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(なんて恐ろしい病気なんだ・・・)
キョーコへの想いを自覚したとたん、キョーコ相手に普段通りに出来なくなってしまった自分を自覚していたが、かと言って、どうすればいいのか分からず蓮は途方に暮れていた。
今まで、付き合った彼女は星の数ほどいるのだが、相手から告白されて付き合って来たものだから、蓮は自分から相手の事を好きになって付き合うという事は皆無だったので、どうすればいいのか分からなかった。
けれど、キョーコの側にいる事はとても居心地が良くて、今の立場を誰にも譲る気はなかった。
「敦賀さん、大丈夫ですか?」
気遣うようなキョーコの声に、物思いに耽っていた蓮は我に返った。
「ありがとう、大丈夫だよ。」
キョーコを安心させようと、そう答えたもののキョーコは何故かジト目で見られてしまった。
「敦賀さんって、大丈夫じゃない時ほど『大丈夫』って言いそうで信用できません。」
「・・・・・・・・」
案外自分をよく見ているキョーコに、蓮は密かに感心した。
「でも、平日の今日、この美術展に来れてよかったですね。」
テレテレと笑いながらそう言うキョーコを、思わず抱きしめたくなる衝動にかられたのを、蓮は腕組みする事で何とか堪えた。
先週の日曜日、キョーコが休日出勤だったとかで、今日が代休になったらしい。
しかも、蓮の方も運よく店が定休日である。
キョーコから美術展に行きませんか?とお誘いのメールが来た時、蓮は迷う事無くOKしたのだ。
平日だからか、割合空いていて二人はゆっくり展示物を見る事が出来た。
これが土日祝祭日だったら、人の頭を見るばかりで、ろくすっぽ展示物を見る事が出来ない事請け合いである。
一方のキョーコも、自分のここ最近の心の動きに戸惑っていた。
蓮の事は、行きつけの店の店員と言うスタンスですしか見ていなかったのだが、ショータローに絡まれた時に庇われて以来、自分でも言いようのない気持ちが育ちつつあるのを感じていた。
ずっと幼馴染のショータローの事を好きだと思っていた。
だから、たとえどんな理不尽な事を要求されても、それを叶えるのが当たり前だとキョーコ自身思っていた。
けれど、今、蓮へ向かう感情がかつてショータローに向けていたものと決して同じ物でないことに、キョーコ自身戸惑いを隠せなかった。
蓮は、貴島や村雨の様に距離感なしに来るような事は決してなく、かえってそれがキョーコにとって居心地よく感じてもいた。
ただもう少し近づいて欲しいと、我ながら浅ましくも我がままな面がある事にも、キョーコ自身驚きを隠せなかった。
この感情を何と呼ぶのか、キョーコ自身気付くのはもう少し先の話になる。
《つづく》
いよいよ、来週の月曜日から新しい職場に行く事になり、ただ今ドキドキなくりくりです。
興味はあったけれど、何も知識も資格もないまま、異業種に飛び込んで行く自分の事が、今更ながら無鉄砲だなぁ、と我ながら呆れ返っております(;´Д`A