこの要素をそもそも気にしていない, もしくはエフェクトペダルに求めるものではない, と開発目標にのせていない, と感じました. 「クリーンなようで歪んでいる, 歪んでいるようでクリーン」を実現するには高音域, 超高音域が充実していることが必要だと思いますが, OVERDRIVELANDはこの帯域には干渉しない印象です. つまりいわゆる「真空管っぽさ(※6)」を付加してくれることを期待(~JC-120対策など)してはいけないと思われます.

 

作れる音の広さ, という観点ではとても狭いと思います. これはいわゆるEQに相当するつまみが配置されていないことからも明らかで, そもそもの設計思想だと思います. GAIN 0, EQ ON modeのTONE max (or GLASS mode), HI CUT 0 (カットなし), でもとの高音域と低音域に近いです. 高音域を足したり, 低音域を削る音作りはできません. GAINやPUSHを上げると歪み感に応じた高音域, 超高音域, 後述のDumbleらしい押し出し感を表現する低音域, 中音域が充実してきます. 

 

2. OVERDRIVELANDは「Dumbleらしい音」の土台を創る.

 

このペダルをONにしてGAINつまみをあげると絶妙な低音域, 中低音域と歪み感が付加されます. またDrive channelではGAINに加えてPUSHとDRIVE controlで歪み音色の質感を変化させることができます. この土台の音色デザインが秀逸だと思います. ここが Free the Tone代表の林さんが強調されている「押し出し感」なのかな, と思いました.  OVERDRIVELANDをONにするとamp側のTreble, Presenceつまみをあげたくなると思います. これにより十分に高音域, 超高音域が出ながら, 耳に痛くない音色を創ることができます. 

 

OVERDRIVELANDは低音域, 中低音域の土台を作り, 高音域, 超高音域は他の機材の色を出す..., つまり他の機材と組み合わせて音作りすることを念頭において設計されているのではないかな...?と感じています.

 

こういう風に考え始めると, 他の機材と組み合わせた時の音色をあれこれ調べたくなり, 無限に楽しいです. まさに「OVERDRIVELAND」だなぁ...と名付けの巧妙さも感じています. 個人的には真空管アンプと組み合わせではOVERDRIVELAND OFFでは耳が痛いくらいまで高音域, 超高音域を上げたところでONにするとよいと思いました. 

 

もしくは音がハジける印象のある高音域, 超高音域が充実しているエフェクタと組み合わせると相性がよいと思いました. 手持ちの機材ではY.O.S.ギター工房のSmoggy overdriveのtoneを15時くらいまで上げたときとの組み合わせが気に入っています. GLASS modeで他の機材をONにしたときに気になる耳障りな高域が出てきた時はEQ ONやHI CUTつまみで調整することができます. 

 

3. OVERDRIVELAND単体で創りだす倍音構成は複雑.

 

OVERDRIVELANDのDrive channelでは, DRV VOL, GAIN, PUSH, DRIVEの4つのつまみを操作することができます. DRIVEつまみをあげると超高音域の成分が強調されて付加されます. この倍音構成はどうやら複雑で, DRIVEつまみ最大ではファズを踏んだと錯覚するほど暴れる印象です. この特性は同じくDumble系ペダルである手持ちのEthos overdriveやPeace Hill fxのODS Tube Preampにはないものです(※7). この両者は前中期(1970–1980年代)のDumble ampを目標に据えており, OVERDRIVELANDはEL34管が主に使われるようになった後期Dumbleを目標にしているらしいのでその狙いの違いを反映しているのかな?と思いました. 

 

4. 電圧可変は面白い.

 

OVERDRIVELANDは駆動電圧を9–19Vで可変です(ODL-CSの場合. 通常版は9 V or 14.5 V). おそらく波形をどのレベルで切り取るか, の閾値がを変えているということかと思いますけれども, 歪み感, 飽和感が聴感上では結構変わります. 上述の複数種類のつまみによる変化と他の機材との組み合わせと合わせるとまさに沼を感じます...

 

購入して数ヶ月の現在の所ですと, OVERDRIVELANDを音作りの核としてプリアンプ的に使う場合は電圧上げ目(>15V), 主機材(真空管アンプ, お気に入りのプリアンプ)が別にあり, OVERDRIVELANDをブースタとして使う場合は電圧下げ目(9 V)にすると中低音域のほどよい飽和感が得られてよいと思っています. 

 

5. 2 channelのブースタとして使うとよいのかも?

 

OVERDRIVELANDの特性を活かすのでしたらやはりGAINつまみは12時以上まであげるのがいいのかな, と思います. こうすると中低音域が充実してきます. 高音が十分に出る機材(真空管アンプ, もしくはプリアンプ)を主に使っている時に音を太くするクリーンブースタ & DRIVEを15時以上まで上げてファズっぽいブースタとするとOVERDRIVELANDの良さを最大限に活かせるのかなと現時点では思っています.

 

日常的にファズをブースタ的に使用されている方には特におすすめです. 反対に暴れるファズっぽさが不要な方はDRIVEを9時以下まで下げて, DRV VOL, GAIN, PUSHの3つだけで主機材へのブースト量を調整するのがよいと思います. 

 

6. OVERDRIVELANDのDrive channelで倍音が裏返る感じが美味しい.

 

倍音構成が複雑だからだと思いますけれども, DRIVEつまみ上げ目で音を伸ばしているときに音階が1オクターブ上に遷移するFeedbackがかかりやすいように思います. 自宅の0.1 W ampでもFeedbackがかかってめちゃくちゃ楽しいです. この感じが欲しいギタリストは多いのではないか...?と思います. 

 

 

長くなりましたが, OVERDRIVELANDを数ヶ月使ってきた所感を書いてみました. 自分にとっては繋いだだけでめちゃくちゃよい音!というわかりやすく使いやすいペダルではなかったのですが, 連動している各つまみの役割を探ってみたり, 他の機材との組み合わせで良い音を作り出せることに気がついたり, といじっていてめちゃくちゃ楽しいペダルです. 多分これがEthos overdriveやPeace Hill fx ODS Tube Preampと同等の大きさや万能さだったらこんなにのめり込んでいないんだろうな...という気もしています. OVERDRIVELANDの絞り込まれた機能とサイズは絶妙だと思います. 近頃はOVERDRIVELANDとXを組み合わせてみようかな~とか, その間にYを挟むとよいかも...!とか溢れる妄想を週末に実践するのが楽しみになりつつあったりします...沼ですね...

 

注釈

※1

Normal channel比較

 

 

 

 

※3

 

 

※4

Drive channel比較 (Booster&Delay使用)

 

 

※5

音色を切り替えつつLooperを使ってアドリブ演奏

 

 

 

※6

言語化が難しいところですが, 個人的には耳に痛くない整理された超高音域にもっとも「真空管っぽさ」を感じます. Ethos overdriveやPeace Hill fxのODS Tube Preampは, それ単体で良くも悪くも原音よりもハイ上がりの音作りが可能になっており, 真空管っぽさを感じる超高音域を調整できます. 

 

※7

Ethos overdriveとPeace Hill fxのODS Tube Preampは3 band EQが備わっており, 高音を足したり, 低音を引いたりする幅広い音作りが可能です. しかしこれらは前中期Dumbleを目標にしているらしく, 倍音構成が整理されて良くも悪くも綺麗に響く印象があります.