私は、クワガタムシのメスです。
先日、 「道子」と言う名前がつけられたの。
名づけの親は、
7歳の人間の男の子。
「道で見つけた、メスの子供のクワガタだから、
道子ちゃんがいいよ!」
って、![]()
何か安直過ぎない?
もう少し、
マルガリータ とか
アリシア とか
マリー とか
エレナ とかさぁ
綺麗な名前が良かったわ。
ともかく、この子に見つかって
私の故郷とは、遠く離れた所まで来てしまったわけ。
そう言えば、
ガの叔母さんに、
「あんたは、クワガタだから、気をつけないといけないよ。
私らを見つけたら逃げる人間たちは、あんたたちを
見たら、捕まえようとするからね」
って、言われていたんだけど、
真っ黒な私を、暗い夜道でよくも、見つけたものだわ。![]()
もちろん、私も逃げようと頑張ったわよ。
男の子の手のひらをつついてやったわ。
「いたいよぉ、お母さん。道子ちゃんがかんだぁ」
て、言ってわ。
でも、その後、お母さんて言う人の大きな手の中に
入れられて、益々、逃げられなくなってしまったの。
男の子は、私を捕まえたのがとても嬉しかったらしくて、
いろんな人に、私を紹介したの。
「クワガタ虫の道子ちゃんです」 ![]()
って。
虫かごの中はせまくて、何かつるつるしていて、
うまく歩けないのよ。
でも、バナナのご馳走だけは嬉しかったわ。
クリーミーで甘くって、これだけはつかまって良かったと
思ったわ。
しばらくすると、かごの中に小蝿がやってきて
私のご馳走をかすめに来たの。
私は、バナナをしっかり、体ごとで抱え込んで、
「あっちへ行きなさいよ!これは私のものよ!」
て、言ってやったの。
夕方、お母さんて言う人が帰って来て、
「あら、道子ちゃんの虫かごに、蝿が入っているわ。
それに、バナナで体がべとべとじゃない。」
と言って、
私の、体を洗って、虫カゴも綺麗にしてくれて、
小蝿はいなくなったの。
そして、男の子が、
「体がべとべとになるくらい道子ちゃんは
バナナが好きなんだね」
と言うと、
お母さんが、
「そうね」
と言って、新しいバナナをカゴに入れてくれたの。
わかっているじゃない~。
二日ほどして、
男の子のお母さんが、
私の体を洗ってくれたんだけど、その時に、
「あらぁ?道子ちゃん重くなったみたい。」
男の子が
「えっ?道子ちゃん太ったの?」
って!
失礼しちゃうわね。![]()
バナナは確かに美味しかったけど、小さなかごの中で
動かないのだから少しぐらい重くなって当然でしょ!
すると、男の子が、
「道子ちゃんに体操を教えよう」
って、かごから出したので、
あぁ~久しぶりぃ~って、
家の中で飛んでみたんだけど、
あらへん。
重くて遠くまで飛べなかったの。
男の子の腕の上に着陸して。
息をついていると。
男の子が、私をまじまじと見て、
「ねぇお母さん、道子ちゃんゴキブリみたい!」
もぉ!まったく!失礼しちゃうわ!![]()
その次の日、男の子が
「ねぇ、お母さん。道子ちゃんが
タマゴ産んだらどうしよう?」
て、聞いて、
「道子ちゃんは、オスのクワガタのお友達と
一緒じゃないとタマゴを産めないのよ」
と、お母さんが説明したの。
「じゃぁ。道子ちゃんお友達がいるところに
帰りたいかなぁ?」
男の子は、とっても優しい子みたい。
「そうね。今度、お山の木に、
道子ちゃんを帰してあげましょうね」
とお母さんが答えたの。
・・・それで、私は今、
とある山の、ある木につかまって 、![]()
クワガタ虫のオスのお友達を見つけたところ。
私の冒険談を話してあげたんだけど、
「ぼくも道子ちゃんみたいな名前が欲しいなぁ」
って、言うのよ、
だから
私がつけてあげたわ。
木の幹で見つけた男の子だから・・・・。
「幹男君」って。 ![]()
お山に戻って嬉しいけれど、
あの、バナナの味は忘れられないわ。
この山にはバナナの木はないのかしら?
