相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
Kiramune リーディングライブ2019『密室の中の亡霊 幻視探偵』の公演が終了しました。観劇してくださった皆さま、本当にありがとうございました。至らないところもあったシナリオだと思いますが、演者さん達や、演出、音楽、スタッフさんの力によって、スペック以上の物語にして頂けました。#Kiramune
2019年10月28日 22:04
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
本来であれば、裏話など語るのは野暮というものかもしれませんが、今回リーライに関わらせていただけた件は、僕にとってもたいへん印象深く、また一人の観客として舞台に強い感銘を受けたこともあって、ちょっとした、こぼれ話をさせて頂きたいなぁ、と思うのですが、なにを話そうかな……。
2019年10月28日 22:07
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
いや、なんか話したいこといっぱいあるんですよね。でも自分の胸に仕舞っておきたい気もするし聞いてもらいたい気もするし、なかなかチョイスが悩ましい……(笑)
2019年10月28日 22:09
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
まずは簡単に、シナリオができる経緯を……。水島監督と知り合ったのは共通の知人(@801_CHAN)のおかげなのですが、そのときにアニメの脚本の仕事もしたいんですよね、とアピールをしたら、本当にすぐ、リーライ2018のカラーズにご招待を頂き、『朗読劇』の先入観をブチ壊されてビックリしたんですよ。
2019年10月28日 22:12
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
@801_CHAN 観劇後に「ほえー、しゅごい……」って呆然としていたら、いつの間にか水島監督に連行されて、おれは神谷さんと面会していた。な、なにを言っているのかわからねーと思うが、おれもなにをされたのかわからなかった……。
2019年10月28日 22:19
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
「いつかミステリやりたいから、そのときに協力してもらおうと思って連れてきちゃった」と水島監督は言っていた。神谷さんは「そのときは是非よろしくお願いします」と仰っていた。ひゃあ、こんな面白いものに協力させてもらえるならいくらでも頑張りましゅ、と噛み噛みになりながらさこもこは答えた。
2019年10月28日 22:19
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
それで年が明けて間もなく、水島監督からお仕事のお話を頂きました。本当に三ヶ月後くらいだった……。ちょうどmediumを書いていた頃ですかね。で、打ち合わせをして、リーライの特徴だったり、そこで表現したいことだったりを色々と聞きまして……。
2019年10月28日 22:25
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
mediumの途中だったし、他の原稿のスケジュール的にもキツキツで、お引き受けできるかどうか、ちょっとわからんかったんですけれど、こんな面白そうなものに関わらなかったらめちゃくちゃ後悔すると思って、つい引き受けちゃいました……。すまんな、他の原稿たち……。
2019年10月28日 22:27
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
さこもこ「やはりミステリですか〜」かんとく「神谷が挑戦したいってずっと言っていて」さこもこ「神谷さんが! そうなんですね! じゃあ頑張ります!!」僕はこの言葉を信じた!!!(笑)
2019年10月28日 22:34
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
今回のお話は、本格ミステリの世界では『多重解決』や『多重推理』などと呼称されるジャンルです。一つの事件に対して、複数の解決が提示されて、そのどれもが正解であってもおかしくはない……。というような構造を取るものが多いのですよね。
2019年10月28日 22:43
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
これは、AグループBグループと、複数の演者さん達が演じることで、同じ脚本でも、まったく違う雰囲気になるよ、という水島監督の言葉から連想しました。だったらAとBとで犯人が違うと面白いかも→それは流石にコストが高いか→でも「多重解決モノ」ならば……。みたいな思考の流れですかね。
2019年10月28日 22:45
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
あとはまぁ、普通のミステリでやると、どうしても登場人物がすぐに死んじゃったり、ただのミスリード役に過ぎなかったり、情報提供役に過ぎなかったりと……。なんか、チョイ役になりかねないんですよね。
2019年10月28日 22:46
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
