- 遭難、/本谷 有希子
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「遭難、」 本谷有希子 著 講談社
これまで、何冊も著者の小説を取り上げてきましたが、今回は戯曲です。戯曲はあまり読みなれてないので、読みづらいかと思っていたのですが、全然そんなことなかったです。せっかくの戯曲なので、舞台と同じく、最初から最後まで一気に読みました。本当に舞台を見るのとは違うだろうけど、目の前に映像が浮かんですごくおもしろかったです。
学校の職員室が舞台で、登場人物は先生役4人、保護者役1人だけです。5人だけなら、読みなれてない戯曲も、お話においていかれることなく読めるというものです。
先生たちの裏人格とでもいうような黒い一面が津波のように出てくるので、免疫のない人には読んでいて苦しいかもしれないです。でも私は、著者のあとがきにあった『性格の悪い女の人が書きたいなー』という言葉に凝縮されている登場人物の性格の悪さが、読んでいてうれしかったのです。うれしかったのは、私の個人的な部分と呼応しているからだと思うのですが、ちょっとかわいそうにも思えるこの種類の性格の悪さは、私でなくても引き込まれるものがあるのではないでしょうか(そうだと思いたい)。
この戯曲は、既に実際に公演されていて、公演時の記録や写真も載っています。好きな女優さんも出ていたし、ぜひとも舞台を見てみたかったなぁと思います。
表紙が瀧波ユカリさんの絵なのもいいです。この人の漫画『臨死!江古田ちゃん』も近々読む予定で、すごく楽しみです。江古田ちゃんと著者、なんとなく似てるところがあるような気もします。