アマミノクロウサギの飼育施設について。(マングースについての追記あり) | Just One of Those Things

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アマミノクロウサギの飼育施設について、NHKで午後6時10分~ 午後7時00分に放送される「情報WAVEかごしま」で進行状態がその都度報道され続けているのですが、違和感を覚えたので調べました。

 

「情報WAVEかごしま」で大々的に報道されたのが本日です。

 

情報WAVEかごしま
12月4日火曜日 午後6時10分~ 午後7時00分
▽アマミノクロウサギの飼育施設はどうなる? ▽看護師の思春期講座 ▽気象情報 柴崎行雄,村上留奈,今村聡
http://www4.nhk.or.jp/P2897/x/2018-12-04/21/36211/8214130/
 

で、情報WAVEかごしまでは、報道内容のデータを全く取り上げていないので、詳細を示すことができませんが、簡単にこれまでのものを要約すれば、大和村は、世界遺産になると、観光客が見込めるため、(観光客が見れるように)アマミノクロウサギの飼育施設の必要性を訴え、アマミノクロウサギの飼育施設を実現させるために、文化庁に要望や意見を述べたり、有識者を招いて議論を行い、具体的な数々の飼育体制の問題などの多くの課題をどうするのかが課題となっていますが、文化庁に書類を提出する予定だそうです。

 

凄く違和感があるのですが・・・。

 

鹿児島県大和村のHPにも奄美市のHPにもそれに関するデータは挙げられていません。

 

で、調べてみました。

 

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クロウサギ飼育施設の設立協議へ
11月30日 10時54分 NHK 鹿児島 NEWS WEB

鹿児島県の奄美大島と徳之島の2つの島のみに生息する国の特別天然記念物、アマミノクロウサギについて、奄美大島の大和村は生息環境の保護と観光振興の両立を目的とした飼育施設の設立を目指し、12月に国と具体的な協議を始めることになりました。
 
アマミノクロウサギは、世界自然遺産に登録を目指す奄美大島と徳之島にだけ生息する固有種で、国の特別天然記念物に指定され保護されていますが、観光客増加に伴い、交通事故による被害が相次いでいるほか生息環境のさらなる悪化が予想されています。
 
奄美大島の大和村は、アマミノクロウサギの生息環境を保護するための飼育施設の設立を目指し、12月、国と具体的な協議を始めることになりました。
 
大和村は新たな飼育施設に展示スペースを設ける考えで、観光客などが生息地に立ち入る機会を減らすとともに、子どもたちの環境学習など観光資源として活用するなどとしていて、生息環境の保護と観光振興の両立を目指すとしています。
 
環境省によりますと、アマミノクロウサギを展示する施設はこれまでに例が無いということで、村は国の文化庁との協議で飼育許可が出しだい、村や環境省などで作る検討委員会で計画を具体化し、再来年の着工を目指す方針です。
 
伊集院幼村長は「アマミノクロウサギを間近で見られる展示施設を作ることで、生息環境を守りながら広く知ってもらいたい」と話しています。

【アマミノクロウサギ】。
 
アマミノクロウサギは、鹿児島県の奄美大島と徳之島の2つの島にのみ生息するウサギの一種で、昭和38年に国の特別天然記念物に指定され、平成3年には絶滅の恐れがある生物を評価してまとめた環境省の『レッドリスト』に掲載されました。
 
環境省によりますと、平成15年の推定個体数は奄美大島で2000頭から4800頭、徳之島でおよそ200頭とされ以降、数値の更新はありません。
 
近年では、野生化したネコ「ノネコ」に襲われたり、希少種を見ようと生息地に入った観光客が運転する車にひかれたりすることから保護が課題となっています。
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昨年、毎日新聞も報道されていました。(有料会員記事なので一部だけですが・・・。)

 

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飼育展示へ 大和村が施設設置検討 島内外有識者ら準備委初会合 保護治療、学術的機能も要望 /鹿児島
会員限定有料記事 毎日新聞2017年8月22日 地方版
 
 国の特別天然記念物、アマミノクロウサギの飼育展示施設の設置を大和村が検討している。今月から、島内外の有識者らでつくる準備検討委員会が協議を始めており、施設の意義や方向性について議論を深める。【神田和明】
 
 奄美群島は今年3月に国立公園に指定され、来夏には世界自然遺産登録も目指す。観光客の増加も予想され、アマミノクロウサギの生息地への車の乗り入れなど生息環境の悪化も危惧されている。
 
https://mainichi.jp/articles/20170822/ddl/k46/010/324000c
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で、こちらが昨年の地元の新聞のものです。

 

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クロウサギ飼育施設整備へ=大和村 | 南海日日新聞
2017年8月3日

 国の特別天然記念物アマミノクロウサギを飼育して観察する施設の整備を目指し、大和村は2日、島内外の有識者らで構成する準備検討委員会(委員長・泉有智副村長、委員8人)の会合を村役場で開いた。奄美・沖縄の世界自然遺産登録後の観光客の増加を視野に、生息環境の悪化やロードキルによる被害を軽減して保護を図る目的。委員から観光利用に加えて、傷病個体の治療や繁殖技術の確立に向けた研究、子どもたちの環境教育など施設が担う役割や方針をめぐってさまざまな意見や要望があった。
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大元は20015年が切っ掛けのようです。

 

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クロウサギ飼育展示施設を | 南海日日新聞
2015年10月4日

