新聞の文芸欄で、ある大学教授が「この本が科学者を目指す切っ掛けになった。」と紹介していた本、「マッハの恐怖」(柳田邦男)を図書館で借りて読んだ。

 

この本は、当時NHKの記者だった柳田邦男氏が、昭和41年(1966年)に連続して発生した「全日空羽田沖墜落事故」(2月4日)、「カナダ太平洋航空機墜落事故」(3月4日)、「英国海外航空機空中分解事故」(3月5日)などの航空機事故を追ったノンフィクション作品である。

 

特に、2月4日に発生したボーイング727型機の全日空羽田沖墜落事故(乗客乗員133名全員が死亡)については、当時事故原因と原因究明に携っていた事故調査委員会内部での意見対立を丁寧に掘り下げている。

 

当時調査委員会では、パイロットンの操縦ミスとする立場が大勢を占めていた中、米国巨大航空機メーカー・ボーイング社製の機体に問題(金属の強度不足等)があったとみる少数派の調査委員も存在した。

 

作品では、多数派の非科学的で最初に結論ありきのような調査の進め方を痛烈に批判するとともに、少数派委員による航空機事故調査の基本を忠実に踏まえた実験や立論を丹念に探っており、科学的な記録が中心であるにも拘らず、芸術作品に接して感動したような一種崇高な読後感があった。

 

 

 

作品では、記者としての柳田氏が、ロザリオを首にかけた状態の遺体や腕を組んだ状態の夫婦の遺体が収容されていたことに着目し、遺族に会って話を聞くなどする中で調査団多数派の立論や原因究明姿勢の偏りに批判的に切り込んでおり、柳田氏の記者魂のようなものも随所に表れていた。

 

ちなみに、この全日空羽田沖墜落事故の事故調査団の団長は、実はボーイング727型機の日本への導入を主導した人物であり(ボーイングの「B」は米軍のB29爆撃機のBでもある)、調査に何らかの国家的バイアスが掛かっていたのではないかと勘繰り得る余地がある。

 

本は古い出版物でもあり、図書館本の貸し出しが奥付に日付印を押す形で管理されていた時代の貸し出し記録が残されていたが、ベストセラー作品に相応しく、1か月と空けることなく貸し出され続けていた。

 

 

 

わが家の子①(小6男児)は今でこそスマホばかりいじっているが、もっと小さい頃は機械いじりみたいなものが結構好きだった。

 

子①は去年暮れに悪性脳腫瘍の摘出手術を受け、その後も陽子線治療、痙攣発作による入院、肝生検のための入院などを繰り返しており、今後ずっと抗痙攣薬を飲み続けなくてはならない。

 

それゆえ彼はたぶん宇宙飛行士やパイロットにはなれないが、しかし真面目に努力しさえすれば、科学者になることは可能である。

 

子①がもう少し大きくなったら、この「マッハの恐怖」を読んでみるよう強く勧めようと思っている。

 

 

ちなみに、私が借りた本には、珍しく290ページの9行目から11行目にかけてのところに明らかな乱丁があった。

 

また、話が最終段階に差し掛かって核心に迫ろうという部分には、赤ペンによる傍線等の書き込みが多数存在した。

 

きっとどこかのジジイが興奮して書き込んだのであろう。

 

図書館の本にそんなことをする奴は暇なお馬鹿さんに違いないが、ただ傍線などは割合的確に引かれていた。

 

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