ユーモアを忘れたら下りる。(エベレスト登頂まであと34日) | 栗城史多オフィシャルブログ Powered by Ameba

ユーモアを忘れたら下りる。(エベレスト登頂まであと34日)

 ナマステ。
 ナムチェバザールから、高所順応で標高3880mのエベレストビューホテルに向かう。このナムチェバザールで一番高い(標高も金額も)ホテル。残念ながら高いので宿泊はできないが、テラスでお茶を飲みながら、アマ・ダブラム、ローツェ、エベレストが見える豪華な場所だ。
 
 昨年来た時は、あの飛行機事故のせいかエベレストが遠く見えた。だが、今回は違う。過去を見るのではなく、今のエベレストを見よう。エベレストが見えたら何を心の中で呟こうか。そう思いながらテラスに向かった。
 
 テラスから見えるヒマラヤの景色。アマ・ダブラムが見える。ローツェが見える。その先のエベレストは雲を纏い、姿を現すことはなかった。まだエベレストは、夏のモンスーンの影響で雲がかかり、眠っているようだった。無理に起こす必要も無い。ご対面まで、あともう少しだ。
 
 
 僕はここに来る時に、一つの想いを大切にしてきた。それは、もしかすると昔からずっと山を登る中で大切にしてきた想いかもしれない。山の先輩から言われていた言葉がある。「ユーモアを忘れたら下りろ。」ユーモアこそが心の余裕であり、そして心の強さである。それができなくなるということは、それだけ余裕がない証拠であり、山の中での冷静な判断ができなくなっているということ。
 
 苦しみや困難をパワーに変える方法こそが、ユーモアである。初めての海外遠征でマッキンリーに登った時は、山頂でタイガーマスクをつけて写真を取り、南極ではフンドシで走り回った。2009年の中国側からのエベレストでは「世界で一番高い流しそうめん」、2010年は「上から目線の人生相談」など、登山とは全く関係のないことをやってきた。
 
 
 困難な状況に負けて自分の心が下を向き始めれば、生きて帰れない。その状況をあえて笑いに変えることで自分が変わり、そして周りも変わっていく。ユーモアは流れを変えることなのだ。エベレストを登るためには、強靭な肉体も精神力も大切だが、楽しみ尽くすこと。楽しくなければ冒険じゃない。楽しくなければ挑戦じゃない。楽しくなければ夢は叶わない。
 
 ヒマラヤの強力な風を、笑いで吹き飛ばしてみたいと思う。

 ナマステ。


エベレストビューホテルのテラスにて団欒。
栗城史多オフィシャルブログ Powered by Ameba


「乗せてくれ~」ビューホテルの近くから、飛行機が飛び立って行った。
栗城史多オフィシャルブログ Powered by Ameba


「あ~行っちゃた」
栗城史多オフィシャルブログ Powered by Ameba

You Tube動画 「2日目 カトマンズ空港→ルクラ→パクディン」


You Tube動画「3日目 パクディン→ナムチェバザール」