しばらく前、NHK「猫のしっぽカエルの手」のベニシア・スタンリー・スミスさんが亡くなられた。
NHKには、民放のおバカ番組みたいにやたらギャーギャー騒ぐ番組とは別に、穏やかで静かで、観ていて心がざわつかない番組がいくらか残っている。
この「猫のしっぽカエルの手」もその数少ない番組の一つであった。
中でも私が好きだったのは、ベニシアさんが書き残していたと思われる詩やエッセイの類の翻訳・朗読の部分である。
ベニシアさんはイギリスの貴族の出身だが、衣食住を出来る限り自然のもので賄うようにし、古い物を長く大切に使っている。
番組では、そんな彼女の価値観や人柄が滲み出る素敵な詩やエッセイが数多く紹介されていた。
何年か前から、番組に出て来るベニシアさんがかなり痩せて見えるようになった。
それとともに、番組自体も再放送乃至記録の振り返り的な回が多くなっていたので、「ああ、たぶんそうなんだろうな。」とは感じていた。
この海辺の街に引っ越してきて5年余、ベニシアさんのように自然の恵みに感謝し古き良きものを大切にする暮らしがしたい、と心の片隅で思いながら、結局は浮世の有象無象に振り回されて今日に至っている。
ベニシアさんには遠く及ばない日々を送ってきてしまったが、ベニシアさんの思いのようなものは心に留めて暮らしていきたい。
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