若年層の生活意識と消費実態 4/4 | (仮)アホを自覚し努力を続ける!

(仮)アホを自覚し努力を続ける!

アウグスティヌスの格言「己の実力が不充分であることを知る事が己の実力を充実させる」

若年層の生活意識と消費実態
~厳しい経済状況の中、生活満足度の高い若者たち、その背景は?
(ニッセイ基礎研究所 生活研究部門 研究員 久我尚子)



5――若年層の消費実態


1|デフレや技術革新の恩恵を受けた消費生活


 消費活動については、若年層全てが含まれるわけではないが、個別家計の把握のしやすさから、30歳未満の単身勤労世帯の消費支出をみる。


 30歳未満の単身勤労世帯の消費支出をみると、可処分所得の増減の影響か、男性では若干減少し、女性では5千円増加している(図表9)。また、消費支出の内訳をみると、いずれも「食料」「住居」「交通・通信」「教養・娯楽」が占める額が多い。10年前と比べると、男女とも「食料」「交通・通信」「教養・娯楽」「交際費」が減少し、女性では「被服及び履物」も減少している。なお、このうち「交通・通信」「教養・娯楽」「被服及び履物」では消費者物価指数(CPI)も低下している。CPIの低下幅をかんがみると、特に「教養・娯楽」や「交通・通信」では消費控えというよりも、サービス内容の変化や技術革新による価格下落の恩恵を受けている可能性が高い。例えば、格安航空券などを利用した低額な旅行商品の増加、ブロードバンド回線や携帯電話のパケット通信の普及による通信料の定額化および低廉化などが具体例としてあげられるだろう。


 また、男女とも「食料」が減少しているが、より詳しい内訳をみると外食費の減少による影響が大きい。これは、ハンバーガーチェーンや牛丼チェーンなどのファストフードにおける価格競争激化の恩恵を受けていることのほか、内食志向のあらわれもあるだろう。金融危機以降、家ナカ消費、巣ごもり消費といった言葉を耳にするようになり、内食に向けた様々な商品やサービスが提供されている。


 一方、「住居」はCPIが若干低下しているにも関わらず、男女とも消費支出額が増加している。これは、景気低迷により社宅を廃止したり12、住宅補助制度を縮小する企業が増加した影響とみられる。


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2|耐久消費財の普及率上昇の一方、ネットの普及によるテレビ離れも


 前掲の図表3において、20 歳代では「耐久消費財」の満足度が30~50 歳代より高くなっていた。


 現在の若年層における耐久消費財の普及率をみると、男女とも「電子レンジ」「電気冷蔵庫」などの生活上の基本的な電化製品の普及率が上昇している(図表10)。家庭用耐久消費財は技術革新にともないCPIは半減しており、ここでも価格下落の恩恵を受けている様子がうかがえる。


 一方、「カラーテレビ」の普及率は若干低下しているが「パソコン」「携帯電話」は上昇しており、テレビの視聴がインターネットや携帯電話にとってかわられている様子がうかがえる。事実、20歳代のテレビの視聴時間は減少する一方、インターネットの利用時間は大きく増加している。


 また、昨今、若者のクルマ離れなどと言われるが、確かに男性では普及率の減少がみられる。


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3|価格感度の高い購買行動


 若年層の消費行動について、最後に商品購入先をみていく。30歳未満の単身世帯の商品購入先をみると、男性では10年前より「一般小売店」「コンビニエンスストア」「百貨店」が減る一方、「スーパー」「ディスカウントストア」「通信販売」が増えている。つまり、値引き率が高い店舗での購入が増え、価格感度の高まりがうかがえる。なお、「通信販売」はインターネット通販の増加によるものである。


 一方、女性では、男性ほど減少幅は大きくないが、同様に「一般小売店」「コンビニエンスストア」「百貨店」が減っている。さらに「スーパー」も減っており、「ディスカウントストア」は男性以上に増えている。1999年の男女を比べると、女性では、もともと男性より価格感度が高い様子がうかがえるが、より一層その感覚は増しているようだ。


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6――まとめ ~若年層の生活満足度の高さは目先の時間・所得の不自由のなさ、しかし、その将来は?


 厳しい経済状況にあるはずの現在の若年層が高い生活満足度を示す背景として、時間や所得、消費の状況をみてきた。その結果、若年層の多くは独身者であり時間のゆとりがあること、また、非正規雇用者が増えているものの、家族世帯者より個人の裁量で自由になる額が多く、景気低迷の影響もさほど受けていない様子がうかがえた。さらに、その消費生活は、デフレや技術革新の恩恵を受け、案外、充実していた。よって、若年層の高い生活満足度の裏には、目先の時間と所得に不自由していないことがあるのだろう。


 では、これらの状況から現在の若者たちは幸せなのかというと、そう単純な話ではない。20歳代の7割が現在の生活に満足度している一方で、悩みや不安を感じている割合も6割にのぼり、将来の収入や資産に対しての不安も強い。景気好転の兆しは見えず、社会保障の制度改革は遅々として進まない。将来に期待がしにくいために相対的に現在の満足度が上がっている可能性もあるのではないだろうか。また、不透明な将来に対して何らかの手ごたえがほしいという不安感や焦燥感からか、現在の若年層は社会貢献意識も高い。


 中高年層は、若年層の結婚や恋愛への消極的な態度や消費支出をおさえ高額消費を好まない節約志向、海外留学や海外赴任を望まない内向き志向などについて、上昇志向の低さ、物足りなさを感じ、日本の将来を憂える声も多い。しかし、若者たちの価値観や行動様式は社会変化により形成されたものだ。


 日本経済の低成長が続き、労働市場の改革も進まない場合、20年後の就業者数は現在より約850万人も減少する。若年層の活用は急務であり、若年層が将来に期待を持ち積極的に未来をきりひらいていけるような社会とするためには、中高年層は若年層の価値観形成の背景をよく理解するとともに、若年層も他世代に歩み寄り、全ての世代で日本社会における課題を共有することが肝要だ。