読みたい本がなくて書棚を見ていたら、
沢村貞子(女優・エッセイスト)さんの本が
一冊あった。

1989年に女優引退、1996年に逝去。
去り際の清々しい女性として、
今でも折りにふれて思い出す。

Eテレ「365日の献立日記」を通して、
若い世代でも沢村さんをご存じの方は
いらっしゃるのではないかと思う。


時間不規則な女優業をしながら、

ご主人との日常を大切にしている女性として、

30代の私は憧れた。


自分にはできないだろうと思うから
憧れたのかもしれない。
そんな沢村さんのエッセイ集の一冊、
「わたしの脇役人生」を再読した。

1980年代に書かれたもので、
その時代の社会風潮を痛烈に批判している
ことに驚いた。

再読しなければ気づけなかった。
初めて読んだころは、教えを乞うような
気持ちだったのだと思う。


一方で、沢村さんらしい生活の彩りが
随所に描かれている。
この本を書かれたころの沢村さんは
70代後半。
私も年が近づきつつある今だから
改めてハッとしたこともある。

春めいてきたある朝、沢村さんは食卓に
新しい器を並べた。
「なんとなく若返ったような気分だね」
とご主人。
そんなちょっとしたエピソード。

ここ数年、減らすことと増やさないこと
しか頭になかった私には、
とても印象的だった。

長く愛用してなじんでいる器は落ち着く。
でもたまには、ちょっと何かを変えたら
新鮮だ。

穏やかな水面に小石を投げこむくらいの
変化は心が弾む。
私もちょっと何かを変えてみよう。


今日も一日お疲れさまです。

明日も一日、無事にお過しくださいませ。