還暦を過ぎた今でもこういう風景には心がときめく
小学4年生の5月の終わりまで、東京都の小平市というところに住んでいた。
西武国分寺線の鷹の台駅から歩いて何分かの場所であった。
当時、ときどき友達と「たっちゃん池」近辺に川エビなどを取りに行った。
「たっちゃん池」は東京都の村山貯水池(多摩湖)から流れ出る小川の流れ出し口付近にあった。
なぜ「たっちゃん池」と呼ばれていたかというと、昔この池でたっちゃんという子どもが溺れて死んだからだという。
以来、この池のことを「たっちゃん池」と呼ぶようになったそうだ。
この話、当時は学校の怪談みたいな単なる作り話だと思っていたのだが、今回たっちゃん池についてあれこれを調べてみたところ、どうやらこの名前の由来の話は事実らしいことが判った。
たっちゃんが溺れたときには近くにいた兵隊さん2名が助けに行き、この2人の兵隊さんも溺れて死亡したという。
たっちゃん池まではみんなで自転車を連ねて繰り出した。
改めて地図で確認したら、距離にして約6キロメートル、自転車だと大人で30分くらい掛かる場所であった。
もとより、当時は小学校低学年だったし、変速機のない自転車に徒歩の友達を2人乗りで分乗させてヘイコラヘイコラ漕ぎながら繰り込んだ訳で、結構大仕事だった記憶である。
たっちゃん池近くの多摩湖からの流れ出しの水路には何段かの小さな砂防ダムみたいものが構築されていて、その各段ごとに水が溜っていた。
そこに透明の川エビ(すじエビ?)が棲んでいて、これを網で掬って採る。
小平市は武蔵野台地の中央部に位置し、陸稲(おかぼ)の栽培が地域の農業を象徴するくらいに水辺に乏しかった。
そのため私は水生生物の採取に飢えており、たっちゃん池周辺の水辺は、現在「北山公園」となっている東村山駅の北1キロほど先に広がっていた水田地帯と並んで、苦労して遠出してでも何度も行きたい、夢に出て来るほど胸をときめかせた遊び場であった。
その後60年近くを経た今でも、あのころの川エビ採りやザリガニ採り、ドジョウ採りの光景を昨日のことのように思い出す。
※北山公園
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