大人になるにつれて、人はどれだけ欲が深くなっていくのだろう。
最近、つくづくそう思わずにいられない。
七夕と言えば、年に一回、織姫と彦星が誰憚ることなく逢瀬を許されてる日。
子供の頃は、何てロマンチックな日なんだろうと純粋にそう思っていた。
けれど、最近そうは思えなくなってきている。
生涯叶わないと思っていた敦賀さんと想いが通じ合ってからは特に。
敦賀さんから告白された時は天にも昇る気持ちで一杯だったけれど、そのすぐ後にハリウッドデビューの話が敦賀さんに来て、以前にもまして忙しくなってしまったのだ。
デートどころか、以前のように食事作りの名目で敦賀さんのお宅にお邪魔することも儘ならなくなって行き、気が付けば
敦賀さんはあっと言う間に渡米してしまっていた。
忙しい敦賀さんの邪魔をしたくなかった私は出来るだけ電話を控え、敦賀さんの手の空いた時に読めるようにとメールを送っていた。
それに引き換え、敦賀さんは忙しいだろうに、電話をかけてくれた。
最初のうちはそれで十分だった。
電話越しでも敦賀さんの声を聴けるだけでもとても幸せだった。
なのに、いつしかそれでは足りないと思うようになっている自分に気付いた時、愕然とした。
毎日でも会いたい。
敦賀さんの顔を直接見たい。
電話越しなんかじゃなく、直接敦賀さんの声が聞きたい。
直接触れたい。
そして・・・・キスしたい・・・・・
私でもこんな風に思うのに、一年に一度しか会えない二人はそんな思いに駆られないの?
そこまで考えて、一人で自分の部屋にいるのが寂しくなった私は、どこか賑やかな場所に行こうとマンションのドアを開けた。
「こんな夜更けにどこに行こうとしてるの?危ないよ?」
聞きなれた、しかも聞きたくて仕方なかった声が頭から降ってきた。
「え?・・・・・ゆ・・・め・・・?」
クスと笑い声がしたかと思うと、あっと言う間にその大きな腕の中に私は囲まれていた。
「夢なんかじゃないよ。キョーコに逢いたくて仕方がなかったから、社さんに無理を言って一時帰国させてもらったんだ。」
「私も敦賀さんに会いたかった・・・・・」
《おわり》
終わりとなっておりますが、当然、蓮サイドも書く気満々でおりますよ?
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