 環境省の奄美希少野生生物保護増殖検討会(座長・石井信夫東京女子大学教授、6人)は3日、奄美市内で2015年度の初会合を開いた。奄美大島と徳之島に生息するアマミノクロウサギについて地元から傷病個体の飼育展示施設を求める意見が出たほか、捨てられて野性化した猫(ノネコ)がクロウサギなど希少種を捕食している問題では委員から「両島の世界自然遺産登録へ向けても早期の防除計画策定が必要」との指摘があった。
 
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これが、クロウサギ飼育展示施設の要望の切っ掛けです。
 
ちなみに、大和村では、下記のような体制を取っています。
 
で、こんなことも最近やっているのですが・・・。
 
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猫は正しく飼って 大和村でACNが出前授業
2018年11/8(木) 13:01配信 奄美の南海日日新聞

 鹿児島県大和村の名音小学校(福和人校長、児童11人)で7日、奄美ネコ問題ネットワーク(ACN)の出前授業があった。全児童が参加し、野生化した猫(ノネコ)がアマミノクロウサギなどを襲っている現状を知り、奄美の自然環境を守るために、猫を適正に飼うことの大切さを学んだ。
 
 ACNは世界自然保護基金(WWF)ジャパンの協力で、トヨタ環境活動助成プログラムを活用して2016年度から奄美市内の学校で出前授業を行っている。大和村では18年度に始まり3校目。
 
 授業ではWWFジャパンの大倉寿之さんが奄美大島の自然の特徴を紹介。奄美にしかいない生き物が多い一方、外部からの侵入にとても弱いため「守っていかないといけない」と強調。多くの生き物が共生する森で、ノネコなどの外来種が生態系への脅威となっている現状を取り上げた。
 
 ACN副代表の鳥飼久裕さんはノネコや野良猫、放し飼いの猫など「家の外に猫がたくさんいることが問題」と指摘し、名音集落にいた野良猫が、希少な生き物が多い森の中でも目撃された事例を紹介。ノネコや野良猫を増やさないように、家の中で飼うことやマイクロチップの装着、不妊手術をすることの大切さを訴えた。
 
 2年生の男子児童(8)は「猫が森にいるのは人間のせいだと知った。名音の人に猫を捨てないように伝えたい」と話した。
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アマミノクロウサギは増えてきているという話もあったかと・・・。ノネコが捕食するのは9%ほどで、道路に飛び出す事故が多いとも・・・。
 
WWFさん、相変わらずですが、もうちょっとリサーチしなきゃだめですよ。WWFさんもイエネコ外来種認定なんですね。ノネコと野良猫と飼い猫をどう区別つけるの?
 
で、下記の記事を見つけました。
【ここで前回の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」と違うのが、勧告を出す諮問機関が「IUCN(国際自然保護連合)」であるという点です。イコモスが文化遺産の専門家であるのに対し、IUCNは自然遺産の専門家ですので、それぞれの専門の遺産に対して勧告を出します。今回の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は自然遺産ですので、IUCNが現地調査を行い、勧告を出しました。
 
勧告には、そのまま世界遺産として登録を勧める「登録」と、世界遺産としての価値は認めるけれど追加情報が必要である「情報照会」、推薦書の本質的な改定が必要とされる「登録延期」、世界遺産としての価値が認められない「不登録」の4段階あります。今回、IUCNが出した「登録延期」勧告は、4段階の勧告のうち下から2つ目という、厳しいものでした。】
 
まぁ、詳細は上記を熟読してくださいませ。観光者目的で勇み足が続いているような気がします。
 
ということで、アマミノクロウサギも同じ命ですので、見世物ではありませんし、自然遺産ですから、自然のままの守る方が得策だと思われ、保護の仕方が他にもあるように思います。
 
≪追記:2018年12月5日≫
 
ちなみに、最大の天敵だったマングースによる被害についての論文を見つけました。
 
(Ecological Research(日本生態学会英文誌)、32(5)、735-741、2017年9月発行、電子版、2017年8月1日公開)
上記より、
【本研究では、この分断化されたアマミノクロウサギの遺伝構造を、島内各地で採取した糞からDNAを抽出して調べました。その結果、アマミノクロウサギの遺伝構造は距離が離れるほど大きく異なり、分断される以前に北部と南部の個体群では、すでに異なる遺伝的な特徴を持っていたことがわかりました。つまり、マングースが多く生息していた島の中央部では、アマミノクロウサギが局所的に絶滅してしまったため、この地域の個体群がかつて保持していた遺伝的な構造が「抜け落ちて」しまったと考えられます。一方、遺伝的な多様性に着目すると、北部の孤立した個体群では多様性が低くなっていました。これはマングースによって分断された2つの個体群のうち、北部の個体群はその個体数が南部の個体群に比べ大きく減少したことが原因と考えられます。】
とてもショッキングな話です。この状態ですと、アマミノクロウサギの飼育施設は、研究は難しいですし、飼育も難しいのではないでしょうか。繁殖も遺伝子上の意味合いで言えば、更にアマミノクロウサギ・ゲノム(DNAの構造)が更に複雑になる可能性が大きいです。
良かれと思ってハブの駆除のために外来種のマングースを入れたが、悪かったでマングースを駆除ですか・・・。で、まだ駆除は完全に終わっていないのに、一度しかとられていない写真をネタに、ノネコを標的ですか・・・。捕獲されたノネコは1週間期限で殺処分となり、引き出すにも手続きが面倒で、そうしているうちに殺処分されていく・・・。
 
で、アマミノクロウサギの飼育施設?
 
解せません。
 
~追記ココマデ~
 
※多忙につき、相変わらずブログでの対応が遅れていますことを、心からお詫び申し上げます。
 
 

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