先月のはじめ頃、犬の散歩に行こうと玄関のドアを開けると、乾いた草のくずと泥の粒が玄関先のタイルの上に一面に落ちていました。
これはいったい何事？と思い上を見上げると、天井近くの壁にも泥の粒が付けられています。
どうやら燕が巣を作ろうとしていた様で、「燕の巣は縁起が良い」と聞いたことがあるけれど、この家に住んで20年になるのに初めての出来事だったので戸惑ってしまいました。
何せ玄関のドアを開けて真正面のど真ん中、いくら掃除しても掃除しても直ぐに燕が落とした泥粒だらけになるし、なにもいつもピカピカに掃除しているわけではないにしろ、これはちょっと困るなぁと思ってしまいました。
そのうちに雛が孵れば、今度はウンチだらけになってしまうだろうことは容易に想像ができ、あれこれ対策を考えた末に、巣の下にブラスチックの板をガムテープで張り付けてみました。
しばらくは燕も天井と板の間に潜り込み巣作りを続けていましたが、あんなに泥だらけだった玄関先からほとんど泥が無くなり、(これは上手いこといった)と勝手に喜んでいました。
ところが。
燕は巣作りを辞めてしまったのです。
泥だらけの玄関先に閉口していた癖に燕が居なくなるとなんだか寂しくて、試しに板を外してみました。
板の上にあった泥が落ちてきたのを見て、二羽の燕が何度も何度も小さな嘴で泥を運んでいた健気な姿を思い出しては、何とか戻ってはきてくれないかと待ち望んでいました。
玄関先が、泥だらけ糞だらけになるのが嫌だった癖に。
一週間が過ぎ、１０日が過ぎても燕は戻って来ませんでした。
そして半月が過ぎた頃、また燕が巣を作り出したのです。
前回は泥をほとんど下に落としてしまって、全く巣の形にはなっていなかったのに、今度は泥はほとんど落とさずに4～5日でほぼ作り上げてしまいました。
戻ってきた燕は前の燕とは違う燕だったのでしょうか。
そして、ようやく巣が出来上がったと思った頃、別の燕の番井がやって来て、4羽で争う姿を見ました。
この間争いで巣の一部が壊れ、少し修復をした後、また燕は何処かへ行ってしまいました。
前回の様に、しばらくしたらまた戻ってくると信じて、玄関のドアを開ける度に、燕の巣と、いつも燕がいた電線を見上げていた私ですが、やはり戻ってきてくれました。
燕が巣をかける家は病人が出ない、火事にならない、燕は衰える家には巣を作らないなど、各地に縁起の良い言い伝えがあるそうです。
それから、卵や雛がいる燕の巣を壊してしまうことは鳥獣保護管理法で禁止されており、違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金いずれかの刑罰が課される可能性があるそうです。
はじめは玄関先が汚されることを嫌がっていた私ですが、今は雛が孵る日を息子や娘達と楽しみにしている毎日です。
