別れの歌 | Psychotic Psyche

Psychotic Psyche

涅槃の薫りがそよそよ

今の職場を急遽去る事と為った
私の送別会が1月29日に行われました。

私が居る部署以外からも様々な方が来て下さり、
来られなかった方からも沢山の御気持ちを頂いて
本当に有難いものでした。
転勤族である私の職業ですが、其の経験の中で
こんなにも賑やかで有難い送別会は
初めてのものでした。

普段から、休日はラーメンを食べに行ったり
パンケーキを食べに行ったりと頻繁に私と行動を共にしている
後輩Yちゃんは、『皆一言ずつ』と云う場面で
いつもの憎まれ口の様な話し方(彼女は仲が良くなるとそんな感じ、口が悪いのはいつもの事です。)に始まったは良いものの、
直ぐに汲み上げて泣いて仕舞う始末。
『初めは取っ付きにくいなあと思ってたし、服とか趣味とかも全然違うけど…楽しかったし、寂しいなあって…』と、
人前で話すのが何だかんだ苦手な彼女なりにも
一生懸命考えたらしく…でも支離滅裂な感じ。
いきなり泣き出すものだから周囲も少々驚く。
そんなに良く思って呉れていたのかと私も正直、驚きました。

「そんなに思って呉れていただなんて」と
こんな今更に気付く気持ち。いつだって私はそんな経験ばかりです。


私達の職は、歓送迎会はしょっちゅうの事です。
仲が良くても離れる事も日常茶飯事。
そんな中、彼女の様に泣くだなんて
ちょっと感極まりすぎじゃない?なんて位なのです。

私はいつも、懐っこく来て呉れる人にはついつい入れ込んで仕舞う。
それでも、離れる時にほんの僅かな寂しさと
「それじゃあ、また」の言葉で御別れに為る事は
私ばかりが寂しがってる様で、いつも何だか悔しい様な
別の寂しさの様なものが有った。
泣いて呉れたのも、
「また次も会える」なんて
社交辞令みたいな言葉を掛けて来なかった人も
此のYちゃんが、初めてだったのです。
ちょっと驚いて私は嬉しかった。

一次会は終わり、二次会?と云うところでしたが
其の日は水曜日。
平日のど真ん中と云う事で皆殆ど帰る中
Yちゃんは帰りたくなさそうな感じ。
最近、Yちゃんと私と共に行動する様に為った
後輩Mくんも手持ち無沙汰な感じ。
「次(二次会)、行く?」「どうする?」
の様な雰囲気の中に、
いつも私達を気に掛けて下さっていた上司Oさん(男性)の
『迷惑でないならあと一軒だけ、どう?』と云う一言で
私、後輩Yちゃん、後輩Mくん、上司Oさんの4人で
近くのスナックへ行く事に成りました。

カラオケを唄おうと云う事に為り、
御酒をちょいちょい飲みながら
私達は順番に唄います。
私は、人前で唄う歌なんて無いもので
どうしようかと思っていれば『エヴァ歌って欲しいな』と。
(私達4人は、たまたまですが共通してエヴァ好きです)
『残酷な天使のテーゼ』と『魂のルフラン』、
リクエストされた王道の2曲を唄いました。

楽しいな と素直に思いました。
ずっと、「職場は職場、プライベートはプライベート」と
私は自分の中でON-OFFをはっきりさせたいが為に
他人のプライベートは自分から訊かないだとか
自分のプライベートもあまり話さないだとか、
其処から滲み出る私の雰囲気で
職場の人によっては
「近寄り難い」と思われる事が多く、
併し私も其れで良いと思っていました。
飲み会だろうがなんだろうが、必要最低限。
仮に行くとしても、友達の様には成りたくない。
社会人として其れがbetterで
其れが自分の身を守る事でもあると思っていましたし、
今でも其れは変わりません。

