早朝から強い日差しが射し込んでいます。
空気は冷たいくらいに爽やか。
窓を開け放つと小鳥の合唱が飛び込んで
きました。

こんな土曜日の朝に、涙の話はどうかと
思いながら、
自分の気持ちを整理したくて。。。


人には涙もろい方とそうでない方がいる。
私はあまり涙を流さない方だ。
卒業式でも級友たちが涙ぐんでいるのに
私は涙が出なかった。

悲しみは後からやってくることが多い。
そんな時は、ほとんど静かに涙が流れる。
私は過酷な体験をしていないからなのだ
と思う。


沢村貞子著「わたしの脇役人生」の中に
『おカツさんのこと』というエッセイ
がある。

おカツさんは働き者のご主人を若くして
亡くし、老父と男の子のために必死で
生きてきた。

大事に育てた一人息子は早稲田に入り
これからという時に学徒出陣。
おカツさんは二ヵ月後に戦死公報を
受け取った。

おカツさんは昼も夜も、ただ泣いて
泣き腫らした両目がキリキリ痛み
何も見えなくなったそうだ。

これは一時的なことだったらしく、
読んでいる私はホッとした。
たくさん泣いたから、涙の成分で水晶体
が曇ってしまったのだと思う。


そうなっておカツさんは、夫に先立たれた
時に和尚さんに言われたことを思いだす。
……三年、我慢しなさい。三年たてば、
 どんな悲しいことも自然に諦めがつく。
 人間とは、そういうものだ

おカツさんは悲嘆の底から立ち上がった。

悲嘆に暮れながらも生きている限り、
人は無意識に前を向くのかもしれない。
そんな時、道しるべになる言葉は必ず
あるのだと思う。
その杖にすがり人は立ち上がる。

私には、こんな経験はまだ無い。
その時がきて、心の自然治癒力を信じ
られたらうれしい。


ウクライナもガザも悲嘆の涙が溢れている。
一方でこの夏、パリオリンピックでは
別の涙が流されるのだろう。
歓喜の涙、悔し涙、感動の涙。

そんなことを考えると複雑な気持ちになる。
この夏がオリンピックの涙だけなら

どんなにうれしいことかと思ってしまう。



今日も一日、梅雨入り前の空を楽しんで

お過ごしくださいね。