ノンフィクション作家の柳田邦男氏がその著書の中で「最近丸文字を見なくなった。」という趣旨のことを述べていた。

 

いわゆる「丸文字」とは、昭和の頃、特に高校生くらいまでの女の子の間で流行した手書きの字体で、マンガっぽい可愛い文字であることをその特徴とする。

 

丸文字は文字自体が書き手の可愛らしさを体現していたことから、スヌーピーのハンカチなんかと同じくひとつの小道具となっていた。

 

確かに最近丸文字を目にしなくなった。

 

なぜか。

 

言うまでもなく、スマホなどの電子機器の普及、就中メールやLINEの爆発的普及により、手で文字を書くということ自体がなくなったからである。

 

 

 

字を手書きするという行為には、頭の中で言語を漢字等に変換する作業や、それらを字の由来ないし書き順に基づいて具現化する作業を伴う。

 

それは人間だけが有する能力であり、大切な文化でもある。

 

柳田氏はスマホ等の普及がそのような能力や文化を後退させ、いつか消滅させてしまうのではないかと懸念していた。

 

しかしそうは言っても、電子機器の普及やⅠT化の進展を止めることはもはや不可能である。

 

実際、既に小学校では1人に1台タブレット端末が貸与されているし、将来職業人として社会に出ていった際にも、デジタル化された文字情報のやり取りなくして仕事は成り立ち難い。

 

従って問題の核心は、既存の文字文化等を如何に維持しながらIT化と折り合いを付けるか、ネットや電子機器の普及が社会に及ぼしている弊害を最小限に食い止めながら如何にして子どもたちをIT化社会に適応させるか、そのあたりにならざるを得ない。

 

 

 

「丸文字」が流行っていた当時はこれを嘆く意見も見られたが、それすら今では懐かしい話である。

 

今、書きの丸文字を書ける人は相応に高齢化しているはずで、丸文字は伝統工芸などと同じく担い手不足に陥り、いずれは人工的なフォントの世界でしか見られなくなる可能性がある。

 

丸文字

 

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