「朗読だからと難しく考えず、小説を書くみたいに、相沢さんの好きなよう書いてみていいですよ」と水島監督は仰ってくれたんですが、やはり、色々と考えてしまうわけです。
2019年10月28日 22:48
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
普段なら、「ミステリを読みたい人に向けてミステリを書く」「相沢沙呼作品を読みたい人に相沢沙呼作品を書く」で良いのですけれど、今回は観客の皆さんの求めてるものを考えるべきだと思いました。ミステリが苦手な人は多いだろうし、皆さんはミステリを観に劇場にやってくるわけではない。
2019年10月28日 22:49
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
皆さんが求めているのは、「推しが物語で活躍する姿」のはず……! たぶん……。きっと……。そうに、違いない……。はず……。
2019年10月28日 22:51
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
ともあれ、そこに『多重解決』のプロットは相性が良いと思いました。容疑者一人一人に主役となるドラマがあって、それぞれが犯行に至る動機や、殺害のシーンなどを描く……。できる限り、舞台に立つ皆さんにスポットが当たるプロット作りに『多重解決』はマッチしている。
2019年10月28日 22:53
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
最初の打ち合わせをして、帰りの電車の中では、もうそこまで膨らんでいた気がします。そこからプロット作りをして……。最初のプロットだと容疑者は四人いて、四通り+ラストの解決、とか考えていたんだけれど、ごめん、尺的に四つは無理だった……(笑)
2019年10月28日 22:57
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
探偵と助手のバディものがやりたい、というのは最初に提示していて、主に探偵役に台詞の量とかが、かなり偏っちゃいますけど大丈夫ですか、と水島監督に聞きました。かんとく「大丈夫! 神谷ならどんな長台詞も大丈夫だから!」さこもこ「なるほど! 神谷さんなら大丈夫そうですね!」
2019年10月28日 22:59
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
かんとく「推理モノなんだから探偵役の台詞量が多くなるのは必然だよ。それはもう仕方ない。神谷も自分でミステリやりたいって言っているんだからそれもわかってるはずだよ!」さこもこ「なら遠慮しないで書きますね!!!」この流れ思い返すと面白すぎるな。
2019年10月28日 23:08
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
さて、朗読でミステリをやる上で懸念したのは、「伏線を読み返せない」点でした。巧妙に伏線を張っても、真実を知ったあとに読み返すことができない。チケットを取るのが難しいという話も聞いていたから、二度観ることができる人も、そんなに多くないかもしれない……。
2019年10月28日 23:11
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
あとは密室の構造とか、推理の解説とか、朗読でどこまで丁寧に情報を伝えられるのか。ここはもう、演出の伊藤さんを信じるしかない。まぁ、カラーズを観させて頂いた時点で、「幻視」という映像的なギミックを組み合わせれば、この方なら絶対にわかりやすく伝えてくださるだろう、とは思ったんですが。
2019年10月28日 23:13
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
結果、大成功だったと思います。伊藤さん凄すぎる。「幻視探偵」というギミックは、小説で表現するのが難しいと感じてて、お蔵入りしていたネタだったんですが、今回のリーライと絶対に相性が良いと思って蔵出ししたんですよね。伊藤さんとの相性、大正解だったと思う。
2019年10月28日 23:14
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
ただ、「伏線を読み返すことができない」の問題のクリアは難しく、もう、わかりやすく記憶に残るように伏線を張って、気付く人は途中で気付いてもらって、伏線を楽しみながら回収するお話になっても良いかな、という感じでお話作りをしました。
2019年10月28日 23:15
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
いつものように、本格ミステリに親しんでいる人を相手にするのではなく、ミステリに不慣れな人でもわかりやすい話を……。僕としては、このお話をきっかけに「本格ミステリって面白い」と思ってもらえればいいなぁ、と考えてお話作りをさせて頂きました。
2019年10月28日 23:19
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
