荻原浩「あの日にドライブ」
私もブログを通してあの日にドライブしてみることがある。
小学4年生の途中から中学1年生の途中まで名古屋市に住んでいた。
私が住んでいた場所は名古屋市の中心部に近く、当時まだ現役で活躍していた名古屋市電の幹線が走っていた。
その地域では、出来町祭りという盛大なお祭りが開かれていた。
この出来町祭りで強く印象に残っているのが、からくり人形を装備した豪華で大きな山車である。
からくり人形は独特の動きをする。
それは、しなやかであるとか擬人性に富んでいるというものではないのだけれども、逆にその動きが機械的で奇抜である分、私はその仕組み・からくりにいろいろな想像を巡らせた。
からくり人形は子ども心にも不思議な存在であり、暫くは夢にまで出てきたものだ。
実はもうひとつ、この出来町祭りで印象に残っていることがある。
それはもう本当にどうでもいいことなのだが、祭り会場近くのストリップ劇場の前で、いかにもチンピラ風の酔った若い男がいわゆるウンコ座りをしながら、道行く人に絡むように罵声を浴びせていた光景である。
あのころは父も働き盛りだったし、母も若くて元気だった。
誰と出来町祭りに行ったのかは今となってははっきり思い出せないのであるが、父はお祭りや縁日のような不要なお金の掛かる企画は基本的に好きではなかったので、父が一緒でなかったことだけは確かである。
ちょっと前の土曜日の早朝、例によってNHK・BSの「新日本紀行」の再放送を観ていたら、50年前の飛騨地方のからくり人形を取り上げた回を再放送していた。
それを観て、出来町祭りのからくり人形の不思議な動きを懐かしく思い出した。
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