どんより寒空の帰還困難区域。

 

いつもよりずい分遅く到着した雪景色の浪江町で、

最初の仕事は、一台の捕獲器を掛けること。

 

その後は、家の解体などですっかり減ったポイントを

ひとつずつ潰していく。

 

 

 

静まり返った森の中、突然視界に入って来た異質なもの。

 

命の期限が明日なのか?明後日なのか?

雪がかかり、冷たい風が吹きすさぶ、

夜は零下になる生き地獄で

ウリ坊の兄弟が残りの時間、温めあっていた。

 

 

 

今しがたここを歩いたのだろうか?

 

これは猫だね、きっと。

 

このすぐそばにポイントがあるから、

ご飯を探しにやって来たのかもしれない。

 

 

クロちゃんを保護したいと、捕獲器を掛けて

ちょうど4時間後。

 

誰か入ってる気がする・・・

 

そう・・・きっとクロちゃんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっ!

 

全然見たこともないアナタは一体

だ~れ?

 

 

 

 

くるり~ん!!

 

 

 

 

 

 

ボクならキジ白ですよビックリマーク

 

クロちゃんじゃなかったのは残念だけど、

まん丸お目々の超キュートなキジ白ちゃんだから

全然許す。

 

想定外の子だったけど、

近く、この家屋の解体も決まっていることや、

近くに人の住む家もないことを考えると、

保護するのがベスト。

 

一旦、犬とり名人のところに運んで、

再び残ったポイントにクルマを走らせてると・・・

 

 

見えますか?

 

雪ちらつく、牧場の枯草の先。

 

(画面真ん中あたり)

 

 

みんな、キミのこと追いかけているんだよ。

 

広い牧場の周辺の何処かに、

ご飯は届いていないかと探しているんだね。

 

最後に食べたのはいつだっただろう?

 

手も足も身体も氷のように冷たくなっているだろう。

 

 

暫く追いかけっこしたけど、

牧場から倒壊家屋を通って、その先に消えていった。

 

生まれたこの場所で一生を終えられるのが

キミにとっては一番なのかな?

それに代わる温かい寝床や

おなか一杯のご飯なら用意してあげられるよ。

 

 

あっという間に、時計はもう夕方4時。

 

人気のないこの場所は、とてつもなく寂しい場所になるから、

残念だけど今日はここまで。

 

 

今朝がたトラップに掛かってたウリ坊。

 

せめて最後にと、いつの間にかドッグフードを

入れてくれたのは犬とり名人だね。

 

 

救える命、救えない命。

 

救える命なんてほんの僅か。

 

もう涙も枯れたかと思っていたのに、

色々思い出すうち、高速からの風景がなんだか、

不意に滲んで見えたよ。