さて、お話を作る上で、ちょっとkiramuneさんのことを調べたら、レーベルとして十年目、ということに気付きました。実は、僕もこの秋で、作家デビューして十年になりました。ただの偶然ではありますが、この十、という数字に、とても奇妙な巡り合わせ、縁を感じずにはいられなかったのですよね。
2019年10月28日 23:26
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが、「十」という数字を、登場人物たちの名前に散りばめてあるのは、そういう理由からです。本当はリーライの十回目作品でやるのがいちばん美しかったと思うのですが、こんな機会は二度とないだろう、と思いまして、作品の中核にも重ね合わせました。
2019年10月28日 23:28
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
僕は挫折しやすい性格でして、「作家を続けられないかもしれない」などと考えたこともこれまで多かったんですよね。それでも十年、続けることができたのは、読み続けてくれた読者の皆さんの力です。「あなたの物語で救われた人がいる」そうした言葉を頂けて、立ち上がることができました。
2019年10月28日 23:30
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
きっとkiramuneというレーベルに救われた人たちも多いだろうな、と思ったんですよね。もっと大枠で言えば、それぞれの声優さん達の演技に救われた人たちが、これまできっと大勢いたと思います。ラストの方、玄十朗と摂理の会話には、そんな想いを込めて書かせて頂きました。
2019年10月28日 23:32
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
なのでこのシーンを生で観たときには、もう感情が、感情が……。う、目から汗が……。
2019年10月28日 23:39
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
そんなこんなで脚本を書き上げて、この企画に入ってからの初めての神谷さんとの打ち合わせ。「これ……。探偵役の、台詞が……、大変……、ですよね……」なにかを察したかのような神谷さんの呆然とした表情を観ながら、「神谷さんなら大丈夫と聞きました」と答えたさこもこであった。
2019年10月28日 23:41
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
ちなみに、タイトルが決まったのは、この打ち合わせのときでした。それまでは仮タイトルのツモリで「幻視探偵」とだけ付けていました。特に誰からも突っ込まれなかったので、「幻視探偵 黒書館殺人事件」とかにするのもいいかなーと考えていました。
2019年10月28日 23:43
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
ただそのままではひねりがないし、「もう少しドラマに絡んだタイトルにしたいですね」と神谷さんが仰ったので、その場にいた皆さんでタイトルを考えることになりました。とはいえ、なかなか妙案が思い付かず、長いことううーん、とみんなで首を捻る打ち合わせだったと思います。
2019年10月28日 23:47
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
「二人の関係性とか、過去の事件とかが想起できるタイトルにできれば……」と、神谷さんの望まれる方向性をお聞きして、うーんと首を捻る。ところが、僕もすぐには思い付かず、ちょっと困った。これは持ち帰る必要があるかもなぁ、と思いました。ただ、スケジュール的にはこの場で決めるのが望ましい。
2019年10月28日 23:49
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
タイトルを決めるのは得意と自覚していたので、アイデアがすぐに出てこないことに焦りました。そこで、一緒に考えてくださっていた神谷さんが、ぽつりと一言を漏らす。「この幻視の登場人物は、彼の頭の中にしかいないわけですよね……」
2019年10月28日 23:51
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
ダブルミーニング大好きマン&タイトル回収大好きマンとしては電気が走りましたね。神谷さんを助手役に喩えてしまうのは大変申し訳ないですが、正に助手の言葉で閃く探偵役の気分でした。こういうことがあるから、創作ってやめられない。「それですよ。密室の中の亡霊、です!」
2019年10月28日 23:53
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
興奮してハイテンションになりながら、「頭の中を密室に喩えるんですよ! 帰ってタイトル回収できるように原稿を直しますんで〜〜!」と説明するさこもこは、閃いた探偵みたいに挙動不審だったかもしれない……。
2019年10月28日 23:55
相沢沙呼@新刊『medium』発売!@sakomoko
そんなこんなで脚本が出来上がったわけです。そう。脚本が出来上がった。そのときのさこもこは、そう思っていた。僕の仕事はもうこれで終わりだと……。あ、時間も遅くなっちゃいましたので、また次回に続くということで、今日はこのあたりで……。
2019年10月28日 23:58