俺は達郎、32才の独身。
クリスマスは来週だが、独り身だから関係ない。きっと仕事になるだろう…。

翌日、会社から家に帰ると家の中に奇妙な違和感を感じた。

最近、少し変だとは思っていたが、今日は明らかにおかしい。
買ったばかりで開けていない牛乳が飲みかけのコップと共にテーブルに置いてあったり、シャワーしか浴びないのに湯槽にお湯が入っていて、まだ、ほんのりと温かかった…。

誰かが忍び込んでる…。

俺が住む部屋は、30階建てのマンションの25階でバルコニーから入ったとは考えられない。
また、合鍵を持っている人間もなく、ドアがピッキングされた後はない…。

翌日の休みに、俺は部屋に小型監視カメラをつける事にした。
スマホでリアルタイムに確認出来るものだ。

次の日、会社が終わって何気なくスマホで監視カメラの映像を確認した所、浴室の方からリビングに女が入ってきた。

「えっ、マリ?」

紛れもなくその女はマリだった。

マリと俺は学生の頃からの付き合いで、お互い結婚まで意識していた。

ところが、3年前つまらない事で喧嘩をしてしまい別れてしまった。
その時、俺が酷い事を言ってマリを深く傷つけてしまった。
マリは傷心のまま仕事でヨーロッパに行ってしまい、俺たちは連絡を取る事も無くなった…。

マリが帰ってきてくれた。

俺は喜び勇んで、最寄り駅から走って帰った。

部屋に入ってマリの名を呼んだが返事がない。俺は家中探したがマリはどうやら帰ってしまったらしい。

テーブルの上にはメモが置いてあった。

「あなたに会えて本当に良かったです。この言葉がずっと言えなくて心残りでした。幸せに生きて下さい。」

俺はそのメモを抱きしめ泣いた。

俺は翌日も、仕事中に何度もスマホを見た。

マリが、もしかしたら帰ってきてくれるかも知れない。

一縷の望みを託し何度も見たが、カメラにマリが映る事は無かった…。

仕事を終え、もう一度スマホで監視カメラを確認したら、カメラに人影が映った。

マリだ!一瞬喜んだが、直ぐにそれが男だとわかった。

「あれ、もしかして憲司か?」

それは、幼なじみの憲司だった。小中高と一緒で、何でも話せる親友だった。
憲司は医大に入り、将来は海外にいって紛争地域で傷ついたいる人たちを助けたいと言っていて、5年前に中東に行っていた。
何年かは手紙でやり取りしていたが、ここ数年は連絡が取れずにいた。

なんで憲司が?と思い、よく見ると何かを食べてるようだ。

俺は、久しぶりに憲司と思いっきり飲もうと思い、ワインを買って急いで帰った。

部屋に入って憲司を呼ぶと、憲司の姿は無かった。
テーブルには、憲司が食べたレトルトカレーの袋が置いてあった。

そういえば、憲司と最後の手紙をやり取りした時、憲司が日本のレトルトカレーを送ってくれと言ってたっけ。
俺は仕事が忙しくて、結局送れなかったのだった。

俺の中には、何か不思議な予感があった。

翌日、俺は昼休みに、再びスマホで監視カメラを確認した。

そしたら、そこに母さんが映っていた。
母さんは俺の洋服を干していた。

洗濯物を干し終えると、首を左右にふる仕草をした。
昔から肩こりが激しくて、母さんがよくやっていた仕草だった。

俺は矢も盾もたまらず会社を早退して家に向かった。

母さんは、俺が小学生の時に離婚した。それからは、女手一つで俺を大学まで行かせてくれた。

俺は離婚した母さんを、心のどこかで責めていた。だから大人になってからは、一人暮らしを始めて距離を置いていた。

母さんは、今年の初めに交通事故で死んだ。

俺は、母さんが死んだ後、言いたい事が山ほどあった事を知った。

それは、どれも感謝の言葉だった。

急いで部屋に上がり、母さんを探すと、バルコニーに母さんが立っていた。

「母さん!」

俺が呼ぶと、母さんは振り返り満面の笑顔を見せてくれた。

俺は母さんに、泣きながら

「ありがとう」

と言った。

すると空からトナカイが引いているソリが現れた。

ソリには、マリも憲司も乗っている。

母さんは、すうっとソリに乗った。

「私の事は、もう気にしないで幸せになって」

マリが言った。

「俺は自分の夢に命をかけた。お前も、まだまだ人生諦めんなよ!」

憲司が言った。

「あなたが幸せに生きる事が、私の幸せなの。ちゃんと前を向いて生きて行きなさい。」

母さんがそう言うと、ソリは空に消えていった。

俺は今日があらためて、クリスマスイブだと気がついた…。

☆~Happy Xmas~☆


ラジオ「ファンキーフライデー」より