ただ、私の精神と肉体がボロボロに成っていた時に
寄り添って呉れた後輩Yちゃんと上司Oさんには
私は辛い過去を話せました。
安心出来る、「職場」での「他人」が有難いなと感じました。



何のタイミングだったかな、
Oさんが私の方をじっと見てきて
『お願いがあるんだ』
と言います。

『来世ではさ、俺の旦那さんになって欲しいんだ』
と。
科白だけでは、まるで冗談の様な事を
本当に真剣な雰囲気で言って来るもので驚きました。

Oさんは私が、同性愛者である事を知っていて
(実家に帰省する度に、私は母からモラルハラスメントの様な異性の話をされる事が本当に嫌に為って仕舞って、職場に戻ってからOさんへの愚痴の末にカミングアウトした事が有りました。)
だから敢えて「来世」「旦那さんに」と言っている事が、
私は分かりました。
(後輩のYもMも私のセクシュアリティなんてものは知りません)

其の時は、私は
何の事やらと云う様に「ん?」なんて顔をして、
2人の後輩が何やかんやと
唄ったり、御酒を飲んで巫山戯ている様子に合わせていました。
それからカラオケの私の番が来て、唄い終わった後にも
Oさんはやっぱり真剣な面持ちで
私の手をガッチリと握手して
何か…しっかりとした約束をする様に同じ事を
頼み込む様な口調で言って来るんです。

そりゃあ皆、御酒は飲んでいても
おかしな事を言う程ではないし
Oさんは普段からも、御酒を飲んでも
変な人では無い事は分かっています。

嗚呼、此れは何だか真剣な約束事なんだな と私は思って
でも何だか照れ臭くて
「来世で待ってます」と笑って手を握り返しました。

私を唯一、女と云う記号として
見ないで居て呉れる貴重な人。
きっと
私が「普通の女」であったら、
そんなに想われていると知ったら、
惚れていたのでしょうね。

いつも私を見て
『ずるいよなあ(何がずるいんじゃ(笑))、
何してもカッコいいもんなあ』と
言っていたOさん。
可愛いだとかは全く言われた事はありませんでした。

『来世で』と言う事で
Oさんは今生の奥様を大事にされているのだなと分かって
何だか私は嬉しいし、
来世となれば
私とあなたの性別もセクシュアリティも
どうなる事か分からない。
茶目っ気が有って、人懐っこい故に
年齢や性別に関わらず様々な職場の人から慕われるOさん。
告白でさえも、不快どころか
相変わらず粋な人だなあと思いました。




やっぱり送別会やら転勤のタイミングと云うものは
ある種の告白の場でもあるもので、
私も何度か『実は…』と言われる事も有ったけれど
其の何れもが私のセクシュアリティどころか
私の意思さえも気にしない様な
「兎に角さよならをする前に伝えたい」と云う様なものでした。
ある意味、「だからどうしたい」とは言われないので
(送別会ならもう御別れですし)
私も困りはしないし、聞き流すだけではあります。

それがまさか、来世を予約されるなんてなあ。(苦笑)





此の4人のメンバーでは二度と会えないし、
Oさんなんて特に今生の別れに近い。
(でも旅行をよくされる様だし、何かの時に会えるかも?)
MくんもYちゃんも、私と歳が近いから
未だ未だ定年退職までの道のりはあるけれど、
それだって何も行動を起こさなければ
会えない確率の方が高いかも知れない。


寂しいなあと思っても
別れは、どうしようがやって来る。
私はあまり此方に来られないけれど
北海道なら少しだけ、
旅行に来ても良いかもね。

Yちゃんは『遊びに行ったら泊めてくださいね!』と笑うし、
後日私の事情を初めて少しだけ話したら『えー、二度と会えないんすか。…あ、でも俺が会いに行きゃ良いんすね』と言うMくん。

何だかんだ、何処かで会えるでしょうか。

私は会いに行けない方ばかりです。
会いに来て呉れれば其れは有難い事。